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専門家コラム「目標管理制度とマネジメント」(2009年12月)
小林 亮輔


【はじめに】

 さて「マネジメント」というとどのような印象をお持ちでしょうか?
 筆者は、この数年、地方自治体など非営利組織への人事評価制度の構築・導入とそれらに関する研修・相談等の業務に携わることが多くなっています。仕事柄、「目標管理制度」に関する指導・相談を行う機会があります。少々、理屈っぽい話もありますが、人事評価制度構築・導入コンサルの現場で感じた「目標管理制度」(MBO:Management by Objectives through Self-Controls)と、それに関わる「マネジメント」の必要性、その工夫について述べてみたいと思います。


【経営・管理とマネジメント】

 目標管理制度もそうですが、「マネジメント(Management)」というと、「管理」あるいは「経営」と訳されることがあります。フレデリック・テイラーの「科学的管理法」やアンリ・ファヨールの「管理過程論」などの影響かもしれません。「管理」というと「管理教育」、「数値管理」といった言葉に象徴されるように、いかにもお堅いイメージがあります。

 その「管理」という言葉の印象が「マネジメント」の正しい理解が妨げられているではないか、ドラッカーの提案する「マネジメント」には「管理」、「経営」では表せない意味が含まれているのではないか、そのような疑問を抱き続けてきました。


【うまくやること】

 その「マネジメント」を「うまくやること」、ドラッカーもそう捉えたのではないか、と筆者は考えています。というのは、ウェブスターの英英和辞典でManagementの語源となる動詞manageの解説を読むと、まず、「1.~を監督し、それについて決定を下す」とあり、これは「管理する」ことを示しています。次に「2.目的を達する:Contrive(うまく~する)」とあり、筆者はこの「うまく~する」というが「マネジメント」の本質ではないかと考えています。

 とりわけ目標管理制度の場合、目標(目的)の達成を目指すのだから「マネジメント」は、目標による管理を提案したドラッカー以降の時代、「うまくやること」と捉えた方が、説明力があると考えられないでしょうか。


【営利活動と非営利活動】

 「マネジメント」を「うまくやること」と捉え、目標管理制度を考えてみると面白いことに気付きます。人事評価制度や目標管理制度に関する書籍や教育用ビデオ(DVD)の中には、目標管理制度が営業現場や生産現場での「数値管理」「ノルマ管理」の手段・方法であると誤解されるような表現が多く見受けられます。「管理」という言葉の響きに、原作者自身が惑わされ、さらには読者の誤解を広げているような気がしてなりません。

 目標管理制度が効果を発揮するのは営業現場や生産現場だけではありません。むしろ、間接部門や経営者自身にとってこそ目標管理が大切ではないでしょうか。重要なのは目標を達成したときの達成感とそれがもたらす挑戦意欲、それが組織の活力につながります。


【非営利部門の達成感】

 もちろん学校のサークル活動は非営利です。運動サークルの場合、まず、学校を代表する選手となることが目標となります。そして選手になると次は他校との試合に勝つことが目標となります。そこで勝利すると次は県の代表なり、さらには全国大会での優勝が目標になります。この場合、売上や利益が目標ではありませんが、目標の達成感が次の挑戦意欲をもたらすという好循環サイクルは非営利組織でも営利組織でも共通です。


【脳科学と目標によるマネジマント】
 ハーズバーグやマズローの時代、観察による推測であった達成感と挑戦意欲の関係が、今、脳科学で証明されつつあります。自分の意思で難しい課題に挑戦し、その課題を達成すると、脳内物質ドーパミンが放出され、それが達成感に結びつきます。

 また、課題が達成できなくても、その失敗を悔しがると眼窩前頭皮質(がんかぜんとうひしつ)を刺激し、脳の成長につながることが判明しています。つまり目標によるマネジメントは、成功しても、失敗してもうまく機能するということがわかります。


【目標管理制度の落とし穴】
 企業の場合、利益最大化という命題があり、意図しなくても、売上や利益という自明のパラメーターの存在によってマネジメント機能が自然にはたらきます。しかし、利益最大化という命題がない非営利組織では意識しないとマネジメント機能が働きません。まさにNPOや地方公共団体における目標管理制度はこの対象であり、役割・使命感を意識させた強力なマネジメントの工夫が必要になります。

 注意しなければいけないのは、民間企業ならすべての部門で営業部門や生産部門と同じように売上や利益というパラメーターが機能しないということです。研究開発部門や企画・管理部門の場合(場合によっては経営者も)、NPOや地方公共団体同じようなマネジメントの工夫が必要です。2000年以降、成果主義型の人事評価制度を導入して失敗した多くの企業では、この点が見落とされていたのではないでしょうか。


【非営利組織のマネジメントをいかす】
 ドラッカーは「NPO(非営利組織)は利益に縛られないからこそ、企業以上にマネジメントが必要である」と述べています。またドラッカーは、「企業は、モチベーションの源泉とは何かについて、利益を超えた存在である非営利部門に学ぶことができる」と考えていたようです。(注)

 工夫しなければ機能しない非営利組織のマネジメントに注目し、利益を超えて、いかにモチベーションを高め、いかに人を動かすか、考えてみませんか?

(注)
ロザベス・モス・カンター「ドラッカーに学ぶべきこと」DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2009年12月号の一部に加筆。
 
 
 
■小林 亮輔(こばやし りょうすけ)
中小企業診断士、賃金管理士。
千葉県生まれ。
早稲田大学商学部卒業。
いすゞ自動車株式会社で販売企画部、調査情報センターなどを歴任。
社団法人日本自動車工業会出向。
労働組合(自動車総連、全いすゞ労連など)出向。
退職後、経営・人事コンサルタントとして独立。
専門は、目標管理、人事評価、労務管理、賃金管理などに関する指導、制度構築など。


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