グローバルウィンド

グローバルウィンド「ベトナム・ハノイで日本企業の存在を感じる」(2026年4月)

2026年3月20日

中央支部・国際部 中居 良介

はじめに

東南アジアの中でもベトナムは多くの日本人にとって渡航しやすい国といえるでしょう。これは東南アジアの中でも日本からの距離的な近さのみならず政治的安定、文化面での近接性や治安の良さ、親日家が多いなどの安心感も背景にあると思われます。

一般にベトナム国内における観光地といえば、多くの方は最大都市の南部ホーチミン市や中部のダナン、ホイアンや古都フエを挙げるでしょう。一方で首都は北部のハノイとなりますが、観光地としての人気はホーチミン市には及ばないかもしれません。

しかしながら首都ハノイは、観光面では高速道路の開通により世界自然遺産ハロン湾がより近くなったことや、ビジネス面では2010年代以降は日本企業の進出が相次いでいることから、観光またはビジネスなど目的を問わず、日本からの渡航者が多くなってきています。

本稿ではベトナムの首都ハノイに診断士のみなさまが観光または出張目的でハノイに滞在する場面を想定して、滞在の空き時間や移動時間を利用して日本企業の存在を感じていただくための話題などを、元ハノイ居住者の視点から記してみたいと思います。

ハノイ市内(出所:photoAC)

2千社を超えるベトナムの日系企業

突然ですが、ベトナムにおける日系企業の数は何社あるでしょうか。日系企業数の把握には日系企業が加盟するベトナム南、北、中部に3つある日本商工会議所の会員企業数が指標となります。会員企業数順では最多が南部ホーチミン市を拠点とするホーチミン日本商工会議所(略称JCCH)で1,094社(2025年3月時点)。次いでハノイ、ハイフォンを含む北部地域を管轄するベトナム日本商工会議所(同JCCI)は839社(2026年3月時点)。中部ダナンを拠点とするダナン日本商工会議所(同JCCID)は216社(2026年3月現在)。合計すると2,149社にのぼり、東南アジアの国別の日系企業会員数ではベトナムが1位です。参考までに2位はタイで1,671社(2025年4月時点)です。

ハノイを含む北部の日系企業は大手製造業が多く、自動車ではトヨタ、二輪ではホンダやヤマハ、タイヤはブリヂストン。電子機器関連ではパナソニック(冷蔵庫、洗濯機など)やダイキン工業(エアコン)、キヤノン、富士フイルムビジネスイノベーション(旧富士ゼロックス)、ブラザー工業、京セラドキュメントソリューションズ(以上4社:複合機、プリンタなど)が代表的な企業です。

韓国系、台湾系、中国系企業の存在

実は日系企業以上に北部で存在感が高いのは韓国系企業です。主にスマートフォンや有機ELパネルを製造するサムスングループの企業群や、LG電子はテレビ、洗濯機、冷蔵庫など。また台湾系企業も電子機器受託製造(EMS)の分野で存在感が高く、著名なのは米国アップルのiPhoneの受託製造先フォックスコン(FOXCONN:鴻海精密工業)です。近年では中国系企業の進出も見られ、アップルのワイヤレスイヤホンAirPodsの受託製造を行うラックスシェア(Luxshare)やゴアテック(Goertek)があります。これら製造業はチャイナプラスワンや米中摩擦のあおりを受け、人件費が比較的安価で、かつ欧米等の第三国への輸出面で優位となるベトナムに製造拠点を設置したケースが多いと考えられます。

ハノイ・ノイバイ空港に到着

話が長くなりましたが、飛行機でハノイに到着した場面を想像してみましょう。ハノイの玄関口はハノイ・ノイバイ空港です。国際線が発着するノイバイ空港第2旅客ターミナルは2014年に完成した綺麗な建物です。以前は現在国内線が発着する第1旅客ターミナルビルで国内線、国際線をさばいてきましたが、利用者や航空機発着便数の増加に伴い、国際線専用の旅客ターミナルを新設することになりました。総事業費のほとんどを日本の円借款から調達し、施工は大成建設とベトナム国営企業との共同企業体にて実施されました。また運営、維持管理は成田国際空港株式会社が国際協力機構(JICA)の技術協力の一環として支援してきました。このような経緯から、第2ターミナルビルの各所には日本による協力への謝意が刻まれた銘板が設置されています。

