永井 謙一

街バルとは
 商店街活性化の対策として、街ゼミ、街バル、百円商店街の3つが商店街活性化三種の神器と言われている。その中で、街バルについての取組みの一例をご紹介したい。
 街バルとは、飲食店を中心にした飲み歩きのイベントである。商店街により異なるが、600円券5枚セット等のチケットを3,000円程度で購入し、複数のお店の飲み歩くイベントである。
 
街バルが商店街活性化につながる理由
 街バルは、自店で行うイベントであるため、お客さんに直接、店の良さを伝えることができる。また、従来型のイベントであると店主が店の外で運営をサポートする必要があったが、そういった負荷もない。さらに、必要となるコストが、チケットやポスターなどの制作費用に限定されるため、低コストで運営できるというメリットがある。
 消費者にとっては、日ごろ気になっていたお店に気軽に入りそのお店の自慢の一品を味わうことができ、お店にとっては、新規顧客の獲得につなげることができる。このように、消費者とお店がともにメリットを享受できるイベントなのである。

世田谷区での独自の取組み
1.資金面のサポート
 世田谷区では、各商店街は街ゼミ、街バルのいずれかを行う際に対象経費の半分(上限額25万円)の補助を受けることができる。対象経費は主にパンフレットやポスターなどの販売促進費が中心となるが、経費負担の補助は、イベント開催の後押しにつながっている。

2.人的なサポート
 世田谷区では顧問的中小企業診断士という制度がある。法人格を有する商店街は、顧問的中小企業診断士から支援を受けることができる。商店街は街バルの企画を立てる際に、顧問的中小企業診断士に相談することができる。

3.Webサイトの運営
 私を含む3名の中小企業診断士で「世田谷区のまちバル、まちゼミ情報」というWebサイトを立ち上げ、世田谷区内のまちバル・まちゼミ情報を提供している。
サイトでは、開催予定の情報発信を行うほか、これまでの開催実績を掲載することで、街バルの認知度向上を図っている。今年度からは、Facebookページも立ち上げている。

世田谷区での取組みの成果
 このように世田谷区には、資金面のサポート、中小企業診断士による人的なサポートがあるため、各商店街が街バルに取り組みやすい環境ができている。
さらに、webサイト「世田谷区のまちバル・まちゼミ情報」の運営することにより、世田谷区で開催される街バルの認知度が向上し、集客の増加につながっている。
 実際に、平成26年度に八幡山商福会で街バルが開催されてから、平成27年度には6商店街(複数の商店街が連携して実施したものも1つとする)が、平成28年度には10商店街が街バルを開催している。さらに平成29年度には、前年度以上の商店街が街バルを開催することが見込まれている。
 このように、世田谷区では、街バルを活用した商店街支援が確実に広がっているのである。街バルは個店の活性化につながる効果的なイベントであるが、世田谷区では、そこに資金的な支援や人的支援を加え、地域単位での取組みを行っているため、今後もさらに広がりを見せ、効果もより高まっていくものと思われる。

【プロフィール】
 永井 謙一(ながい けんいち)
 中小企業診断士
 東京都中小企業診断士協会 中央支部 執行委員/経理部 副部長
 永井経営事務所 代表

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