遠藤 孔仁

 
 アベノミクスにより、日本経済に活況が戻りつつありますが、コモディティ化、グローバル化の流れは変わることなく、厳しい競争環境は依然変わらない状況です。
 そこで、成長戦略のキーファクターとして、イノベーション、市場創造を実践するための「コトづくり」をご紹介いたします。
 コトづくりを理解するうえでのキーワードとして、次の3つが挙げられます。
  ① 価値提案への転換
  ② 顧客との共創
  ③ ITを利用した見える化
①価値提案への転換
 ここでのポイントは、「我々は何を提供するのか」、ということについて、改めて考えてみることです。
 例えば、テレビという「モノ」を提供すると定義するのであれば、お客様はどのようなテレビがよいのかという視点から、そのモノ自体の機能や特徴というスペックが中心となってしまいます。ここで、発想の転換が必要となります。お客様が欲しているのは、テレビという「モノ」そのものではなく、例えば、映画などの娯楽を楽しむという「コト」の側面からみていくと、レンタルビデオやインターネットなどさまざまな手段があることがわかります。
 そういった数ある選択肢の一つであるテレビに求められている価値は何かという視点から見てみると、テレビという枠を超えた「モノ」を提供するという発想が生まれるかもしれません。
②顧客との共創
 お客様との関係性をどのようにとらえるかが、ポイントになります。お客様を常に正しく、お客様の要求に100%応えるという姿勢を貫くのか、逆に、良いものを作り続ければ、お客様から支持を得られるという姿勢を貫くのか、それぞれあると思います。しかし、いずれも、お客様を対象としてとらえ、どのようなアクションをとるのかという違いにすぎません。
 そうではなく、お客様の想いと、我々が伝えた想いを通して、新しい「コト」を共に創るパートナーとして、お客様をとらえることです。そうした場を通して、お互いの背景や想いに対して、お客様とコミュニケーションを図り、経験を共有することにより、新しい価値を創造する土壌を育みます。
③ITを利用した見える化
 人と人が関わり合い、関係性を築き上げていくことは、非常に時間が必要な作業となります。インターネットの普及や情報技術の発達により、時間的・場所的な制約がない対応が可能となっております。また、ビックデータが注目を浴びていますが、以前よりも取り扱うことができる情報量が飛躍的に多くなっており、さまざまな角度からの分析が可能となり、また、センシング技術が発達したため、細かなプロセスを見える化することにより、これまで感覚的にしかとらえられないものを、データとして扱うことができるようになります。
 
 
 
■遠藤 孔仁(えんどうこうじ)
東京都中小企業診断士協会 中央支部 執行委員