Global wind  (グローバル・ウインド)

「ニューヨークを訪れて」
-元消防職員 & TOEIC955 診断士の観察眼-

中央支部 瀬川 俊

 昨年の11月22日から29日までニューヨークを一人旅してきました。ふだん私はNHK「実践ビジネス英語」の講座で英会話を勉強しておりますが、この4~5年は会話の場面がニューヨークに移り、マンハッタンを中心に様々な話題が取り上げられています。 このため、現地に行ってみようと思った次第です。この時期を選んだのは、アメリカ大統領選挙が11月9日だったので落着きが戻りつつある時期ではないかと予想したこと及び羽田からの直行便運航開始が10月末から予定されていたからです。ガイドブックと地図を頼りの旅行でしたが、目的地には難なくたどり着くことができました。

1.トランプタワー

写真①

トランプタワー5番街側入口

5番街に面したトランプタワーは58階建てで地上から写真を撮ろうにも画面の中に入りきれません。1階はブランドショップが入居しており、上層階にトランプ氏の住居があるようです。5番街沿いにトランプタワーを目指して歩いて行くと大勢の人が集まっているのが見えました。近くに行くとタワーの入り口には警察官の姿も見えました。建物の中に入って行く人も見えました。ブランド店へ行くのか、それとも上層階へ行くのか知る由もありませんがその動きは途絶えることはありません。タワーの付近に集まっている人を見ると皆外国人に見えましたが、それが国外から来た人なのか、国内各地から来た人なのか、地元の人なのか判別は尽きません。まさにニューヨークが国際都市であることを実感した時でありました。

5番街に面した正面入口側を除いて、タワーの周囲を歩くと警察車両が目立ち、多数の警察官が待機していました。どの警察官も武器を携えており、不審な事案が発生した場合に備えて直ちに対応できる体制を整えていることが分かりました。

 

2.交通手段 便利な地下鉄

マンハッタン島内での往来は地下鉄ですることに決めていました。そのために、1週間乗り放題で31ドルのメトロカードを買うつもりでいましたが、駅構内の券売機を見ると乗り放題のカードは売っていませんでした。仕方なく乗り放題ではない20ドルのカードを買って地下鉄を利用することにしました。ニューヨークの地下鉄はマンハッタン島のかなりの部分を網羅しているので、地図から見る限り1~2キロメートル歩くことが苦にならない人であれば繁華街以外でも地下鉄だけで目的地に着くことができます。

地下鉄を利用して気がついたことがいくつかあります。一つは、地下鉄網全域が同一運賃なので、改札は入り口だけで、出口でメトロカードをスライドさせる必要はありませんでした。二つは、各駅停車の線路と急行の線路がそれぞれ別の軌道であることです。日本では、特急、急行及び各駅停車の電車が同一の線路上を走るのが一般的ですが、ニューヨークの地下鉄では違っていました。三つ目は、週末になると一部の下り各駅停車の運行が停止されることです。このため、各駅停車駅から下り方向の駅に向かう場合は、いったん上りの各駅停車で急行の止まる駅まで行き、そこで下りの急行で目的駅に向かうことになります。目的駅が各駅停車駅である場合には、目的駅のさらに下り方向の駅で上りの各駅停車に乗りかえることになります。週日に比べて不便になることは確かですが、こうした制度が続いているということは労務管理対策上やむを得ない措置で、利用者の不満の声もさほどないということなのでしょうか。

地下鉄駅の構内では時々歌や踊りのパフォーマンスが見られます。私が乗っていた電車がある駅に止まると派手な衣装でギターとマラカスのような楽器を抱えた男性二人が乗り込んできました。発車すると彼らは演奏をし、歌い始めました。歌い終わったとき、座席で本を読んでいた30代くらいの女性が彼らに金を渡しました。その女性もパフォーマンスをした男性も次の駅で降りて行きました。これが地下鉄乗客のマナーなのかな、と思った次第です。

 

