金綱 潤

農商工連携とは
 農商工連携とは「中小企業者と農林漁業者が有機的に連携し、お互いの経営資源を持ち寄り新しい事業に挑戦することにより、新商品若しくは新サービスが実現し、互いの経営の向上を目指す取組み。」と定義されています。
 *農商工等連携促進法(法律の公布 H20.5.23、施行 H20.7.21)
 何だか難しそうですね。しかしその内容を吟味してみますと、中小企業者、農業者にとって本質的な経営改善のキッカケになることがしっかり入っています。
認定要件に見る経営支援のポイント
 「有機的に連携」とは、それぞれが、相手方は保有していないが自らは保有する経営資源を互いに持ち寄り、連携事業期間を通じて、両者いずれもが主体的に参画すること と言う解釈です。
 例えば、ダイエットに関心のある若い女性向けに冷凍点心を開発する場合に、農業者は、自社の栽培技術を工夫し、完熟度の異なる芋を栽培・選別・カットしたり中小企業者が冷凍加工時にドリップが出ないように自社の調理加工技術を提供し合い、少しでもヘルシーに美味しいものを手軽に食べたい前述のニーズにお互いが英知を絞って協力し合おうとする関係です。つまり「売り買い」の一般的な商取引の枠を超えた協力関係を結べるか否か?が問われます。
 中小企業者、農業者が大手に伍して独自の成長戦略を実行するためには、単なる売り買いの取引関係では最適なサプライチェーン等は組めません。この言葉はそれに対する警鐘とも取れます。
 「お互いの経営資源を持ち寄り新しい事業に挑戦する」とは両者の有する設備、技術、個人の有する知識及び技能その他ビジネスノウハウ等を活用し、事業実施主体にとって、従来、開発・生産したことのない新たな商品又は役務を創造しなさいと言う意味です。先の事例に即して説明するならば、美味しい冷凍点心にするために農業者は今まで取り組んでこなかった中華野菜(パクチーや空芯菜等)の栽培にチャレンジし点心の具材のアクセントを持たせ、中小企業者は点心の皮の部分に、今まで取り組んでこなかった身崩れしにくい「三浦大根」を活用することで「カリッとした食感とヘルシーニーズを、両立させる」ことにチャレンジする計画にした認定事例もあります。
 考えてみれば当たり前ですが、事業者が新たな成長ステージに進むためには「一皮むける」アクションが必要になります。定期・定例のことを繰り返すだけでは、経営革新は果たせません。そうは言っても全く知見や経験のないことに手を出してもリスクばかり高くなりリターンは見込みづらいものになってしまいます。だからこそ、本法では、お互いの「切り札」になり得る「経営資源」を上手に活用しなさいと言っています。
 以上のことを中小企業者、農業者等の支援に置き換えて考えてみると、結局多くの事業者が実際に取り組んでいる内容に重なることが本当に多いことを痛感します。
 今まで、中々成果が出せなかった事業者が成長企業に飛躍するためには
・従来とは発想・切り口とは異なるコンセプトの商品・サービスの開発・販売への挑戦
・蓄積してきたノウハウや知見、技術、設備、人材の特徴を活かした新たな挑戦
・新たな顧客創造に向けてのWIN=WINになり得る企業間連携への挑戦
の3つの挑戦(チャレンジ)が期待されています。それが新たな顧客価値の創造の定石だからです。それ故、事業者の皆さまには先入観を持たずに様々な法認定施策について我々診断士を気軽に活用いただければ・・と存じます。ご一読有難うございます。
■金綱 潤(かねつな じゅん)
J,sディレクションズ経営研究所 代表
中小企業診断士
消費生活アドバイザー
ターンアラウンドマネージャー
キャリアコンサルタント
(社)東京都中小企業診断士協会中央支部 副支部長
地域活性化支援、企業再生、創業者支援、飲食・サービス業の業態革新等を中心テーマに
事業者へのブランディング、商品開発、販路開拓、新事業展開等のコンサルティング、研修等の支援を展開しています。