事業性評価について

1.事業性評価とは、
 最近「事業性評価」という言葉をよく聞きます。
 これは、財務内容や担保評価だけではなく、企業の事業そのものを評価して、成長性や収益性の高い事業が見込まれる場合には金融機関からの融資を積極的に行おうという政策です。
 最近、テレビドラマで池井戸潤氏原作の「陸王」が話題になっています。このドラマでは、つぶれそうな足袋屋が新製品のランニングシューズ「陸王」を開発し、最初は銀行から融資などは受けられず冷たい仕打ちを受けるのですが、次第に銀行もその事業性を見てくれるようになるという場面があります。まさにこのことが小さな足袋屋の事業性を評価した、ということになります。

2.国策としての事業性評価
 2014年6月24日に「日本再興戦略 改訂2014-未来への挑戦が」閣議決定されました。このなかの3つのアクションプランのうちの一つ「日本産業再興プラン」のなかで、「②産業の新陳代謝に向けた金融機関等による企業に対する経営支援や事業再生の促進」という項目があり、「企業の経営改善や事業再生を促進する観点から、金融機関が企業の財務面だけでなく、企業の持続可能性を含む事業性を重視した融資や、関係者の連携による融資先の経営改善・生産性向上・体質強化支援等の取組が十分なされるよう、金融機関自らが今後の企業の本業支援や産業の再生支援等に必要な機能や態勢及び経営体力の一層の強化を図るよう努めるとともに、当局は監督方針や金融モニタリング基本方針等の適切な運用を図る」ということが盛り込まれました。
 これを受けて2014年9月11日公表の「金融モニタリング基本方針」の重点施策に「事業性評価に基づく融資等」、「統合的リスク管理」が盛り込まれました。
 事業性評価に基づく融資等のなかで、「金融機関は、財務データや担保・保証に必要以上に依存することなく、借り手企業の事業の 内容や成長可能性などを適切に評価し(「事業性評価」)、融資や助言を行い、企業や産業の成長を支援していくことが求められる」と明確に記されたのです。
 こうして、従来とは大きく異なり、企業の事業内容の発展性や成長可能性などを評価した融資が行われるようにという国の方針が出されたことになります。
(出典):内閣府、金融庁ホームページ

3.東京都の施策としての事業性評価
 東京都では、「事業可能性評価事業 ~ビジネスプラン評価・事業化支援~」という中小企業施策があります。新規事業計画を第三者である各分野の専門家が総合的に評価して、事業化に向けて支援する事業です。新規事業計画をマネージャーが面談して詳細をきき、課題についてのアドバイスや、計画書のブラッシュアップなどの支援が受けられます。
 そして、事業可能性評価委員会(経営・技術・会計等の外部専門家から構成)に諮られ、事業可能性が高いと判断された計画は、計画の実現に向けて経営的側面から継続的な支援が受けられます。原則として3年間、担当するマネージャー等がハンズオン支援を行います。
 継続的支援の主な内容は、以下のとおりです。
①事業化・経営安定化へのアドバイス
 新規事業の立ち上げ・運営の経験が豊富なマネージャー等が、事業化や経営安定化に向けて具体的なアドバイスを受けられる。
②公社助成事業への推薦・申込支援
 継続的支援の対象となった事業の、創業期に必要な経費や新規性の高い技術・システムを開発する経費が必要な場合、その一部を助成する制度等をご案内します。助成事業の申請書は、マネージャー等がその作成支援を受けられる。(※助成金採択を保証するものではない)
③提携金融機関の紹介
 事業化に際して資金が必要と認められた場合に、公社提携金融機関をご紹介します。また、事業可能性評価融資制度 「事業のチカラ」、東京都制度融資「チャレンジ」に申込むチャンスがある。(※融資実行を保証するものではない)
④販路開拓のサポート
 公社ニューマーケット開拓支援事業を活用し、開発商品の販路開拓を支援する。
⑤知的財産戦略に関するアドバイス
 事業化を進めるうえでの知財戦略、ブランド戦略の構築について、東京都知的財産総合センターと連携し、支援する。
(出典):東京都中小企業振興公社ホームページ

4. 自社の事業性を明確にしましょう
 金融機関から融資を受ける場合だけではなく、中小企業に対する各種の補助金や助成金を受ける場合にも、自社の事業性を明確にしておくことが求められます。
 次のような内容を明確にしておきましょう。
①自社の持つ経営資源を分析して「強み」と「弱み」を把握する。
②自社の事業を取り巻く経営環境をよく把握して、「機会」と「脅威」を明確にしておく。
③自社の事業は何なのか(誰に対して、どのような製品・商品・サービスをどのような方法で提供していくのか)をしっかりと定義しておく。
④数年後のビジョン(どのような会社になりたいのか)、経営目標(具体的な数値目標~売上高、粗利益、営業利益、経常利益、当期利益 など)を明確にする。
⑤ビジョンや目標達成のための課題を洗い出す。
⑥課題達成のための具体的なアクションプランを検討する。
⑦そうした経営活動の結果はどのようになるのか。
 などです。
 こうした自社の状況を常に把握しておくことで、未来の成長が目に見えるようになるでしょう。
 この事業性評価を自力で策定することが難しい場合には、「中小企業の未来をデザインする」ことができる中小企業診断士がご支援します。

■八木 田鶴子(やぎ たづこ)
中小企業診断士・ITコーディネータ
有限会社テオリア/取締役社長。合同会社みんプロ/エグゼクティブパートナー。中小企業診断士・1級販売士・事業再生アドバイザー等。
・一般社団法人東京都中小企業診断士協会/中央支部支部長、東京販売士協会副会長、イー・マネージ・コンサルティング協同組合常任理事 等
・おもな業務内容:経営革新支援。経営戦略・経営計画策定支援。業務改善・財務会計・IT化推進等支援。商店街・個店等診断・経営支援。各種調査。教育・研修。セミナー。講演。  等
(E-mail)VEP06774@nifty.com
(みんプロHP)http://minpro.tokyo/