Global Wind (グローバル・ウインド)
アメリカのラテン化から考える移民政策

中央支部・国際部 加賀城 剛史

1.はじめに

さる5年前、業務渡航でアメリカに行ったときのことを思い出しながら、アメリカの多様性と今後の日本の取るべき策を考えてみたいと思います。

2.アメリカの様子

アメリカでドライブするとわかるのは、とにかく長い高速道路。表1を見ても、単純に10倍の長さだけでなく、車両に対する高速道路も3倍。旅行となると、アメリカでは長距離なら飛行機、時間があれば自動車がメイン。

表1 高速道路比較

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なので、リタイア後は、1、2年かけて全米をじっくりキャンピングカーで回る、みたいな老夫婦を私もドライブでよく見かけました。(写真1) 彼女は、ご夫婦で2年かけて全米を回るとのこと。彼女には「お遍路さん」という日本語を教えました。いつか日本で会えれば。

図1

 

 

 

 

 

 

 

図1 フェニックス近くのパーキングエリアで

3.アメリカ南部はバイリンガル

私が業務渡航で行ったカリフォルニア、アリゾナ、ニューメキシコ、テキサスといった州では、スペイン語がよく通じます。場合によっては、英語よりスペイン語のほうが通じます。実際ヒスパニック系の人口比率は大きく増えています(表2)。

表2 アメリカの総人口とヒスパニック比率

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このヒスパニック増加の原因は、マイアミ/LA空港経由の中南米諸国からの移民、そして、メキシコ国境から合法移民、最後に密入国移民・不法滞在者です。

アメリカには、流出入の激しいメキシコとの陸地国境がいくつかあり、そのうちの一つ、EL PASO(米 テキサス州)とCIUDAD JUAREZ(墨 チワワ州 チワワ犬の原産地)を訪れました。その違いにびっくりさせられます(図2)アメリカに行きたいメキシコ国民が多いのも頷けます。

図2 エルパソ市内

 

 

 

 

 

 

 

図2 フアレス市内1

図2 フアレス市内2

図2 国境沿いの街の風景(上のみ アメリカ エルパソ市。中、下はメキシコ シウダーフアレス市)

エルパソ⇒シウダーフアレスは、フリーで通行可能。

シウダーフアレス⇒エルパソは、厳しいパスポートコントロール。(赤いパスポートはそれはそれは、水戸の紋所的活躍。笑顔で通してくれるのですが、メキシコパスポートは結構厳しく調べられてました)というくらい、その当時、今もメキシコからの不法移民は、上記4州では大きな課題。

4.日本が移民政策に動いたら・・・

東京では小売・飲食業界で働く人は、すでに外国人が主力で、彼らが拙い日本語でも一生懸命働く姿に感心する方も多いでしょう。工場・建設現場でも多数の外国人が活躍しています。ただし、移民政策をとっていない日本では、彼らは留学時のバイト扱いだったり、外国人研修生などといった位置となります。

本当にこのまま人口が減った際に、移民政策がもし日本で取られたら・・・という仮定でアメリカ人に、質問を投げた時の答えです。

『移民のうち、最悪4分の1ほどは、滞在許可を過ぎて滞在する不法滞在との調べがある。彼らは、個人証明書、社会保険番号を持たず、医療保険もない。いくらオバマが医療改革を唱えても、彼らには意味がない。仕事や学校の機会を得ることも不可能。アメリカで生まれれば、不法移民の子供でもアメリカ市民権が得られるが、親は見つかれば強制送還されるから、里親やホームレスになってしまうことも多い』

こうした傾向は、当然治安にも影響を与えると考えます。

人口減とともに日本も移民政策論が論議されますが、アメリカの現実も参考にしながら、導入時期と十分な対策が必要だなと、東南アジア国籍の店員さんがよそってくれた牛丼を頬張りながら考えました。

5.最後に

アメリカドライブは非常に気持ちがいいもので、交通量が日本に比べて少ない箇所も多いので、左ハンドルにもすぐに慣れます。必要なのは、国際免許証とレンタカー代と好奇心。私は車で早く東海岸までたどり着きたいのですが、それは、アメリカ進出企業と一緒に行ったとき・・・ということで。

 

■加賀城剛史(かがじょう たけし)

2013年中小企業診断士登録。建設コンサルタント会社を経て現在は独立診断士。

建設系企業の経営支援の傍ら、新規事業、設備投資、海外進出、創業支援など、新しいムーブメントを起こしたい、というビジネスパーソンがすぐに動ける支援、をモットーとしている。