小川亮一

 今年の夏は暑い日が続いています。皆様の会社では、従業員が元気でバリバリ働けていますか。夏バテや夏風邪で生産性は低下していませんか。従業員の熱中症対策はもちろん、従業員ひとりひとりに健康管理の意識をしっかり持ってほしい時期になりました。

 今回は、健康経営を始めるなら今、この8月、9月がおすすめですというお知らせです。その理由は、この期間に、健康経営を学び、専門家の支援を受けて健康経営を始める環境が整い、また国の顕彰制度「健康経営優良法人2019」の申請も開始されるからです。

1.健康経営を学ぶ環境が整う。~今年度の健康経営アドバイザー研修が始まる~

 健康経について初めて学ぶなら、健康経営に関する定番の講座「健康経営アドバイザー研修」がおすすめです。今年も7月17日から申込受付が開始されました。過去2年、健康経営アドバイザー研修(初級)として開催されましたが、今年度は事例を多く掲載して実践的な内容にリニューアルされ、タイトルからは“初級”の文字がなくなっています。後述の健康経営優良法人の中小規模法人部門の認定基準に沿って、健康経営の実践方法を解説しており、健康経営優良法人の認定取得にも役立ちます。eラーニングですからインターネット経由で、どこからでも、お好きな時間に少しずつ学習を進められます。東京商工会議所の講座ですが、全国どなたでも受講できます。
詳細およびお申し込みは、以下のホームページをご確認ください。
https://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1004091

2.専門家の支援を受ける環境が整う。~東京都職域健康促進サポート事業~

 東京都では企業の健康経営実践をサポートする専門家派遣事業が始まりました。東京商工会議所が、健康経営の支援に精通した専門家(社会保険労務士、中小企業診断士、保健師等)を概ね5回程度まで派遣します。原則無料、東京都内の中小企業が対象です。
専門家が最初に企業の状況をヒアリングして、その状況に合った健康経営の実践方法をアドバイスします。さらに実践する取り組みに応じて、最適な専門家がその後の取り組みを支援します。(例えば食生活の改善であれば保健師や管理栄養士など)
 すでに健康経営に取り組んでいる企業はもちろん、これから健康経営を始めようとする企業にもおすすめです。
詳細およびお申し込みは、以下のホームページをご確認ください。
https://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1004752
※もし、このコラムを見て申し込まれる方は、紹介者欄に“専門家コラム”と記入いただけますと幸いです。

3.9月から健康経営優良法人2019の申請が始まる。
 健康経営優良法人は、経済産業省が設計した健康経営の顕彰制度です。中小規模法人部門と大規模法人部門に分かれていて、中小企業でも取り組み易い制度設計が特徴です。認定企業は、毎年2月にマスコミを招いた発表会で表彰され、経済産業省のホームページに企業名が公表されます。自社のホームページ等で健康経営優良法人のロゴを使用することもできます。健康経営優良法人を取得した企業のアンケートによると「取材や講演の依頼などPRの機会が増えた」「対外的なイメージが向上した」という効果を得られたとの声が出ています。2018年は、中小規模法人部門776法人が認定されました。この数からおわかりのように、決して手の届かない制度ではありません。
 健康経営の取り組みには時間がかかります。健康経営優良法人認定を目指すとすれば、1年以上前から取り組みを始めておく必要があります。最新の認定基準書を確認して計画的に進めましょう。その際には、前述の派遣専門家の支援は大きく役立つはずです。
ついでに、中堅企業・大企業の皆様にお勧めなのが、この申込期間に大規模法人部門の前提として行われる健康経営度調査です。どの企業でも参加することができて、フィードバックシートにより自社の健康経営の取り組み状況を業種平均と比較することができます。(この調査は項目数が多く中堅・大企業向けです。)
詳しくは、経済産業省「健康経営優良法人認定制度」のホームページをご確認ください。
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin.html

 健康経営を始めようとお考えの皆様、健康経営アドバイザー研修で健康経営を学び、健康経営優良法人のホームページを確認して顕彰制度に狙いを定め、派遣専門家のアドバイスを受けながら健康経営を始めませんか。

 さて、最後に健康経営に関係する施策を2つ以下にご紹介しておきます。こちらもご活用をおすすめします。

 1つめは厚生労働省の「労働契約等解説セミナー2018」です。労務関係の法令遵守は健康経営以前の基本事項です。厚生労働省は、労働者や事業主、人事労務担当者などを対象に「労働契約」に関するセミナーを全国で141回開催します。「労働契約法をはじめとした労働関係法令上の基礎」、「無期転換ルール」、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」に関する基本的な事項を分かりやすく解説し、セミナー終了後には、労働時間や労働契約、無期転換ルールに関する個別相談会を開催します。

厚生労働省委託事業「労働契約等解説セミナー2018」
http://partner.lec-jp.com/ti/working-time/

 もう1つは、東京都福祉保健局「職場で始める!感染症対応力向上プロジェクト」です。感染症対策は、従業員の健康を守り、生産性の低下を防ぎます。夏の終わり頃から冬の感染症対策の計画を始める会社が多いと思いますが、今年は東京都の事業を利用してみてはいかがでしょうか。従業員が学習する感染症基礎知識ドリル、感染症BCPひな型といった企業の感染症対策のツールを無料で提供します。必要に応じて事務局や専門家がそれらのツールの実践を支援します。

 東京都福祉保健局「職場で始める!感染症対応力向上プロジェクト」
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/kansen/project/project-start.html

【略歴】
■小川亮一(おがわりょういち)
中小企業診断士:
東京都中小企業診断士協会 中央支部 研修部 副部長
主な専門分野:健康経営、経営計画策定支援、職場の生産性向上・人財育成支援 等