鴨志田 栄子

◆メンタルヘルス対策に関する企業動向(厚生労働所 平成25年度労働安全衛生調査結果より抜粋)
 メンタル不調による休業、職場復帰、企業のメンタルヘルス対策の3つについて、厚生労働省の平成25年度労働安全衛生調査(厚生労働省)結果を以下に記します。
(1)過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業または退職した労働者がいる事業所の割合
 25年度調査 10.0%  対前年比1.9%↑
(2)そのうち、職場復帰した労働者がいる事業所の割合
 25年度調査 51.1%  対前年比3.9%↓
(3)メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合
 25年度調査 60.7%  対前年比13.5%↑

 以上から、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所は増えているにもかかわらず、メンタルヘル不調者は増加しており、職場復帰も難しくなっているという状況が伺えます。これらから「従業員の健康の保持増進(1次対応)」と、「心の健康問題を抱えた従業員の早期発見・早期対応(2次対応)」が喫緊の課題といえます。管理・監督者には、この中心的な役割が求められており、職場におけるメンタルヘルスマネジメントの概要を以下に述べます。

◆従業員の健康の保持増進(1次予防)
 従業員の健康の保持増進において、管理・監督者に求められることは、従業員への積極的な挨拶や声がけを通じて、普段から、従業員(部下)の心の健康状態を把握することです。さらに心身ともに健康な状態で働けるよう、業務内容の調整や職場環境の整備・改善を行うなど、ストレス要因の発生を防ぐよう努めることが大事です。
 ストレス要因としては、「職場のコミュニケーションギャップ」「チームワークの欠如による孤立」「職務分担内容の不明確」「人事評価制度に対する不満」などが挙げられます。これらのストレスマネジメントを行うために、企業は管理・監督者向けに社内研修の機会を設け、メンタルヘルスに対する正しい理解を深めておくことがポイントとなります。

◆心の健康問題を抱えた従業員の早期発見・早期対応(2次予防)
 心の健康問題を抱えた従業員の早期発見は、以下に示すような「従業員の態度や行動の変化」に気づくことから始まります。
①勤務状況に変化が見られる(遅刻・早退・休暇取得の回数、無断欠席など)
②時間外勤務(残業、休日出勤)が業務内容と不釣り合いに増加する
③仕事の生産性が低下する、また、思考・判断能力が低下する、ミスや事故が目立つ
④報・連・相がまったくなくなる、もしくは急に増える
⑤表情や動作にいつもの元気がない、身だしなみが乱れてきている

 この結果、医療が必要と判断される場合は、産業医と相談し「精神科や心療内科」の受診を勧めます。業務を遂行する上で職場として困っていることを本人と共有し、本人の気づきを促して受診に繋げていくようにします。産業医がいない場合は、各地に設置されている地域産業保健センターに相談するとよいでしょう。また受診を促しても本人が拒否するときは家族に連絡をするようにしましょう。

◆休職者の職場復帰と再発防止(3次予防)
 職場復帰は、職員本人の希望や気持ちだけでは進められません。健康管理チームや専門家など関係者と常に連携しあい、再発防止に努めることが大切です。
 職場復帰のステップは、「(1)病気休業および休業中のケア」⇒「(2)主治医による職場復帰可能の判断」⇒「(3)復帰の可否判断および職場復帰支援プランの作成」⇒「(4)職場復帰」⇒「(5):職場復帰後のフォロー」から成ります。これらを踏まえて、進めていきます。

 また、職場復帰支援において管理・監督者には以下のことを心得ておくことが望まれます。
①現職への復帰を原則とするが、状況に応じて関係者と協議して柔軟に対応する
②メンタルヘルスの問題とはいえ、必要以上に特別扱いをしない
③仕事の量や質は、回復の様子に合わせて対応していく
④復職者の心理状態を観察し、その状態レベルと持続状況を見て回復状況を把握する
⑤3ヶ月~半年といった長期的な視点で、回復を見守る
⑥復帰後の通院による治療に対する理解を示す
⑦「まだ、薬を飲んでいるの?」など病気治療に関する否定的な発言は控える

 メンタルヘルス不調を防止するには、職場での良好な人間関係の構築がとても大事であり、また、万が一、不調者が生じた場合は、すぐに周囲が気づいてあげることです。ストレス耐性は個人差がありますが、管理・監督者を中心として、全員で取り組むことが望まれます。

■鴨志田 栄子(かもしだ えいこ)
中央支部国際部長、
中小企業診断士、消費生活アドバイザー、キャリア・コンサルタント、メンタル・サポーター