佐藤 正樹

 前回の1964年東京オリンピックでは、日本にオリンピック景気をもたらした。56年ぶりの2020年東京オリンピックでは、何が起きるのか検証して、特需に備えたい。

1 オリンピックのインパクト

 オリンピックがどのぐらいのインパクトであったか確認しておこう。

(1)1964年の東京オリンピックでは何が起きたのか
 オリンピックの開催に向けて、東京が大改造されるなど、生活環境が大きく変化した。
 大会の直接経費295億円、間接的な経費として東海道新幹線3800億円、地下鉄整備1894億円などで公共的な経費として9,895億円の投資があった。また、カラーテレビの普及や交通インフラの普及による経済活動の活性化などを考慮すると計約2兆円の経済効果があったとも言われている。現在の貨幣価値に換算すると投資だけで約10兆円にもなる投資であった。

(2)2008年北京オリンピック、2012年ロンドンオリンピック
 2008年北京オリンピックに関して、野村證券の試算では、2002年から2008年の開催年までの経済効果を9,600億元(約14兆8,870億円)としており、施設の建設、観光客の増加、関連産業の需要が増大したとしている。
 2012年ロンドンオリンピックでは、イギリス政府は、2012年ロンドンオリンピック開催後の経済効果を約99億ポンド(約1兆5,000億円)としており、北京、ロンドンを比較しても経済効果に開きがある。

(3)2020年東京オリンピックの経済効果と波及業種
 2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技会の経済効果については、東京都は3兆円と算出しているが、民間シンクタンクが150兆円と算出しており、捉え方で大きな幅がある。恩恵がある業種は、観光、飲食、商業、サービス業、広告、建設業となっているが、波及する業種は幅広いと考えられる。

2 2020年東京オリンピック・パラリンピック 大会日程、準備日程

(1)2020年東京オリンピック・パラリンピック 大会日程
・第32回オリンピック競技会 2020年7月24日(金)~8月9日(日)
・第16回パラリンピック競技会 2020年8月25日(火)~9月6日(日)

(2)オリンピック委員会の準備スケジュール
・2013年11月 大会準備に向けたIOCによるオリエンテーション
・2014年1月 大会組織委員会設立
・2014年2~3月 ソチ冬期オリンピック・パラリンピック
・2015年2月 大会開催基本計画策定(予定)
・2016年8~9月 リオデジャネイロ夏期オリンピック・パラリンピック
・2018年2~3月 平昌冬期オリンピック・パラリンピック
・2019年7月~2020年4月 テストイベント(予定)
 (出典)都政2014 東京都

3 2020年の東京オリンピックに向けて何が起きるのか

 2020年に向けてどのような変化が起きるのか整理する。

(1)予想される生活の変化
 交通インフラや会場などの整備計画、外国人訪問客へのアピールなどが東京都などからすでに公表されている。民間の投資や商品・サービスの投入も2020年の東京オリンピックに照準を合わせて増えると想定される。
                         主なインフラの整備予定
     20150704_7.png
         (出典)都政2014などから作成

(2)訪日外国人数の予測
 東京都では、訪日外国人数を2011年の410万人から、オリンピック直前の2017年には1000万人まで増やす計画である。

4 2020年に向けてどのような準備をすべきか

 中小企業のビジネスチャンスとして特に2点を取り上げたい。

(1)外国人対応
 外国人を迎える国内の企業は、外国語への対応、決済手段の多様化、無線LANの整備、イスラム教のハラル対応、従業員教育など対応すべき事項は多い。
 成長産業として観光立国を目指す政府は、東京オリンピックに向けて、海外でのキャンペーンや国内で観光産業への施策を実施する予定であり、中小、零細企業でも対応可能な方法がたくさんあるので参考にして、ぜひビジネスチャンスを獲得したい。

(2)パラリンピック対応
 忘れてならないのはパラリンピックである。事前準備も含めて、相当数の関係者が来日する。筆者の支援先も車いすの方が気軽にレンタカーを借りることができる装置を開発したりと準備を進めている。都内ではバリアフリーが進んではいるが、まだまだサービスやアピールの工夫ができるそうである。

 以上、2020年に向けてのビジネスチャンスを点検してきた。ぜひ波を捕まえて欲しい。

■佐藤 正樹(さとう まさき)
有限会社トップマーク 代表取締役
中小企業診断士、主に中小企業向けに経営企画、事業企画の立案と実行の支援を行っている。中央支部・副支部長、東京協会・能力開発推進部長