小林 敬幸
1.与信管理とは?
多くの企業は、商品の販売、すなわち売上を上げることには関心が強いのですが、代金の回収にはそれほど重要と考えられてはいないのが現状ではないでしょうか。
なるほど、取引先の多くは信用のおける優良企業であることは間違いないと思われますが、いかに優良な企業であっても、いつ、いかなる時にも経営状態が悪化して業績不振に陥り、売掛金や受取手形などの債権が回収不能となるとも限りません。
販売が先で回収は後、と考えるのではなく、あくまで回収が確実な取引先に販売する、と認識することが大切です。
そのためには、取引先の信用状況を十分調査した上で、この取引先に対してはこの限度額まで取引する、といういわゆる「信用供与」を行い、さらにそれを逐次見直しながら取引先を管理するという方法をとることです。これを「与信管理」と言います。
与信管理は、単に取引先を管理するだけでなく、それを通して取引先の倒産によるコスト増を防ぎ、ひいては強い体質づくりにつながるものといえます。

2.与信管理の実際
(1)与信限度額の設定
新規に取引先と取引を開始するときは、現金取引から始めることが無難ですが、いつまでも現金取引を続けていてはそれ以上の取引の発展にはつながりません。
しかし、一方で、むやみに取引を拡大すると今度は資金の回収不能リスクが生じてきます。
このような場合に、その取引先に対して与信限度額を設定して、その限度額の範囲内で取引を行うことで、安全かつ迅速な取引を図ることができます。
与信限度額は、その取引先とのこれまでの取引実績(たとえば、過去3カ年程度の売掛金と受取手形の残高を算出し、その推移を調べるなど)から基準額を算出、これに取引先の信用調査や担保の有無などを加味して最終的に限度額を設定します。
(2)与信限度額の見直し
与信限度額を設定したからもうその取引先とは安心、ということにはなりません。「企業は生き物」といわれるように、取引先の動向には常に注意を怠らず、その事業内容や業績の推移、社内の様子などの情報の収集に努めなければなりません。
そして、それらの情報に基づいて定期的に与信限度額を見直し、取引の現状に応じたものにしておくことが大切です。
その際には、たとえば「取引先与信管理票」などを作成しておき、これに取引先の与信限度額はもとより、与信期限や業績推移、トピックスなどの情報を記録しておき、社内での情報の共有化を図っておくことも大切でしょう。
(3)与信管理規定の設定
与信限度額の定期的な見直しとともに、与信管理の運営のためには、あらかじめ社内でのルール作りも必要なことです。たとえば、与信管理の目的、与信債権の範囲、管理部門と責任者、などを取り決めておくことで社内での体制が明確になり、適正な与信管理の運営が行われることになります。

3.与信管理の留意点
(1)安易な与信管理は禁物
現在は業績優良先であっても、先方から要求されたままに取引額を安易に設定するのではなく、あくまで、これまでの取引実績や信用調査などにもとづいて、関係部署も含めた"自社の判断"で与信限度額の設定を行うことが重要です。
(2)定期的な見直し体制の構築
与信限度額の見直しを行った、といっても一度だけの見直しだけでは、常に変化する取引先の業績に対応できません。常に取引先の業績推移や訪問時の社内の状況の変化などの情報収集に努めて定期的な与信限度額の見直しをする、という社内での体制づくりが、ひいては自社の健全な発展につながっていきます。
■小林 敬幸(こばやし ひろゆき)
中小企業診断士
RMCA-J上級リスクコンサルタント
中小企業診断協会東京支部正会員(中央支会理事)