Global Wind (グローバル・ウインド)
シルクロードの中継地「キルギス共和国」に出張して
中央支会 国際部副部長 鴨志田 栄子
1.キルギスの地理的位置
JICA日本センターのビジネスコースの講師として、現地企業の指導を行うため、今年、2度にわたり、計2か月間、キルギス共和国の首都ビシュケクに出張した。キルギスの面積は、日本の約半分で19万8500㎢、人口は540万人、中国の新疆ウィグル地区の北西に位置しており、北はカザフスタン、南はタジキスタン、西はウズベキスタンと接している。中央アジアの真ん中に位置するキルギスは、中国から天山山脈を越えてウズベキスタン、トルコへと続くシルクロードの中継地であった。
(写真① キルギスの首都ビシュケク市の市庁舎と真夏でも雪をかぶった3000m級の山々)

2.中国製品の活発な中間貿易
1991年8月31日、旧ソ連から独立し、中国との国交開始に伴い交易も始まった。キルギス人は、歴史的な理由から基本的には中国人に対して好感を持っていない。また、中国製品は品質が良くないという理由でも好感を持っていないが、価格の安さは何にも変えられず、中国との交易・交流が活発に行われている。隣国のカザフスタンも新疆ウィグル地区と接しているが、WTOに加盟していないカザフスタンは関税が高く、手続きも厳しいのでキルギスルートの方が活発となった(キルギスはWTOに加盟している)。
新疆ウィグル地区から、衣料品雑貨、生活雑貨(軽金属工業製品)を山積みした大型トラックが毎日何十台も入ってきている。その物資は、キルギス国内の市場向けの他、その多くがキルギスを拠点としてカザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、ロシアなどにさらに輸送されていく。
キルギスで最初に中国からの買い付けを始めたのは、トンガン族(イスラム化した漢人)やキルギスに移住したウィグル人であるといわれている。彼らは、単なる交易の中継ではなく、マージンを乗せて他国に輸出して儲けている。
(写真② トラック専用道路を走る中国のトラックの群れ )

3.流通拠点としてのドルドイバザール
首都ビシュケクの郊外にあるドルドイバザールは、2階建てのコンテナで構成されている。2階部分は倉庫で、1階部分のコンテナが店舗で、扉は、商品陳列の什器の役割も果たしている。ほとんどの商品は中国製品で、たまに、トルコ製品もある。狭い通路を「道(を開けろ)」とキルギス語で叫びながら荷車が頻繁に行き来していた。
(写真③ ドルドイバザール)

【衣料品の圧縮風景】
バザールの駐車場は、車で混雑している上、警備員がいるものの無秩序に運転・停車しているので、入るのも出るのも大変に時間がかかる。大きなバスも何台も停車していて、どこの国の都市から来た車なのかがわかるようになっている。圧倒的にカザフスタンの車が多かった。いったんキルギスに入った衣料物資は、圧搾機を用いて極限まで体積を小さくしてパッケージに詰め込んでいる。ウズベキスタンとの国境に近い南西部にあるキルギス第2の都市オシュにもこのような大きなバザールが存在している。
(写真④ 圧搾機で詰めこめられた衣料品)

4.キルギスの産業
キルギスの主要な産業は、農業・畜産業でGDP(30億ドル弱)の約3割を占めている。つづいて鉱工業であり、こちらではピンクゴールドのアクセサリーを町のお店で多く見ることができる。あとは、流通小売業、サービス業が圧多く、製造業は少ない。農産物にしても、形がよいもの、味のよいもの、品質の高いものは、ほとんどカザフスタンに売られており、国内市場には、残ったものが流通している。
キルギスで産業が発展しない背景として、上述した中国製品の中間貿易に社会経済が依存しているという事情もあるが、現地で話しを聞くところによると、国策も影響しているように思う。キルギスでは、来年から税制が大きく変わる。間口税、従業員数による課税が始まる。課税方法は、売上高を基準にするのは建前で、実態は儲かっている企業からとるというやり方をしており、国から目をつけられた企業は、意図的な売上抑制策を講じたり、大幅なリストラを行い人員削減を行ったり、資産を処分するなどしている。また、休業に入り企業活動をストップさせるところ、さらには、会社を分割して別会社とし、小さな会社にしてしまうところもあると聞いている。このような背景も、産業の発展を妨げているのではないかと実感した。
(写真⑤ ピンクゴールドなどのアクセサリーの売店)

5.安定ビジネス「洗車屋」
市内を走る車の多くは、ベンツ、アウディの中古車である。乗り合いバスもトラックも多くがベンツである。しかし、埃をかぶった汚れた車が多いためか、町を歩いていて目立つのは、数多い洗車屋である。洗車料金は1台につき100ソムから150ソム(1ソムは約2.5円)ぐらいで、パテントを取得すれば、個人営業ができる。1日、10台くれば1000ソム、1カ月30000ソム、こちらでは、結構よい安定収入になるそうだ。法人組織を作ると、法人税がかかるので、個人事業で手堅くお金をためたいと思うならば、洗車はよい商売になる。
(写真⑥ 洗車屋)

6.親しみを感じるキルギス人
キルギスは親日的な国である。キルギス人にも、モンゴル人や日本も含めた東アジア・東南アジアの民族に見られる蒙古班が見られる。それで、キルギス人と日本人は、元は同じ民族だが、魚が好きな人は、東にいき日本を作り、肉が好きな人はキルギスに残ったと言われている。
過去にモンゴルへ出張で出かけたとき、私は、モンゴル人と間違われた。キルギスでも、レストランやお店など街の中で、ときどきキルギス人と間違われた。キルギス人は、髪が黒く、顔立ちが日本人によく似ていると私が思うのだから、相手にとっては、キルギス人によく似た日本人と思われても不思議はない。
キルギスでは、女性の地位は男性と比較するとまだまだ低い。社会で働いている女性は多いが、亭主関白型の家庭は、むしろ、昔の日本に近く、男性が結婚相手に選ぶ条件は、料理が上手なことなど「良妻賢母」であると聞いた。 いろいろな面で、日本人と共通項を持つキルギス人は、一緒に過ごしていると本当の家族のようにも思える親近感を感じた。
(写真⑦ 日本人と似ているキルギス人)

これまではベトナムなど東南アジアが多かったが、中央アジアの国を初めて訪問して東西の文化や物資が交じり合う様子を見ることができ、貴重な体験となった。今後のキルギスの発展をかげながら応援したいと思っている。