古賀 元

 「段取り八分、仕事二分」などとも言われ、仕事の良し悪しは事前準備である「段取り」よって決まる、段取りが終われば仕事の8割は終わったようなものなどと言われます。自然に段取り力を駆使している人も多いと思いますが、あらためて段取りについて考えてみます。
1.段取りとは
 段取りとは、もともとは歌舞伎の楽屋用語であり、「段」とは話の区切りや一幕のことをいい、「段取り」とは芝居全体の話の筋や構成の運びのことを指す言葉でした。現在では、それが転じて、うまく事が運ぶように前もって順序や手順を整えることの意味で日常的に使われる言葉となっています。
 そして、ビジネスにおける段取りとは、成果を最大化するために、仕事に関わる様々な準備を行ない、遂行のプロセスを効率化することです。
 段取りは一種のスキル(技能)であり、訓練によって誰でも身につけることが可能です。段取りの仕方について悩んでいる部下がいる場合には、以下の流れに従って段取り力をつける訓練を行い、段取りのスキルを身につけることができるよう指導を行なうと良いでしょう。
①仕事リストを作る
 段取りがうまく付けられない人の特徴として、仕事についての優先順位付けができないことが挙げられます。当日に行なう仕事をリストアップした上で、その優先順位付けを行ない、仕事の重要度のランクづけを行ないます。このことにより、時間を有効に使うことができるようになるだけでなく、行き当たりばったりの仕事が減少し、効率的に仕事を進めることが可能となります。
②簡単な仕事は、すぐに行なう
 仕事の優先順位を付け、重要度の高い仕事は優先して行なうこととともに、目の前にある簡単な仕事については、すぐに処理をおこない、仕事をためないようにすることが重要となります。簡単な仕事と思い後回しにすると、同じような仕事が積み重なり、処理をすることが難しくなっていきます。簡単な仕事については、重要度の高い仕事の隙間などに、すぐに処理を行なう癖をつけるようにしましょう。また、簡単な仕事については、処理に時間がかからないよう、予め処理のための仕組みを作ってしまい、作業の定型化を行なうことも仕事の効率化を図る上で重要となります。
③捨てる技術を養う
 モノや情報があふれると、必要な事項を探すことに時間がかかり、仕事の効率が下がってしまいます。机の周りにモノや書類があふれている、パソコンのデスクトップがアイコンで埋まっているという人は要注意です。必要なモノや情報を必要な時にすぐに取り出すことができることは、仕事の段取りを行なう上でとても重要になってきます。仕事の優先順位を付けることと同じように、モノや情報にも優先順位を付け、不必要なモノや情報は思いきって「捨てる」という技術を磨くことが必要です。
2.段取りの基本ステップ
 仕事には簡単な作業から、新規事業の立ち上げなどのプロジェクトまで様々なものがあります。しかし、その段取りにおいての基本ステップは、ほぼ一定化されています。
 ①目的・目標の明確化
 ②期限・期日の設定
 ③作業のリストアップ
 ④作業の分類と整理
 ⑤作業手順の決定
 ⑥スケジューリング
 ⑦実行
 ⑧評価
 段取りの流れを簡単に捉えると、計画→実行→評価 となります。順を追ってこのステップを行なうことで、段取りのスキルが自然と身についていくことになります。
3.おわりに
 「仕事ができる」と言われる人の共通の特徴として、段取りを付けることがうまいということが挙げられます。もともと段取りを付けるのがうまい人もいますが、段取り力はあくまでも訓練によって身につけることができる「スキル」であることを理解し、部下への指導を行っていくことが大切です。段取り力が上がることにより、タイムマネジメントが自然とできるようになり、仕事の効率化も図れるようになります。各人の「段取り力」をうまく向上させることで、顧客満足や社内環境の向上につなげていきたいものです。
参考文献:
「できる人」の段取り力(三笠書房)
仕事ができる人の段取りの技術(東洋経済新報社)
段取り力を高める(産業能率大学)
 
 
 
■古賀 元
東京都中小企業診断士協会 中央支部 執行委員
中小企業診断士 / ファイナンシャルプランナー