篠部 悠
消費生活者の使用製品に対する安全・安心への意識は、かなり高いものがあります。しかし、意識が高いからといって、使用によって発生する事故や不具合は、完全に無くなることはありません。企業によっては顧客満足の視点から、安全な製品を作る仕組み、安全に使用してもらう取り組み、事故が発生した場合の取り組みなどについて、国の安全対策で要求される基準をさらに超える厳しい対策に取り組み、自社のビジネスに有効活用するケースが見られます。製品安全対策については国の関心も高く、今までに優良企業表彰を5回実施しています。今回の経済産業大臣賞分野では、受賞企業4社中2社は中小企業でした。アキュフェーズ社の場合取扱製品について、長期保証の実現をしていますが、ヒントは、メーカーの製品使用期間について長く使用できると表示されているのに、無料の保証期間は1年とか短いことに疑問を持ったことから始まったそうです。びーんず社は従業員数が5人であり、今まで表彰された中で最少人員の企業が表彰されるという素晴らしい結果となっています。
国の製品安全政策の概要と中小企業2社の受賞のポイントを紹介いたします。
Ⅰ.製品安全政策の全体像
「製品安全関連4法」
一般法 1.消費生活用製品安全法
個別法 2.電気用品安全法
3.ガス事業法(ガス用品の安全性確保に関する部分)
4.液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法
(液化石油ガス器具等の安全性確保に関する部分)
この4法に基づき、下記3項目の実施が求められています。
(1)製品の技術基準への適合・製品の表示義務等
製造・輸入事業者に対して、対象品目を指定し、技術基準適合や販売時のPSマーク添付を義務付け。
◇(菱マーク)のPSマーク対象製品:登録機関による第三者認証が必要
○(丸マーク)のPSマーク対象製品:自己適合確認で対応
(2)経年劣化対策(長期使用製品安全点検・表示制度)
経年劣化による事故を未然に防止するため、製造・輸入事業者に対して、長期に使用する製品について、「設計上の標準試用期間」の設定を義務付け、消費者による点検その他の保守を適切に支援。
①長期使用製品安全点検制度
・「特定保守製品」に該当する製品には「設計上の標準試用期間」を設定する。
・特定保守製品を購入した者は、購入時に所有者登録を行う。
・点検時期が近付いたら、事業者から所有者登録を行った者に通知文を送付し、
所有者の求めに応じて、点検修理を(有償)行う。
・特定保守製品:石油給湯器、石油風呂釜、ビルトイン電気食器洗機、屋内式ガス瞬間湯沸器、
屋内式ガス風呂釜、浴室用電気乾燥機
②長期使用製品安全表示制度
・対象製品に「設計上の標準試用期間」を表示。
この期間を過ぎた製品を使用する消費者は注意が必要。
・対象品目:扇風機、換気扇、エアコン、全自動洗濯機、2層式洗濯機、他1
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(3)製品事故情報の収集 (重大製品事故情報報告・公表制度)
①消費生活用製品の製造・輸入事業者に対して、重大事故の発生を知った時は、
10日以内に国に報告することを義務付け。
②報告対象となる重大事故の範囲は、死亡、重傷(治療期間30日以上)、
後遺障害、一酸化炭素中毒、火災(消防が確認したもの)
③2010年度に収集した製品事故情報は、4,788件。うち重大製品事故の受付件数は1,141件。
製品事故情報は数年減りつつあったが当年度は前年より9.5%増加。
Ⅱ.優良表彰中小企業の受賞ポイント
(1)「アキュフェーズ株式会社」
事業内容:高級民生用音響機器、業務用音響機器の開発・製造
横浜市、従業員75名
○製造から販売、購入までのトレーサビリティ確保
製造時に製品をシリアル番号で管理するとともに、部品情報や製品試験結果等の製造履歴を保有。また当該製品の販売先及び購入者情報、修理情報等を把握・管理し、リコール時にも素早い対応が可能。
○製品開発・アフターサービスの実施
IEC(International Electrotechnical. Commission)規格などの国際規格等をベースとして、自社独自の基準を策定・運用。世界同一仕様の製品を製造し、「壊れにくいもの、壊れても直せるもの」という考えに基づく製品開発・アフターサービスを実施。
○長年の製品安全活動に基づく長期保証の実現
設計段階から安全性を確認した製品開発(部品選定)を徹底。製品(部品)の改良や修理実績等のデータに基づき、無料保証期間を2年間(創業時より)から3年間(1999年より)、5年間(2009年より)へと段階的に延長。
(2)「びーんず株式会社」
事業内容:家庭用電化製品の販売、修理、サービス全般
兵庫県、従業員5名
○メーカー等と連携して製品の不具合に係る原因分析を実施
製品に不具合等が発生し、再発や拡大の恐れがある場合、メーカーの責任者やサービス会社の責任者と共同で不具合の原因分析を実施し、対応策を検討。
○リコール時の即時対応
メーカーからリコール情報が入った場合、自社の販売データベース(25年分)からお客様情報を抽出し、即日お客様に電話で情報提供を行うとともに、お客様宅を訪問して事故の未然防止に努めている。
○細やかなアフターサービスの実施
商品は必ず自社の社員がお客様宅へお届し、その後の訪問活動では、お客様が商品を誤った使い方をしていないか、困っていることはないか確認するなど、細やかなアフターサービスを実施。
資料:経済産業省 製品安全総点検セミナー
2011製品安全対策優良企業パンフレット
■篠部 悠
中小企業診断士