Global Wind (グローバル・ウインド)
南ア便り第1号

JICA短期シニア海外ボランティア 五十嵐 至

 突然ですが、機会があって日本から7時間の時差がある南アフリカ共和国にJICAのシニアボランティアとして2014年4月から赴任しております。決まったのが2月末で、以来研修やら準備で慌ただしく多くの方に事前のご挨拶もせずに来てしまいました。
 非礼をお詫びするとともに改めてご報告をいたします。期間はこの9月末までのちょうど6ヶ月の予定です。
 3月末に日本を離れて早や、1か月以上も過ぎてしまいました。生活に慣れるためと、職場での6ヶ月の間に何が出来るかを相談しながら成果を挙げねばと欲張っているせいか、土日も他にやることがないせいもあって久し振りにワーカホリックになった感じです。
 滞在先は日本で南アフリカの地図を探しても表示されないような小さな片田舎町のエリム(Elim)というところです。 リンポポ省(Limpopo)という全部で9つの省からなる南アフリカ最北端の位置にあたり、南回帰線の内側にあります。
 この国の他のほとんどの地域は亜熱帯地域に位置するようですが、高度が高く比較的涼しい地域だそうです。雨の少ないのも特徴です。人口7千人ぐらいかなと思うのですが、誰に聞いてもわからないとの返事です。おおらかなということなのでしょうか。町全体は低い丘に囲まれていて丘の上から見渡すと町全体が見渡せるような感じです。日本からの地図では小さすぎて出てきませんが、住まいの位置をGPSで測定したら、緯度23度09分33.29秒 南緯経度30度04分55.08秒 東経地点です、ご興味があればGoogle Earthで探してみてください。町のなかにElim Hospitalという公立病院があって、こちらはGoogle Earthでも表示されます。
 最初の1か月は生活のための調度品が揃わず、不自由を感じましたが、今ではほぼ揃い、同じ国内にいる他のボランティアの人たちを思うと別天地のようです。住居は派遣先の職場が用意してくれていて、事前情報では一軒家に先住者がいると聞いてきたので心配していましたが、実際には大家さんの親族のおばさんとその娘さんが留守番役をしていて下宿人というよりは、お手伝いさんを雇っているような感じです。
 炊事洗濯掃除まですべてお願いできるので助かっております。当初バスルームの給湯の蛇口栓が壊れていたり、その他不自由な感じもありましたが、今はすっかり改善されました。
 食事も、日本食とは全然異なりますが、味の方も不思議に若い頃のように日本食が食べたくなったりはしません。むしろこちらに来てから、この下宿のおばさんたちと、派遣先の会長さん宅で何度か日本食を作って差し上げたりと、喜んでもらっています。
 移動もこちらでは犯罪が多いので十分注意するようにとのアドバイスで、車を持った方がよいとJICAの助言を得ましたが、レンタルは高いし、中古車の購入を検討してみたのですが、日本とは異なり、中古市場の価格が高く手も足も出ません、それでも派遣先(公益法人)の会長さんがたまたま2台の車を持っていて一台を格安でお借りすることができました。
 この6か月の間に遠出をすることはなさそうなので、職場と近くのショッピングモールを往復する程度ですが、快適になりました。
 もう一つ物価水準のお話をすると、概ね食費、衣類などの製品は安く手に入ります、肉類は質を別とすれば五分の一以下でしょうか。衣類も結構安く手に入ります。ただプラスティック製品のようなもの(たとえば衣類の整理箱)は日本より高く感じました。日本には100金ショップがあるおかげかもしれません。ガソリン価格等は1リットル当たり10円程度安いぐらいで変わりありません。ただこの地が内陸にあたるせいでしょうが、新鮮な魚を目にすることはできません。すべて冷凍で、それも種類は、アジとかメバルのようなものに限られています。
 住宅事情はよくわかりませんが、地方なので土地の値段は無視できるとして、概して大きな家が多いです。またアメリカ並みと感じたのは、メンテナンスをよくしていれば、不動産価値は上がるというところが、日本では考えられないことで、これは木造住宅の欠点なのでしょうか。日本もそうあって欲しいものですね。
 大家さんの持ち物のようですが、厨房設備はとても文化的でアメリカと変わらずといったところでしょうか、大型の最新式の冷蔵庫(520リットル)が鎮座しています。日本にもないような製品ですが、よく見るとサムスン製でした。
 また洗濯機も超大型の洗濯専用と乾燥専用の機械が、離れの建物にあり、ランドリーをしてくれるというので、週の途中でお願いしようとしたら、少なすぎると言われたのですが、あとでこの機械を見てその意味がようやく理解できました。
 滞在中に200km位の距離にあるクルーガー国立公園があるので、一度は行ってみたいと思っていますが、赴任後3ヶ月は出歩かないようにとJICAからの助言もあり、いつ実現できるかは不明ですが、職場の外部取締役のメンバーたちが、連れて行くと言ってくれているので楽しみにしています。
 最後に、職場ですが、驚いたことにこちらに来る前の職場と同様、ここは老人福祉施設(デイサービス)と学童保育が事業の柱になっているようです。それに加えて、エイズ患者の支援と、学歴がないため職業を持てないでいる若い人たち向けの就業支援事業も行われています。
 特に気が付いたのは孤児が多いことです。南アフリカの失業率が25%で問題になっているのですが、若い人に就業機会が乏しいらしく痛々しいことです。アフリカの中では最も先進国といえるようですので他は推して知るべしでしょう。
 仕事のほうは、当初赴任前に合意された内容をはるかに超える期待を抱いていてくれていることに気づき、会長と個別に内容を話し合って作成できたところですが、こちらも何とか期待に沿えるよう努力しようと思っています。 ただ、4時半になるとこちらの人たちは、待ちかねたように一斉に帰宅に向かい、門には鍵をかけられるため、居残りをすることもままならず、かといって自宅に戻っても短期間ということもあって何も準備してこなかったので、やることもなく、仕事に手を出してしまうというのが日々の現実です。 この国は人口に比して国土があまりにも広い(4倍)ためインターネット環境は、無線が基本で非常に遅く不安定ですが、日本にいる時のように、帰国後に趣味の温泉浴と山菜狩りに行けるのを楽しみに暮らしています。
■五十嵐 至(いがらし いたる)
大学卒業後、日本IBMに勤務。中国駐在などを経て、2000年に50歳で早期退職して郷里山形県米沢市に帰郷。国際協力機構(JICA)の短期シニア海外ボランティアとして2014年4月から南アフリカ共和国に派遣されている。職種はPCインストラクター。