一般社団法人東京都中小企業診断士協会 中央支部
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業種別業界別トピックス「街を助けるクリニック:在宅医療のあるべき姿とは」(2011年2月)
弥冨 尚志

1)医療資源の最適化

「新医療計画」(以後:計画)では病院とクリニックの機能を明確に分けて病院と言う施設での治療のみに集中するのではなく、地域一体で一人の患者をシームレスに治療していこうと言うものでした。勿論、この施策の背景には医療費抑制等の本音があったとしても医療資源を効率的に配置・活用することが結果、"質"の向上にも資すると言うものでした。その意味で地域のクリニックは急性期を脱した回復期や慢性期の患者を在宅でケアする受け皿的位置づけで計画では考えられていました。計画表に載るか載らないかがクリニック経営に大きな影響を及ぼすと考えられたのも当然です。これは診療報酬の過去の改定の経緯でも疲弊した急性期入院医療を重点的にケアしてきたように病院に過度な集中を少しでも平準化し急性期の立て直しに資するものでした。


2)慢性期入院の担い手

急性期病床の平均在院日数が大幅に短縮されていく中で慢性期病床の患者が増加している実態があります。この担い手として医療療養病床が挙げられますが91日越えの長期入院は完全包括払い(DPC/PDPS)となると考えられています。そうなると療養病床を抱える病院にとっては経営に大きな打撃になり慢性期の患者を90日で退院させなくてはなりません。慢性期の患者の行き場がなくなるようなことになれば地域医療はたちまち崩壊する恐れがあるのでドラスティックな施策は打たれないと考えられますが、医療区分等々の問題からもここにメスが入るのは必然的な流れかもしれません。


3)在宅医療の担い手

計画の最大の目的は一般病床の見直しにあったことは今も変わりません。急性期病床は計画でも更に細かく見直され再編が進むことが予測されます。その中で昨年12月に社会保障審議会医療部で検討されたことに注目したいデータがあります。それは「人はどこで死んでいるか」と言うことです。

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図-1

 この表から見えることは1975年過ぎから自宅で亡くなるより病院で亡くなる方が増える傾向にありその傾向は他の施設の増加傾向はあっても自宅での見取る傾向が減少にあることです。慢性期病床はどういう施策で対応しても増えることはあっても減ることはないでしょう。図-2を見て頂ければ今後各道府県において高齢者が爆発的に増加することがわかります。これらの事を考えると、慢性期、終末期医療を施設から地域へ、自宅に戻すことが求められることは容易に想像出来ます。特に都市部での高齢者の増加は顕著です。単身高齢者が増える傾向でこれらのニーズに対応する為に療養病床等を増やすことを国・自治体が行うでしょうか。施設で亡くなるのではなく自宅で身取られることが患者の基本的ニーズでもあり医療費抑制と言う観点から間違いなくここに重点的な施策が今後行われる可能性が高いでしょう。一般病床の見直しとは結論から言えば病床総数削減です。そこに急性期も慢性期もひっくるめて言うのであれば「ベットから布団に」、自宅に返すことが求められるでしょう。

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図-2


4)地域連携の拠点であるクリニックの役割

 ここで一つ言えることがあります。それは慢性期や終末期医療は病院で行うべきかと言うと言うことです。少し乱暴な考え方ですが高度な治療処置を要する急性期以外(いわゆる救急医療等)は地域医療が行わざるを得ないと言うことです。計画では病院とクリニックの連携に力点が置かれています。しかし今後求められるのは、地域での連携です。介護施設や調剤薬局、行政やNPO等など地域の高齢者を初めとする在宅療養者に適切な医療サービスを提供するための仕組みの構築にクリニックが果たす役割は大きいはずです。これは計画で示された物を見ると分かりやすのですが、地域を2次医療圏のような大きな枠組みと同じように考えます。

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図-3


5)町会の顔役になるクリニック

 図-3に示された通り計画では地域完結型として1つの施設、病院の機能に全て患者を託すのではなく地域全体で患者を治療、見守ると言うことです。ここに身取りと言う観点も入れて考えるとどうなるでしょうか。これは同じ先月の社会保障会議で厚労省のHPに掲載されたものですが日本薬剤師会の山本副会長が薬剤師の今後の地域医療への関わり方としてどうあるべきかを示した図です。これは今後の地域医療のあるべき姿を示していると思います。

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図-4

 ここで言う地域とはもはや「町会」レベルのエリアの想定と言えます。この図は薬薬連携における患者情報共有の図式ですが医師においても同じことが言えます。病院の医師とクリニックの医師も情報共有を図り患者にとって望ましい医療を提供することが望まれます。クリニックの医師は町の機関との連携のピンになり患者を囲い込むことが出来るのです。集患に苦労するクリニックが多い中でその限定された地域の中で患者本位の連携主役を果たしていけば自ずと患者が集まるクリニックとなる可能性は今後は高くなると考えられます。これは診療科目にこだわることなく可能だと思われます。内科系・外科系関係なく連携に関わることが必要だと思います。
 その患者の望む医療に応じて対応者(クリニック)を選任出来る仕組み作りも必要でしょう。これには地域の医師会が積極的な役割を果たすことが求められます。医師会も薬剤師会・栄養士会・看護師会等々、各コメディカルの諸団体と密接な連携を構築すべきでしょう。

 よくクリニックは「老人のたまり場」だと揶揄されことを聞きますが、この連携構想ではそれが求められているのです。溜まり場でいいのです。高齢者が集まる場所としてのクリニック。それも1つの姿だと思います。医師は将に町会長としての役割を果たすことが望ましいのではないでしょうか。身取りの役割は地域のクリニックが担うべきだと思います



■弥冨 尚志
中央支会
渉外部副部長


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