守谷 元伸

 BABOK(R)をご存じでしょうか。
BABOK(R)とはBusiness Analysis Body of Knowledgeの略で、カナダトロントにあるNPO法人IIBA(R)(International Institute of Business Analysis)がビジネスアナリシス(ビジネス分析)のノウハウを標準化したものです。

もし、PMBOK(Project Management Body of  Knowledge)をご存知でしたら理解が早いかもしれません。PMBOKはプロジェクトやシステムを対象にしていますが、BABOK(R)はビジネス全体や組織を対象にしています。

BABOK(R)2.0は以下の7つの知識エリアからなりたっています。

1.ビジネスアナリシスの計画とモニタリング
2.引き出し
3.要求のマネジメントとコミュニケーション
4.エンタープライズアナリシス
5.要求アナリシス
6.ソリューションのアセスメントと妥当性確認
7.基礎コンピタンシー

それぞれの知識エリアはさらにいくつかのタスクから成り立っています。

それぞれの知識エリアやタスクはビジネスを分析したり、ビジネスを進めたりする上で非常に参考になりますが、知識エリアで私が注目するのは基礎コンピテンシーです。

ビジネスマンがもつべきコンピテンシー(高い業績をあげるための思考・行動特性)はいろいろなところで提唱されていますが、ここでのコンピテンシーもビジネスアナリストが持つべき基礎コンピテンシーという意味にとどまらず、ビジネスマンが持つべき基礎コンピテンシーではないかと思います。

以下に詳細をご紹介します。

まず、最初は「分析的思考と問題解決」です。
ここには「創造的思考」、「意思決定」、「学習」、「問題解決」、「システム思考」が含まれます。「創造的思考」は単に考えるだけではなく、”新しい”アイディア、コンセプト、利用方法等を考えることです。また、「システム思考」は、ICTのシステムだけではなく、ビジネスシステムとして、どのようにシステムを構成しているか、構成するかを俯瞰して理解できることだと思います。

次に「行動特性」です。ここには「論理」、「自己管理」、「信頼感」が含まれます。これらの要素がビジネスマンに必須であることはいうまでもないでしょう。

3つ目は「ビジネスの知識」です。コンピテンシーは知識は含まないという考え方もありますが、ここでは広義でコンピテンシーに知識を含めているものと思います。

ここには、「ビジネス原則とプラクティス」、「業界の知識」、「組織の知識」、「ソリューションの知識」が含まれます。「ビジネス原則とプラクティス」のプラクティスはベストプラクティスをさします。その他の知識をビジネスマンとしてもつべきなのも明らかでしょう。

4つめは「コミュニケーション(情報伝達)のスキル」です。ここには「口頭伝達(オーラルコミュニケーション)」、「教えるスキル」、「文字伝達(文書コミュニケーション)」が含まれます。

話すこと、書くことはビジネスを行う上で非常に重要ですが、うまく教えることによって、後進を育成する、組織を向上させていくことも重要です。

5つ目は「人間関係のスキル」です。ここでは、「ファシリテーションとネゴシエーション」、「リーダーシップと感化力」、「チームワーク」が含まれます。

ステークスホルダ間の対立を解決するために、ファシリテーションしたり、ステークスホルダとネゴシエーションすることは重要です。また、リーダーシップやチームワークだけではなく、人を巻き込んでやる気にさせる力(感化力)も必要です。

最後は、「ソフトウェアアプリケーションの活用」です。これには「汎用アプリケーション」、「専用アプリケーション」が含まれます。ここでの「汎用アプリケーション」は、ワープロ、表計算ソフト、プレゼンテーションソフト、コミュニケーションツール等のアプリケーションを示します。

また、「専用アプリケーション」はBABOKでは、モデリングツールや要求管理ツールを示しますが、ビジネスマンとして考えると、その業界や職種に必要なアプリケーションといえるでしょう。

以上のようにBABOKの基礎コンピタンシーは通常のビジネスマンの基準としても使えると思います。

その他の知識エリアや基礎コンピテンシー-についてもっと詳しく知りたい方は解説本も出版されていますし、インターネット上でも解説がありますので、参考にしてはいかがでしょうか。

なお、BABOKは今年V3.0が公表されましたので、興味のある方はそちらもご確認いただければと思います。

IIBA Japanのホームページ
http://www.iiba-japan.org/

IIBA(R)、IIBA(R)のロゴ、BABOK(R)、およびBusiness Analysis Body of Knowledge(R)は、International Institute of Business Analysisの登録商標です。

■守谷 元伸 (もりやもとのぶ)
早稲田大学大学院理工学研究科修了
SIベンダーにて、主に官公庁向けの情報システムの構築、保守、運用に携わる。
中小企業診断士、ITコーディネータ、システムアナリスト、プロジェクトマネージャ
現在 特定非営利活動法人 東京都中央区中小企業経営支援センター副理事長(事務局)
著書は、「問題解決に役立つ品質管理」誠文堂新光社(共著)、
「経費節減なんと1181の具体策」中経出版(共著)他