Global Wind (グローバル・ウインド)
ペルー滞在記

中央支部・国際部 加賀城 剛史

 2004年4月から2006年12月までの間、延べ13か月にわたり、ペルー国の首都であるリマ市に滞在し、都市交通計画関連業務に携わりました。リマ市の様子とペルー人を雇用した時に感じた事を記します。
1.ペルー国の概要
 ペルー国は南米大陸の北西部に位置する人口3014万人余り(2012年、INEI推計)の発展途上国です。面積は129万km2で、日本の約4倍です。国土は沿岸部の砂漠地帯「コスタ」、アンデス山脈高地の「シエラ」、アマゾン川流域の亜熱帯地域「セルバ」と呼ばれるまったく気象条件のことなる3地域に分かれており、人口のほとんどは沿岸部コスタに居住しています。
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 リマ市はペルー中部の太平洋沿岸に位置し、フンボルト海流の影響を受け、気温は1年を通じて温暖で過ごしやすいです。また降雨はほとんどないものの、6月から10月の冬季には、曇天続きになります。
 近年ペルーは歴史面からも世界の注目を集めており、世界遺産にもなっているマチュピチュ遺跡やクスコの地上絵、リマ市旧市街地など世界中から観光客を集める観光資源に恵まれております。
 民族構成は、歴史を色濃く反映しています。メスティーソ(ヨーロッパ系と先住民の混血)、インディヘナ(先住民子孫)、ヨーロッパ系が主要構成人種です。アフリカ系、中国系、日系など20世紀になって流入した人種も多数おり、政治・経済に一定の影響を及ぼしています。
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             マチュピチュ遺跡。南米観光のハイライト
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          リマ市旧市街地。文化遺産なので、観光客も多い
 ペルーは1873年に日本と正式に国交を持ちました。南米で日本と国境を持った最初の国であり、日本とは非常に交流が深いです。1899年には、日本からの集団移住が始まり、現在日系ペルー人は10万人を超えるといわれています。日本でも有名なフジモリ元大統領など、日系人が政治・経済セクターで深くかかわり、ペルーからも日本が注目されています。
2.リマ市で暮らしてみて
 リマ市が接する太平洋は、フンボルト海流が流れるため、漁業が盛んです。ペルー料理セビッチェ・マリスコスceviche mariscosは、沿岸の魚介や貝類が豊富に入ったマリネ。これを付け合せのトウモロコシなどと共に頂けます。寿司や刺身をはじめとした和食レストランも数多くあり、日本人が食に不自由しない都市と言えます。
 またリマはとても活気ある都市でもあります。衣料・電気百貨店「RIPLAY」やスーパーマーケット「METRO」は日本のデパート、スーパーと変わらぬ品揃え。スターバックス、マクドナルド、KFC、バーガーキングなど欧米チェーン店もモールを中心に。Larco marという海岸沿いのショッピングモールでは、サンリオショップまで。
 市民の移動の足は、バスが中心。幹線バス(専用車線を走るバス)もありますが、主力はマイクロバスやミニバンのバス。当時で、50円くらいで中心市内を移動できました。その他、交渉制のタクシーも。相場がわかれば、落ち着いて交渉できます。町中にはバスやタクシー、乗用車で常に車両があふれ、中心部に向かう道路は大渋滞。また東南アジアやインドではおなじみの三輪タクシーも、下町ではよく見かけました。
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            リマ市内の朝夕ラッシュ時の交通渋滞
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    手前のタクシーは、いわゆる白タク。奥のミニバンはすべて民間路線バス
 ペルー人もラテン系。ダンスはお手のものです。サルサのリズムに合わせて踊れるバーが街中いたるところにあり、老若男女が夜な夜なと繰り出します。私も行きましたが、本当におじいちゃん、おばあちゃん、がプロ級の腕前で踊っているのです。
 私は、更に、若い現地スタッフと一緒に、クラブ(日本で言う若い人が行くクラブ)でペルー産ビール「cristal」を片手に、レゲトンやサンバでストレスを発散するのでした。
3.リマ市の経済動向
 リマ市首都圏地区はペルーの政治、経済、文化の中心であり、人口は945万人(2012年INEI推計)です。人口増加率は年平均1.1%で、私が滞在していた2004-2006年(2.3%)と比べると、増加も落ち着いています。首都圏人口は全人口の31.3%を占めており、完全な一極集中です。
 国家経済の中心は、金・銀・銅などの鉱業産品輸出であり、銀は世界第2位の産出量を誇ります。2009年のリーマンショック後の世界経済悪化時を除き、経済は好調に推移しており、国連調査では、2010年は前年比8.6%、2011年は6.0%という高い成長でした。
 1人当たりGDPは、6530米ドル(2012)です。これは、タイ(5648.78米ドル、2012年)よりも高い水準です。
4.ペルー人を雇用する立場として考えたこと
 
 これは、ペルーのみならず、他国での雇用でも実践すべきなのかもしれません。
1) ペルー人気質:真面目で几帳面。ただし日本人ほどではないです。最低限のオフィスルールを決め、現地採用の秘書に詳細は決めさせ、逐次報告させるのが合理的と感じます。
2) イベント:ほぼ全員カトリック。事務所でも月1回スタッフの誕生日を祝い、仕事の労をねぎらいました。わずかな士気向上策が、時間外労働や面倒くさい仕事を頼める関係になりました。
3) 運転手:まじめさ、法規順守精神、機転が利くか、経験で判断しました。治安と密接に関わるので、運転手選びは慎重にしました。保険もセットです。もらい事故は日本とは比べ程にならない程多いので、事故をもらわない運転ができるドライバーがいいですね。
4) 尊重の姿勢:顎で人を使う態度、言動は(日本語でも)スタッフに伝わり、それが日本人の悪評となり、業務にも影響します。言いたい事を言うべき時に言えるように、普段から尊重しました。
5) 言語:最低限のスペイン語を覚えると、運転手・スタッフとの指揮命令・情報交換の速度が格段に速くなります。ただし契約、公的訪問は英語/日本語の通訳で、業種知識が豊富な方を雇用しました。
6) 賃金:職務給。経済好調下では賃金水準の上昇が激しいので、常に最新の雇用情勢を押さえましたが、それ以上に賃金が上がり、スタッフの採用には苦労しました。
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       ビクトリア区。貧困地区では高台に住居が密集している。治安も悪い。
             スタッフとのコミュニケーションの重要性を痛感。
5.おわりに
 ペルーは私にとって、すでに第2の故郷。非常に大好きな国です。日本企業が南米市場に進出するには、ブラジルに事務所を持ち、ペルーは出張ベースとなるのが一般的ですが、他のラテン諸国に見られない真面目さや人の温かさも持ち合わせた国です。
 仕事でも観光でも、もっと脚光を浴びるべき国と考えます。皆さんも一度訪問されてみる事をお勧めして、締めくくります。
 長文お読み頂き、ありがとうございました。