3.トラムとフェリー

地下鉄以外に乗った乗り物を紹介します。はじめにメトロカードで乗れるルーズベルトアイランド・トラムウエイです。私はただこれだけの理由で乗りました。マンハッタンとクイーンズの間にはイーストリバーが流れていますが、ルーズベルトアイランドはこのイーストリバーにある島です。トラムウエイはいわばケーブルカーのようなもので、川の上空76メートルを往復します。トラムから見た限りでは、島では中高層住宅やオフィスビル、公園が目につきました。島に着くと当日が土曜日であったせいかマラソン大会が行われていました。ゴールした走者には昼食が配られ、食事を終えた人たちは三々五々トラムに乗って帰宅しているようでした。晩秋ののどかな風景がありました。

次はただで乗れるスタテンアイランド行きのフェリーです。マンハッタン島の最南端とスタテン島を結ぶ24時間運航の公共フェリーで自由の女神像の前を行きも帰りも通り、ワン・ワールド・トレードセンターも遠くに望める眺望抜群の乗り物です。フェリー自体も比較的大型で、午前10時から11時過ぎの時間帯でも数百人の乗客があり、通勤時間帯には千人以上が乗船するのではないかと思われるほどでした。

 

4.美術館博物館めぐり

写真②

ニューヨーク市消防博物館

ニューヨークに到着した日、午後から消防博物館へ行きました。私は元消防職員でしたので是非訪問したかった場所でした。地下鉄から降りて5分も歩くと目的地に着きました。3階建ての建物には”30 ENGINE CO 30”(ポンプ30小隊消防分署)との表示があり、消防署を改装した建物であることが分かります。内部は1階と2階が展示室になっており、2階はニューヨークがニューアムステルダムと言われていた時代からの消防関係の文書、装備品や絵画などが展示されており、1階にはクラシックな消防車両の展示に加えて、1室を設けて9・11で殉職した消防職員343人の氏名と写真、殉職事故現場から回収された遺品などの展示がありました。事故の当日ワールドトレードセンターへの出場指令を受け現場に到着した時にはすでに大火災になっていたことでしょう。隊員達は人命救助のため小隊ごとに検索階を指示されその行動の途中で炎に囲まれ、あるいは爆風にあおられて死亡したのでしょう。使命遂行のため犠牲になった殉職者のご冥福を祈り、思わず合掌してしまいました。

消防博物館のほかには、自然史博物館、メトロポリタン美術館及び近代美術館(MOMA)をそれぞれ半日かけて見学しました。いずれの施設も来場者が多く、建物の外観に比べて館内は広く、展示物を見て回るうちにずいぶん長い距離を歩いたような疲労感を覚えました。クロークで帽子、外套及びバッグを預け、身軽になって見学ができました。展示室の入り口に概要説明が掲示されていますがそれを読むのに5分くらいかかってしまうので、初めの5つぐらいはまともに説明文を読んでいましたが、根気が続かなくなり、以降は興味あるものだけの説明を読むようにしました。3時間余り立ち通しというのもかなり体にこたえました。美術館では、床に座って展示されている作品を熱心に模写している若者を随所で見かけました。

 

5.メーシーズのパレード

11月第4木曜日のサンクスギビングに行われるメーシーズのパレードは有名です。ガイドブックには9時から始まるとありましたのでそれに併せてホテルを出て会場の方向に向かっていると多くの人が歩いているのが分かりました。後について行くとパレードが行われる通りに着きましたが沿道にはすでに多くの人がパレード開始を待っていました。会場近くは厳重に交通規制され、警察官がテロ対策も兼ねて要所要所に配置されていました。

パレードは、鼓笛隊や企業、学校、各種団体の行進、山車や大きなバルーンを使った行進など、寒さを忘れさせるほどの声援で大いに盛り上がりました。警備をしている市警察も騎馬隊や音楽隊がパレードに参加していました。冬の訪れを感じさせる行事でした。

写真③

パレード参加者

 

