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専門家コラム「中小企業の産学官連携の進め方」(2009年8月)
山崎 文

はじめに

 産学官連携とは、大学や研究機関〈学〉が保有する技術や研究の成果を活用して、企業〈産〉が製品化や実用化につなげる仕組みのことで、その仲立ちを行政や公的機関〈官〉が行うことを言います。


1.連携の方向性

 産学官連携については、国も様々な形で支援しています。特に文部科学省、経済産業省を中心に様々な施策が取り組まれています。
 今年6月の第8回産学官連携推進会議(京都会議)のテーマは「オープンイノベーション型の産学官連携による新たな挑戦」でした。これは、技術の高度化・複雑化及びグローバル競争の激化に伴い、最先端の技術や知識を組み合わせることにより、新たな価値を生み出す「オープンイノベーション」という考え方を元にした提言です。
 要は、従来型の大学等の技術シーズを起点にした連携から、資源や環境等の私たちが直面する様々な課題解決につながるもの、或いは産業の出口戦略を起点とした産学官連携モデルへの変換を示していると言えます。


2.連携のメリット

 メリットは、産学官それぞれの面でありますが、ここでは、主に技術系の企業の連携について述べます。

(1)企業のメリット

 企業にとっては多くのメリットがありますが、代表的なものとして、
①研究開発における大学等の保有技術や施設、人材の活用
②「競争的資金」と呼ばれる国、県等のプロジェクトを申請することによる、資金面の確保
③先生との人的ネットワークの形成、新たな情報源の入手
等が挙げられます。

(2)大学のメリット

 大学等研究機関も、研究に専念していればいいという時代ではなくなりました。国立大学は国立大学法人化し、国立・私立を問わず少子化による大学の生き残りをかけ、相応の実績を残すことが求められています。
 企業との共同研究による競争的資金の確保や、大学発ベンチャーの創出、何よりも連携により研究成果が実用化に結び付けば大きな収穫と言えるでしょう。

(3)官のメリット

 行政や公的機関としては、企業が大学等との連携により新製品開発に成功する、大学発ベンチャー企業の創出が活発になる等、地域経済の活性化に繋がることが産学官連携によるもっとも大きなメリットと考えられます。


3.連携の課題

 連携には様々な課題がありますが、ここでは企業の立場から考えてみます。
 
(1)
 自社の研究課題がどこにあるのか、大学に求めるものが何かを見極めてから連携に取り組むこと。何を以て研究の成果(目標)とするのか、企業と研究者間でのコンセンサスが重要。

(2)
 研究開発には相応の経営資源(ヒト、モノ、カネ)が必要であること。
 企業は大学に研究費を提供すればよいということではなく、自社内に研究を活用できるだけの能力が必要。

(3)
 中小企業での意思決定に比べ大学等は大きな組織であり、手続き等に時間がかかることを認識しておくこと。

(4)
 同様に企業と大学等では考え方・文化の違いがあり、相互の役割を踏まえて信頼関係を築くこと。


4.連携の進め方

 今後連携に取り組むきっかけとして、下記の方法を参考にしてみてください。

(1)大学等のセミナーに参加する

 各大学には産官学連携室、知財本部、TLOといった産学連携部門が設置されています。大学のホームページから、産学連携のサイトやセミナーの案内を見て関心あるものに参加するのも良いでしょう。

(2)都道府県等中小企業支援センターに相談する

 これらの機関では産学官連携の部門があります。技術相談の活用や、提携大学等の研究者を招いたセミナー等に参加する等、研究者との人脈作りに活用ください。

(3)公設試を利用する

 各地には公設試験研究機関(公設試)があります。工業、農業、水産等、地域の産業に応じた研究機関です。


5.参考

 企業と大学等研究機関が共同研究を進める際の資金面での支援として、「競争的資金」と呼ばれるものがあります。国(JST、NEDO等)、都道府県のプロジェクト等、様々な仕組みがありますので、連携の手段として活用を検討してみてください。
 例)科学技術振興機構(JST)重点地域研究開発推進プログラム(地域ニーズ即応型、等)


最後に

 産学連携にしろ、産産連携にしろ、企業が他の組織と連携を結ぶのは簡単でないことは言うまでもありません。しかし現在の難しい経済状況のなかでも、今後の企業の成長を考える上で研究開発は必要不可欠と言えます。とすれば、一つの手段として研究機関との連携に取り組むのも検討に値するのではないでしょうか。


■山崎 文(やまざき あや)
中小企業診断協会東京支部中央支会理事
中小企業診断士


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