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専門家コラム「未来を予見する5つの法則」(2011年1月)
井上 康由


 私の尊敬する方の1人に、田坂広志氏がいます。田坂氏の話しには、我々経営者にとってこれからを考える際に、とても参考になる内容が数多く含まれています。それも表面的なノウハウではなく、心得として会得しておきたい深い内容です。今回は、その一部を紹介したいと思います。

 これから紹介する5つの法則は、ヘーゲルの弁証法のエッセンスを、田坂氏が改めて5つの法則としてまとめたものです。


【第1の法則】:螺旋的プロセスによる発展の法則
 物事は、直線的に発展するのではなく、あたかも螺旋階段を登るようにして発展する。

 我々の身の回りでも、これを実感する出来事が数多く見られます。例えば、ネット・オークション。これは昔からあった競りが復活したものです。しかし、従来の少人数で行われる競りではありません。一度に大勢の方々が参加して行われる大規模なものです。つまり、今後は、進歩・発展は復活・復古と同時に起こるという性格を持っています。


【第2の法則】:否定の否定による発展の法則
 物事は、否定の否定により発展する。

 ここでいう否定とは、消す・壊すといった意味ではなく、その段階を超える・超越するといった意味です。例えば、オンライン・トレーディング。まず、ネット証券会社が、従来の対面での情報サービスを否定し低価格の取引サービスに徹したことにより急成長しました。次に、価格競争が極限まで進んだ段階で、再び情報サービスの競争へと反転していきました。しかし、それは従来の形に単に戻ったのではありません。対面ではなく、インターネットを活用し顧客にとってさらに便利なものとして発展しました。


【第3の法則】:量から質への転化による発展の法則
 量が増大し一定の水準を超えると、急激に質の変化が起こる。

 この法則の最も身近にある例が、水の沸騰です。水の温度という量が増大して行くと、100度を超えた時点で液体から気体へと質が変化するという現象です。これを市場に置き換えると、ある商品のシェアが一定の水準を超えると、それが事実上の標準になるということが挙げられます。


【第4の法則】:対立物の相互浸透による発展の法則
 対立するもの同士は、互いの性質が相互に浸透し似てくる。

 従来、リアル対ネットやクリックアンドモルタルという言葉が使われていました。しかし、現在では聞かれなくなりました。これは両者が融合し統合された結果と見ることができます。今後、ホームページやサイトでの受注等ネットの活用を考えないリアルのビジネスを検討することは、他社との競争上難しくなったということです。また逆に、物流や顧客対応等リアルのオペレーションを考えないネットのビジネスもあり得なくなっています。


【第5の法則】:矛盾の止揚による発展の法則
 矛盾こそが発展の原動力であり、この矛盾を機械的に解消するのではなく、それを止揚した時、物事は発展する。

 これは、弁証法の根本にある法則と言われています。我々が直面する矛盾の最たる例が、利益追求と社会貢献の矛盾です。しかし、優れた企業は、この矛盾への対し方が見事です。まさに「矛盾のマネジメント」が行われています。この際大事なことが、割り切らないということです。いずれか一方を否定するのではなく、両者を受け入れ、肯定し包含し統合し超越することで、より高次元のものへと昇華していく点がポイントです。別の言い方をすれば、第3の解を求めると表現することもできます。


 故松下幸之助氏の言葉を、最後に紹介いたします。

「企業は、本業を通じて社会貢献する。利益とは、社会に貢献したことへの証しである。多くの利益を与えられたということは、その利益を使ってさらなる社会貢献せよとの世の声だ。」

 想いを深め、ぜひ今後の難局に立ち向かって行ってください。
 
 
 
■井上 康由
中小企業診断士、社会保険労務士、MBTI認定ユーザー
中小企業診断協会東京支部中央支会理事


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