さて空港で両替を済ませ、タクシーか配車サービスのGrab(グラブ)、または公共バスでハノイ市内へ移動することになります。

車窓から見るハノイへの道

いずれの移動手段でも、空港から市内へ向かう際は片側3車線の道路を辿ることでしょう。この道路、ノイバイ国際空港―ニャッタン橋間連絡道路も日本のODAにより建設が進められ、2015年に供用が開始されました。空港から15分ほど走行すると巨大な橋にさしかかるでしょう。ここはハノイを流れるホン河(紅河)に架けられた全長1,500mの東南アジア最大級の斜張橋のニャッタン橋です。ここも日本のODAにより建設され、IHIインフラシステム、三井住友建設などの日本企業が携わりました。ニャッタン橋中央の橋脚部分にもノイバイ空港第2ターミナルビルと同様に日本の援助への謝意を示す銘板があります。ニャッタン橋は自動車のみならずバイクや自転車、歩行者も無料で通行できます。夜には斜張橋がライトアップされ幻想的な光景となります。特に春や夏にかけての暑い夜にはハノイ市民が橋上の歩道に集まり、夕涼みをする光景をよく見ます。彼らは家族や友人同士でバイクにまたがり、橋上の路側帯に駐輪して歩道で涼むという感じです。移動販売バイクも複数出店するほどの人気ぶりです。

2015年1月に行われたノイバイ空港国際線ターミナルビルと連絡道路、ニャッタン橋の完成式典には太田国土交通大臣(当時)も出席しました。これらの開通により従来は混雑時1時間以上を要した空港からハノイ市内への所要時間が35分へ大幅に短縮されました。

なお連絡道路は現地ではヴォーグエンザップ通りと呼ばれています。ベトナム国民から今なお広く尊敬を集めるベトナム戦争の英雄ザップ将軍が由来です。

バイク大国ベトナムで圧倒的なシェアのホンダ

車内から外を見ると二輪バイクを目にすると思います。バイク大国のベトナムで走るバイクのほとんどは125ccで、友人同士や一家3~4名が運転者の前後に分かれて同乗する姿を頻繁に目にすることでしょう。ベトナムでのバイク市場は首位のホンダが約8割を占める寡占状態であり、次いでヤマハが続きます。ホンダはベトナム国営企業と合弁で1996年にノイバイ空港からやや近い地域にベトナム工場を設立しバイク生産を開始。2025年6月には累計4千万台の生産を達成しました。ヤマハもノイバイ空港近くの工場で生産しています。近年は電動バイクの需要も高まり、ベトナム巨大財閥のビングループ傘下のビンファストのシェアも高まっています。ビングループは元々不動産開発で財を成したのち小売業や医療など多角化を進め、電動バイク市場へは2018年から参入。ベトナム国民にとっては電動バイクといえばビンファストというほどの圧倒的な知名度と支持を得ています。2026年7月からはハノイ都心部でガソリンバイクの通行規制が始まります。ホンダ、ヤマハもベトナムに電動バイクを投入していますが国産ブランドのビンファストの存在感は大きく、規制を機にバイク勢力図も大きく変化するかもしれません。

旧市街でベトナム式おこわを食べる

さてニャッタン橋を渡り切り、20~30分ほど走行するとハノイ中心部に到着します。ハノイに初めて観光で来られた方はホアンキエム湖周辺にホテルを取り、旧市街地区へ歩いて散策するかと思います。この地区は大変有名な観光エリアであり、既にガイドブックやウェブサイトで多く紹介されておりますので本稿では触れません。唯一お勧めしたいのは地元民に人気のローカルフード、ベトナム式おこわの店ソイイェン(Xoi Yen住所:35b Nguyen Huu Huan, Hoan Kiem, Ha Noi)です。早朝から深夜まで営業しており、いつ来ても地元民で賑わっています。お勧めメニューはミックスおこわ(ソイセオタプカム; Xoi Xeo Thap Cam)で5万ドン(約350円)程度です。ウコンで黄色く色づけされたおこわと緑豆ペーストの上に味付け卵やミンチ、鶏肉スライスや中国ソーセージ(ラプチョン)のスライス、フライドオニオンなどいろいろな具材がトッピングされて出されます。こってりした味で食べ終わると胃にどっしり来ますので好き嫌いは分かれますが、ローカルフードの中では私は一番好きな味です。

差別化を図るハノイの日系ホテル

ハノイはホーチミン市ほど日系ホテルが見られませんが、統一公園やハノイ駅に程近いホテルデュパルクハノイ(HOTEL du PARC HANOI)が代表例といえます。旧名はホテルニッコーハノイでしたが2019年から株式会社Plan・Do・Seeが展開するPDS HOTELSブランドのホテルとして再出発しました。ほかビジネスホテルでは日系企業や日本人駐在員が多く住むキンマー(Kim
Ma)地区に東屋ホテルやサクラホテルがあります。さらにキンマー地区より西へ5km離れたコウザイ(Cau Giay)地区にはスーパーホテルが2026年3月に開業しています。

いずれの日系ホテルも日本語が話せるスタッフの配置や日本式のきめこまやかな接客対応、朝食に日本食を提供したり大浴場を設けたりと日本らしさを前面に出し、サービス面や施設面でベトナムローカル系や非日系外資ホテルとの差別化を図っています。

