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専門家コラム「社員の“自分探し”で組織を活性化」(2010年5月)
平林 裕治


■経営資源としての人

 経営資源は人・もの・金と言われますが、最も重要な経営資源が人です。
 中小企業経営者の最大の悩みのひとつに「社員の能力を引き出して、業績に繋げること」があります。そのために、企業の目標ベクトルと社員の能力ベクトルの方向を合わせていかねばなりません。経営者からのトップダウンと個々の社員のボトムアップとを上手くかみ合わせることがポイントとなります。

 社員の考え方や性格、行動の原点となる想いは個々人が異なっています。十人十色の多様性を重んじる時代には、トップダウンとボトムアップの出会う確率を上げる工夫が重要です。

 このような時代には、社員が自分の個性や性格に気付いた上で、仕事との関連や組織の中での役割を自ら主体的に考えられるようにすること、つまり“自分探し”が必要なのではないでしょうか。


■様々な性格診断

 心理学や性格診断には、“自分探し”の実践的な手法として、エゴグラムやNLPがあります。最初に少しだけ紹介します。

 エゴグラムは一般的によく知られています。5つの自我状態によって、自分の現状を把握しようとするものです。
  CP(厳格な親の心)・・・信念に従って行動
  NP(保護的な親の心)・・・思いやりをもって他者のために世話する。
  A (合理的な大人の心)・・・事実に基づいて検討・判断する大人。
  FC(自由な子供の心)・・・自分の欲求・感情に従って行動する自由な子供。
  AC(従順な子供の心)・・・他人に良く思われようとする従順な子供

 5つの適応度をパターン化して、独走型や慎重型などの自分の型を炙り出します。

 また、NLP(神経言語学的プログラミング, Neuro-Linguistic Programming)は、1970年代のアメリカで2人の博士が共同開発した最強のコミュニケーション心理学です。
 「言葉づかい」、「行動パターン」、「無意識の扱い方」を観察、研究し、さらに言語学・心理学などを取り込み、誰にでもすばやく、簡単に、しかも実践的心理学です。

 この他に、注目している伝統的な“自分探し”の手法がエニアグラムです。これまで、中小企業の社員や保育園の保育士などでワークショップを実施した経験をもとに、“自分探し”の本命として紹介させて頂きます。


■根源的な恐れに気付く

 あなたは、どんな恐れや不安を感じることが多いでしょうか。ワークショップでは、パニックな状況を想定して、その時の自分の行動を絵で表現します。クレヨンで画用紙に描くんです。自分の本質と向き合って、“自分探し”を深めるために行います。

 ワークショップで異なるタイプの人とふれあうことにより、自分がどのタイプなのかを徐々に実感することができます。同時に、自分と異なる考え方や性格を目の当たりにすることで、自分の本質を実感できます。

 エニアグラムの“キモ”は自分の根源的なエネルギーが何処から湧き上がっているのかを自分で知ることにあります。自分の中の特定な要素が欠落していると感じ、不安となり、恐れとなるときに、強い無意識の不安が根源的な恐れとして現れます。

 この恐れには9つのパターンがあるという“仮説”がエニアグラムの考え方です。例えば、あなたが「自分が悪く、堕落し、よこしまで、欠陥がある」ということに恐れを感じるのであれば、タイプ1の可能性があります。同様に、「自分が愛されるにふさわしくない」ことを恐れるのであれば、タイプ2の本質を持っています。この他のタイプを参考のために列挙しておきます。
  タイプ3 自分に価値がないこと、本来価値を持っていないことを恐れる
  タイプ4 アイデンティティや個人としての存在意義を持っていないことを恐れる
  タイプ5 役に立たず、無力で、無能であることを恐れる
  タイプ6 支えや導きをもたないことを恐れる
  タイプ7 必要なものを奪われ、痛みから避けられないことを恐れる
  タイプ8 他者に傷つけられ、コントロールされることを恐れる
  タイプ9 つながりの喪失、分裂を恐れる

 自分に該当するタイプはありましたでしょうか。


■エニアグラムの歴史

 エニアグラムの エニアはギリシャ語で「9」の意味で、グラムは図形という意味です。「古代から伝承された秘伝」としてスーフィー教(イスラム教の一宗派)で開発され、リーダーの育成に適用されてきました。

 現代心理学として、1970年代、米国のスタンフォード大学が研究、編集し、膨大な統計的データによる検証を経て体系化されました。日本では、聖心女子大学教授の鈴木秀子氏がスタンフォード大学でエニアグラムを学び、日本に紹介、普及・教育活動を展開してきました。


■エニアグラムの活用

 エニアグラムをビジネスの場面で活用する方法として、チーム作りやプロジェクトメンバーの選定の際に用いることができます。例えば、プロジェクトの立ち上げで目標設定をするときには発想力豊かなタイプを中心に据えます。プロジェクトの実施段階では対人関係を柔軟に調整できるタイプが活躍します。この様に、状況やプロセスに応じて適材適所にタイプ別に活躍の場を設定することができます。

 エニアグラムを経験すると、自分の性格を気づくだけでなく他人と自分との「違い」への気づきが広がり、視点が多様になります。各社員の気付きが連鎖することで、コミュニケーションの幅が広がります。

 自分の性格への気づくと気持ちが軽くなり、「気づきは癒しのはじまり」という言葉が実感できます。他人と自分との「違い」に気づけば、相手を受け容れることが容易になります。


■組織活性化のために

 本来の自分は何なのかに気付く方法として、エニアグラムを紹介しました。組織の活性化には、遠回りのように感じますが、実は近道になると確信しています。

 エニアグラムの考え方が定着すれば、自分を客観的に見つめられるようになります。1日に数分間でも、個々の社員が“自分探し”を継続できる環境づくりができれば、組織は“根っ子”から活性化してゆきます。
 
 
 
■平林 裕治
中小企業診断士、ITコーディネータ、ビジネスエニアグラム・ファシリテータ
中小企業診断協会東京支部中央支会理事


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