遠藤 孔仁
1月21日付の日経新聞に日本が家電の純輸入国になったという記事がありました。これは2010年の薄型テレビやデジタル家電製品の輸入額が輸出額を上回ったことにより、すでに輸入が超過している冷蔵庫などの白物家電を含め、家電の純輸入国となったことを意味しています。こうした背景には1ドル=80円台の円高基調が続き、国内でのものづくりが立ち行かなくなり、アジアの新興国など海外に生産がシフトしていることがあげられます。
また、ものづくりという観点からみると、今までの日本が優位性を保ってきた高品質の製品やすり合わせといった技術が長期的な優位性を保つことが難しくなっています。そこには、部品をモジュール化することにより比較的早くに技術をキャッチアップできてしまうため、製品のコモディティ化がすすみ、価格以外に差別化する点を見出しにくくなっている点があげられます。
では、このような厳しい環境を生き抜いていくために、これから我々はどのようにしていけばよいのでしょうか。グローバル化を推進することがよいのでしょうか。カイゼンを行ってコスト競争力をつけるのがよいでしょうか。確かにそれぞれとるべき戦略かもしれませんが、10年先、20年先を見越したとき、はたしてこのままでいられるかと考えると悲観的にならざるを得ないのではないでしょうか。
ここからちょっと視点を変えたいと思います。
かつてのソニーのウォークマンや現在のアップルのiPodといったモノは、機能や品質がよかったという理由だけで世界的なヒット商品となったのでしょうか。そこには、例えばウォークマンであればいつでもどこでも音楽を聴くことであり、iPodであれば自宅の音楽などの環境を簡単に持ち運びするコトを実現できるモノが受け入れられたと考えられないでしょうか。 つまりは、そのモノ自体ではなく、そのモノを使うことによってユーザにもたらす価値(コト)が何であったのかが大事であり、そこをモノづくりの出発点とすることが求められているのではないでしょうか。
では、具体的にどのようにすればよいのでしょうか。
例えば、前川製作所は産業用冷熱装置などの開発・生産を行う会社では、顧客の経験を共に体験し、顧客に棲み込むことによって、顧客が抱える本質的な課題を見出し、それを共に解決していくことにより業績を伸ばしています。
そこにはメーカがユーザに対して何かを一方的に与えるという関係ではなく、メーカとユーザが共に創り上げていく関係があり、その関係性を通してユーザが抱える本質的なニーズ(課題)を解決するためのモノを作っています。
そこには、①お客様を含む状況の中に身をおき、その広い視点の状況の流れと課題など特定のイベントとの関係を認識する、②その関係性を目に見える形にする、③その関係性を通したモノのあり方を考える、④関係に基づいて具体的商品やサービスを導く、といった流れのモノづくりがあります。
この流れのモノづくりは、お客様が置かれた環境と自社との関係性の中から、自社の製品に求められるコトを導き出し、それを実現するモノを作っていくものです。それは、お客様の真のニーズを引き出すプロセスであり、製品の価値を高めるプロセスとなります。
これからはいままでの「モノづくり」の世界から一歩すすんで、自社の想い、製品の価値を語り、お客様と共に製品を作り上げていく新しい視点の「コトモノづくり」にシフトされてはいかがでしょうか。
■遠藤 孔仁(えんどうこうじ)
中小企業診断協会 東京支部中央支会理事
ITコーディネータ