Global Wind (グローバル・ウインド)
カイロ便り 第ニ報
井上 義博
カイロに転勤してから一年半が経過、ようやくエジプトの政治・経済がぼんやりと見えてきたような気がする。カイロ便り第一報をグローバル・ウインドに掲載してからちょうど一年になるので、この辺で第二報をお届けしたい。
エジプトは2006年度6.8%、2007年度7.1%、2008年度7.2%と高い経済成長を記録したが、さすがに昨年後半以降の世界的不況の影響を受け、4大外貨収入(スエズ運河通行料、石油・ガス輸出、観光、出稼ぎ労働者送金)が軒並み減少するなど減速している。とはいえ、元来信用で膨らんでいた経済ではなかったため金融危機の影響はさほど大きくなく、為替も安定的に推移、経済刺激策である金利の低下もあって国内のインフレも低下、今年度も4%前後の成長が見込まれ、日米欧などよりはるかに元気と言えよう。
昨年は久々に日本からの投資が相次ぎ(神戸物産30億円、住友電装10億円、豊田通商30億円)、また、豊田通商・三菱重工・東芝プラントが発電所建設契約を連続受注、更に、双日及びアラビア石油が石油生産に乗り出すなど、欧州のお膝元であるにもかかわらず日本企業の活躍が目立った年でもあった。
筆者は本年4月よりカイロ日本商工会の会長職を拝命し、日本からの投資に関してエジプト政府機関・企業団体との折衝や日本企業からの照会にも対応しているが、エジプトの投資環境の良否や近隣国との対比におけるメリット・デメリットが議論の対象になる中、とりわけ(興味本位を含めて)予見が難しいのがエジプト政治の安定度、すなわち、ズバリ、ムバラク政権がいつ誰に取って替わられるか?である。
1981年サダト暗殺により副大統領から昇格して以来27年間強力な統治能力を示してきたムバラク大統領。さすがに2005年の大統領選挙では徐々に高まってきた民主化要求を無視できず、初めて複数の候補が立つ大統領選挙になったが、圧倒的な支持を得て5選を成就。しかし、齢80歳、そろそろ政権交代が現実味を帯びてきた。
巷間では、ムバラク大統領次男のガマール氏(現職は与党である国民民主党の政策委員長 – 実質的な現政権の政策立案責任者)に政権が禅譲されるのは時間の問題だ、否、政権を支えてきた国軍首脳が忠誠を誓うのは軍人のみであり国軍のしかるべき将軍が次期政権を担う、否、その将軍もガマール政権への繋ぎに過ぎない、などという議論がかまびすしい。
間違いを恐れず私見を述べるなら、ガマール氏か軍人か、政権の顔が誰になろうとも彼氏は(“彼女”の可能性はない!)国軍の承認を得た人物であることに間違いがなく、国軍の承認があるかぎり大きな政治的な異変は起こらない、と思う。さて、当たるかな? 今後確実に起きる世紀の政治ショーに注目しよう。