木伏 源太
「トランスフォーメーション」は、軍隊の再編などを指して使われる用語です。
企業経営においても、事業環境の変化に対応し、新たな事業機会を捉える上で、人材の再編成が必要になることがあります。
これまでの人材の質では市場で勝ち残っていけない、新たな市場攻略を目指して人員をダイナミックにシフトしたい、これまでとは異なる雇用形態の人材を活用したい・・・。
人事制度改革なしに、これらのことを実現することは困難です。
逆に言うと、人事制度改革は、そういった"狙い"を持って取り組むべきものなのです。
今回はこうした"狙い"を実現するための人事制度改革について紹介します。
(1)人材の能力・行動の変革を図る人事制度改革
市場が変化して、これまでの人材では顧客の要求に応えられなくなってきた。
特にサービス業では人材が商品そのものですから、人材の競争力の低下は、企業競争力の低下に直結します。
そんな時、単なる叱咤激励では、ジリ貧に陥る可能性が高いと言えます。人材に対する再教育などを行えばまだ復調できるかもしれませんが、それだけでは期待するほどの効果は得られないことが多いでしょう。
人事制度、特に評価制度の変革は、より確実に人材の能力を高め、より効果が継続する手法です。
ただし、単に求める成果を規定して、結果を厳しく評価すればよいかと言うと、そうではありません。
結果につながるプロセスを明らかにし、求められる能力や行動特性を定義し、それに基づいて評価する制度としなければなりません。また処遇との結び付け方にも工夫を凝らさないと、弊害が大きくなってしまうことがあります。
これらの留意点を踏まえた人事制度改革であれば、企業競争力の向上に役に立ちます。
(2)人材の「玉突き」を企図しての人事制度改革
新たな市場を攻略したい。そのための人材余力を創出したい。
そんな時にまず思い付くのは新たな人材を雇用することです。
しかし、新たな人材を雇用することは、人件費の増大に直結します。また、採用した人材が期待通りの働きをしてくれるかどうか分かりません。
全く人材がいない会社であればともかく、今までの市場で十分活躍している人材を、新市場に投入することが最も確実な方法のはずです。
そのために、これまで比較的簡単な業務を担っていた人材のレベルを引き上げて今までの市場を担当させ、そこで手の空いた人材を新市場に投入する、という「玉突き」をすることが考えられます。
数人といった規模でなく、十数人以上の規模でこれを行おうとすると、人事運用では対応できません。レベルを引き上げるための評価基準の策定、引き上げた業務レベルに合った処遇水準の実現など、人事制度の改定を行うことで、ダイナミックな人材シフトが可能になるのです。
最も重要な経営資源である人材の最大活用は、常に重要な経営課題です。それを促進するためには、人事制度改革が有力な方法です。
どのようにすれば人材のトランスフォーメーションを成功させられるのか。企業戦略と人事制度改革に詳しい中小企業診断士にご相談ください。
■木伏 源太(きぶし げんた)
社団法人中小企業診断協会東京支部中央支会常任理事
中小企業診断士