一般社団法人東京都中小企業診断士協会 中央支部
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経営者向けQ&A「東北の震災の影響で、給与が払えない!」(2011年3月)
大脇 ひと美

【質問】

「東北の震災の影響で、給与が払えない!」


【回答】

 東北地方太平洋沖地震の影響が、全国に広がりつつあります。工場や営業所が東北にある場合だけでなく、関東地方でも計画停電が無期限で計画されいることや、自粛ムードによる消費低迷など、これから、どんどん日本国中の企業に様々な影響が出てくるでしょう。復興するのにはかなり長期間かかることも予想されています。
 売上が低迷するなか、労働者に対する給与は払っていかなければなりません。「給与払えないよ。どうしよう。」という相談も寄せられるでしょう。具体的な手続きは、社会保険労務士でなければできないものもありますが、「こんな制度がありますよ」と情報提供するだけでも、喜ばれるはずです。


●被災地域で、いったん廃業せざるを得ない場合

 地震のため、事業活動の停止のやむなきに至り、賃金の支払のための資金が確保できず、賃金が未払いのまま退職を余儀なくされた労働者に対し、事業主に代わって国が未払い賃金を立替払いしてくれる制度があります。
 災害救助法で被災地域として認定された地域(東京都を除く)に本社がある事業所が、地震による建物の倒壊等の直接的な被害により事業活動が停止し、再開する見込みがない場合、独立行政法人労働者健康福祉機構が支払ってくれます。被災地域で必要書類の入手が困難な場合も、必要書類を簡略化して、自治体が発行する罹災証明書等を活用して迅速な支払をするよう厚生労働省が通達を出しています。
 申請できるのは、労災保険に加入していた事業所で働いていた労働者で、支払われる額は、給与、退職金等の未払額の8割(年齢による上限額あり)です。


●被災地域で、事業再開を目指すけれど、当面の間労働者を休ませる場合

 事業所が災害を受けたことにより事業を一時的に休止した場合や、廃止したが事業再開後に再雇用が予定される場合で、賃金を受けることができない状態にあれば、実際に離職していなくても失業保険を貰うことができます。
 ただし、雇用保険に6ヶ月以上加入していた労働者が対象となります。


●事業を継続しているが、労働者を休業させる必要がある場合

 会社が労働者を休業を命じる場合、通常は、給与の6割に相当する休業手当を支払わなければなりませんが、地震のために休業せざるを得ない場合は、事業主の責に帰すべき事由に該当しないので、休ませている期間中に休業手当を支払う必要はありません。これは、地震により施設・設備が直接的な被害を受けた場合だけでなく、計画停電によって休業せざるを得ない場合も、支払の義務はありません。
 ただし、施設・設備が直接的な被害を受けておらず、取引先や鉄道・道路が被害を受け、原材料の仕入れ、製品の納入等が不可能となった場合など、経済的理由や、間接的な影響による場合は、原則としては休業手当の支払の必要があります。例外的に①取引先への依存の程度、②輸送経路の状況、③他の代替手段の可能性、④災害発生からの期間、⑤使用者としての休業回避のための具体的努力などを総合的に勘案し、支払わなくて良いと認められる場合もありますので、最寄の労働基準監督署に相談に行くことをお勧めします。


●社会保険料が払えない

 青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県の事業所の社会保険料の口座引落は、自動的に停止されています。これら5県以外の地域でも、災害により全財産の20%以上の額の損害が生じた場合は、猶予の申請をすることができます。新たな納期限は、復旧状況を踏まえ、告示で定められます。
 自営業者などが加入する国民年金の保険料についても、免除の申請をすることで、将来の年金受給の際の不利益を小さくすることができます。


●なんとか労働者に給与を払うので、国から援助してもらいたい場合

 直接的な被害を受けた地域だけでなく、間接的な被害を受けて、事業活動の縮小を余儀なくされた場合で、労働者を休業させる場合は、休業手当を支払わなければなりませんが、支払わなければならない額の大半を助成してもらうことができます。雇用調整助成金(中小企業の場合は、中小企業緊急雇用安定助成金)です。
 具体的な例として、交通手段の途絶により従業員が出勤できない、原材料の入手や製品の搬出ができない、来客が減った、風評被害のため売上が減少した、計画停電のために休業する場合などです。雇用保険の適用事業所で、最近3ヶ月の売上高が、その直前3ヶ月又は昨年同期と比べて5%以上減少している場合に、休業計画を作成し、実際に休業させ給与を支払えば受給できます。
 青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県の場合は、被災後1ヶ月の生産量、売上高が減少の見込みで申請することができるほか、遡って届け出たものとの取り扱いもあります。
 助成される額は、支払った額の2/3(大企業)や4/5(中小企業)、解雇を行っていないなどの要件を満たす場合は3/4(大企業)、9/10(中小企業)です。
 
 
 
■大脇 ひと美
中小企業診断士、社会保険労務士、行政書士
(社)中小企業診断協会東京支部中央支会理事
(株)クライアントサービス 代表取締役


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