Global Wind (グローバル・ウインド)
アラブ首長国連邦の外国資本優遇政策と出張雑感
都築 寛志
昨年8月と10月に、勤務先の仕事でアラブ首長国連邦のアブダビ首長国及びフジャイラ首長国へ海外出張しました。
帰国後の11月25日にドバイ・ショックが発生しホットな話題となっていることもあり、アラブ首長国連邦の外国資本優遇政策を簡単に紹介するとともに、出張での感想を報告します。
1.アラブ首長国連邦概要
アラブ首長国連邦(UAE:United Arab Emirates)は、長年この地を支配してきた部族長を首長とする7つの首長国(アジュマーン、アブダビ、フジャイラ、ドバイ、シャルジャ、ウンム・アル・カイワイン、ラス・アル・ハイマ)から構成される連邦君主制の国家である。
公用語はアラビア語であるが、1971年12月に英国の保護領から独立した背景があるため、英語も共通語として使われている。アラブ人をはじめ、インド、パキスタン、イランなど外国籍の人々も多く居住しており、その人口の割合は約80%をも占めている。
世界有数の産油・産ガス国で、日本との貿易も盛んであり、我が国の原油輸入量のおよそ4分の1を供給している。

(IMF、UAE経済省及び統計局データベースより作成)
2.外国資本優遇の背景
UAEは86年以降の石油収入低迷を契機に、産業の多角化による石油依存経済の脱却を目的として、外国資本と最新技術の導入を進めている。
特にドバイ首長国では、早くから石油資源の枯渇に備えて産業多角化を図り、その結果、周辺国に対して金融、港湾、航空、生活、観光インフラが充実し、ビジネス・ハブとしての地位を確立している。
ドバイで成功した外国資本導入策が先行事例となり、他の首長国でも外国資本優遇政策がつぎつぎと打ち出されている。
3.外国資本優遇政策
■税法
個人所得税、キャピタルゲイン税、付加価値税、源泉徴収税は存在しない。
関税はGCC統一関税法(GCC:Gulf Cooperation Council、湾岸協力会議)に準拠しており、GCC域内は無税、域外は5%(免税品目有り)である。
法人税は法令上累進課税であるが施行されておらず、課税対象となっているのは外国銀行支店、石油・ガス・石油化学会社のみである。
その他アパート・店舗賃料や、ホテル・娯楽施設、宅配サービス等の一部のサービスに首長国政府の手数料(実質的な税金)が課せられる。
■フリートレードゾーン(経済特区)
多くのフリートレードゾーンが設置されており、100%外国人資本の会社設立、100%の輸出入税免除、資産と利益の100%本国送還可能といった優遇制度がとられている。
■外国企業の不動産所有
アブダビでは、2005年に指定地域内での土地を除く不動産の所有が認められ、ドバイでは2006年に指定地域内での土地を含む不動産の所有が認められるなど、外国企業の不動産所有の規制緩和が進められている。
■ドバイ国際金融センター(DIFC:Dubai International Financial Center)
ドバイは世界的金融センター化を標榜しており、2004年にはDIFCが開設されている。DIFCでは100%外国人資本の金融機関設立、利益の100%本国送金可能、50年間の所得税免除といった優遇政策が取られている。
4.UAEを訪問して
①ドバイ・ショック
アブダビでのF1開催、日本企業が手がけた「ドバイメトロ(鉄道)」の開通に加え、1月には世界一の超高層ビル「ブルジュ・ドバイ」(現在は、支援を受けたアブダビのハリファ首長の名前をつけた「ブルジュ・ハリファ」に名称変更されている)が竣工予定といった明るい話題が多く、現地の新聞でもリーマンショック以降の経済が持ち直してきているとの記事が掲載されていたため、ドバイ・ショックには正直驚いた。
しかしながら、一人当たりGDPの高さやイスラム圏の人口増加予測に加え、多国籍の人々が共に仕事をする活気ある姿を見ると、スローダウンはしても経済発展の勢いは止まらないと感じている。

ドバイメトロ

ブルジュ・ハリファ
②UAEの意外
■緑が多い
砂漠の国との印象であるが、アブダビ、ドバイ市内は散水によって積極的に植樹がなされており、東京よりも緑が多いのではと感じるほどである。

アブダビ市内の公園
■比較的緩やかな外国人に対するイスラム教規律
イスラム教徒以外の外国人に対する規律は比較的緩やかなようである。お酒を飲めるホテルもあり、在住者は免許を取得し、指定販売店で購入できる。また、日本人の私がドキリとしてしまうほど肌を露出した外国人女性も町を闊歩している。
■野菜栽培
オアシスの地下水や海水淡水化した水を使っての野菜栽培が盛んである。品目はナツメヤシ、トマト、キャベツ、果樹などが栽培されており、約50%の自給率を達成している。

オアシス

オアシス近くの市場
■首長の看板
街中のいたるところに首長の看板がかけられており、また、ホテルのロビー、企業の受付にもかならず首長の写真が掲示されている。

街中の首長の看板
③最後に日本人の評判
アラブ人の日本人に対するイメージは良いようである。日本から来たと分かると強面の顔を崩して握手を求めてくる人もいる。また、UAEで働くイラン人やバングラディッシュ人からも「俺は日本が大好きだ!」との言葉を掛けてもらえた。これも諸先輩の途上国支援の努力の賜物と感謝するとともに、自らも国際社会に貢献できるよう努力しなければならないと強く感じた出張であった。