ハノイの日系小売店で現地生産の日本食品を探索

ハノイで日本ブランド商品の存在感を確認するには、キンマー地区のスーパー富分(とみぶん)へのお立ち寄りをお勧めします。スーパー富分は千葉県君津市に本社を構える企業が源流です。元々は千葉県内の店舗で受け入れたベトナム人技能実習生の、帰国後の受け皿となる店舗づくりが進出動機であったようです。2018年にキンマー通り沿いにベトナム1号店を開店し、現在ではハノイ市内に4店舗展開しています。当時のハノイは日本食材を扱う小型スーパーが少ないなか、納豆やおにぎり、お弁当などの惣菜が手に入るようになり日本人駐在員からは大変好評でした。現在ではキンマー通りの近くのリンラン(Linh
Lang)通りにもドラッグストアを併設したリンラン店があります。

スーパーに入店したらまずは乾麺の棚へ向かってください。最近は日本のスーパーマーケットでも目にする機会が増えましたが、ハオハオ(HaoHao)というピンク色包装の乾麺が目に入るでしょう。これはエースコックベトナムが製造しベトナムで大ヒットした酸味のあるエビラーメンの即席麺です。同社は日本のエースコック出資のもと1995年にベトナム南部に工場設立し、即席麺を生産開始しました。当初は苦戦していたようですが努力が実を結び今ではベトナムのNo1ブランドにまで登り詰めました。

エースコック「ハオハオ」(筆者撮影)

続いて米菓の棚へ向かってください。揚げ米菓のイチ(Ichi)があると思います。こちらは亀田製菓とベトナム企業とで2013年に設立された合弁会社がベトナム国内で製造する米菓です。日本で亀田製菓が製造販売する「揚一番」が基ですが、ベトナム人の嗜好に合わせたハチミツ風味の揚げ米菓としたことで、発売以来、ベトナム人から高い人気を維持しています。

続いて、カラムーチョも目に入るでしょう。湖池屋が海外初法人として立ち上げたベトナム南部の工場が2017年から生産開始した商品です。発売当初はベトナムで非常に人気の高いドラえもんをパッケージデザインに取り入れ、日本ブランドを前面に出した販売戦略をとっていました。近年ではベトナム人の嗜好に合わせ、辛味や塩味を抑える改良を重ねているようです。

マヨネーズの棚へ向かうとキューピー製品が並んでいると思います。キューピーはベトナム南部の工場で2012年から生産販売を開始しました。主力のマヨネーズに加え、ベトナム人の嗜好に合わせた商品もあります。特にベトナム版サンドイッチのバインミー向けソースとして胡椒風味(Xot Banh Mi Tieu Spread)やチーズ風味(Xot Banh Mi Vi Pho Mai Spread)があり、日本へのお土産にも利用できる商品です。

いずれの商品も日本での主力商品をそのまま持ち込むだけでなく、現地ニーズに合わせた改良を施し最適化(ローカライズ)することで、現地から広く受け入れられた商品の好例と言えるでしょう。

近くのイオン店舗へ移動

次は近くのイオン スアントゥイ店(AEON Xuan Thuy住所122-124, Xuan Thuy, Cau Giay, Ha Noi)に向かいましょう。キンマー通りのスーパー富分からGrabやタクシーで西へ約3km離れていますが10分程度で着くでしょう。なお「イオン」はベトナムでは「アエオン」と発音されますのでご注意ください。

イオンは2014年の南部ホーチミン市の1号店を皮切りにベトナム全土への出店を続け、現在では大型モールのほか中型店舗を含めてハノイ含むベトナム北部に6店舗、南部に8店舗、中部1店舗の計15店舗をベトナム国内に展開しています。

スアントゥイ店は大型のイオンモールほどの広さはありませんが、2025年1月に開店した都市型スーパーのイメージです。食品のほか化粧品や衣類、家電まで揃い、3階にはフードコートもあります。立地するスアントゥイ通りは市内屈指の交通量を誇り、真上には2024年に部分開通した都市鉄道ハノイメトロ3号線が高架線上を走っています。沿道には多くのオフィスビルや日本人駐在員も居住する高層住宅に加え、ベトナム国家大学やハノイ教育大学が並ぶ学生街でもあります。日系スーパーではありますが客層のほとんどは地元ベトナム人のため、スーパー富分とは違ったベトナム人向けの商品構成や陳列、接客態度など、日本とは違う面を様々感じることがあると思います。

おわりに

観光でも出張でも、少しの空き時間を使って日本製品を探索いただくことで、みなさまの日々の中小企業支援活動におけるヒントを得ることができればと思い、ご案内しました。本稿ではハノイの一部のみの紹介となりましたが、今後機会があればより範囲を広げてご案内できればと思います。

■中居 良介(なかい りょうすけ)

中小企業診断士。東京都中小企業診断士協会中央支部所属。ベトナム・ハノイ勤務を経て中小企業の海外展開支援に従事。

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