6.ブルックリン橋を歩いて

ウォール街とニューヨーク市庁舎周辺を歩いた後、昼頃ブルックリン橋を歩いて渡り、ブルックリンへ行きました。当日は日差しがあり、歩くには快適な天候でした。Tシャツ姿で歩いている人も見かけました。橋には歩行者・自転車専用の道路があり、1時間で対岸に着きました。通勤のため、ジョギングやバイクライドでこの橋を渡る人も多い、という記述が「実践ビジネス英語」にあったのを思い出しながら歩きました。毎日の通勤でバイクやジョギングでブルックリンとマンハッタンを往来するのはかなりの運動量であることも推測できました。

ブルックリンでは地ビールとホットドッグが売りの店で昼食する予定で2キロ近く歩いて店の前に到着したところ、店はすでに閉鎖されていました。移転先の表示もありませんでしたので、多分倒産したのでしょう。週日の昼下がりには人通りの少ない地域なので客の出入りは週末に限られていたのかもしれません。

写真④

ブルックリン橋歩行者

 

7.ハンバーガーとパンケーキ

滞在中にうまいと思ったものが二つありました。ひとつはコミュニテイ・フード&ジュースのパンケーキセットです。朝8時からの営業で、地下鉄を乗り継いで8時過ぎに店に入ると客席の三分の二くらいは空いていましたが、9時前に食事を終えて出るころには満員の状況でした。私が食べたのはパンケーキ、オレンジジュース及びコーヒーがセットになったものでした。注文して最初に出てきたのが300ccくらい入りそうな大きなカップでそれに熱いコーヒーをなみなみと注いでくれました。寒い中を歩いてきた身にはとても温まるものでした。ブルーベリー・パンケーキもふんわりしていて甘さも控えめでぜいたくな朝食を楽しんだという気持ちになれました。この店のすぐそばにコロンビア大学のキャンパスがあります。構内の出入りは自由で、私も散歩をしました。正門のすぐ近くに著名なジャーナリズム学部の校舎がありました。更に歩いて行くと幅の広い構内通路を隔ててギリシヤ建築風列柱が前面に配置された図書館とホーマー、ヘロトドス、プラトン、アリストテレスなどの名前が前面に刻まれた大きな建物がありました。もちろん近代的なデザインの校舎や高層の建物も多数配置されておりました。名門大学の校舎群に圧倒されました。

ふたつは多店舗展開しているシェイクシャックのシャックバーガーです。ここのハンバーガーは小ぶりですが肉がジューシーでうまいのが特徴です。私が特に気に入ったのは、ソフトドリンクのメニューにビールが入っていることでした。このため、ハンバーガーは一つにしてフレンチフライとビールを注文しました。ポテトフライは1センチ角で長さ5~7センチくらいで塩味が付いており、ビールには最適のつまみでした。ビールグラスも500ccくらい入るもので十分に堪能することができました。

 

8.ニューヨーク専用チャンネル

滞在中ホテルで見ていたのはニューヨーク市のみを対象とするテレビ放送です。交通状況や天気予報の情報は頻繁に流れますし、スポーツニュースもニューヨークを本拠地とするチームの試合ぶりが放送されます。毎朝その日の天気はどうなるのか気がかりで必ず見ていました。夜間雨の予報は1~2回ありましたが、最高気温10度以下、最低気温5度前後の毎日でしたので、毎朝外出するときはショルダーバッグにマフラーを入れ、ジャケットにオーバーコートを羽織り、帽子を被り手袋をする格好で寒さをしのぎました。

テレビコマーシャルで目に付いたのは自動車の割引セールでした。日本の三大メーカーの宣伝も頻繁に放送されていました。サンクスギビングの翌日からは買い物シーズンですがそれに合わせて自動車の売り込みに力を入れていることが分かるくらいの頻度でした。

 

9.またの機会に

「実践ビジネス英語」の中でマンハッタンに住むことを”the feeling of being in the center of things”(物事の中心にいるという感覚)と述べている個所がありましたが、この言葉を思い出しながら6泊7日を過ごしました。楽しむことができた旅行でした。ミュージカルの観劇やMLB観戦などまだ見たいものはたくさんあります。機会があれば行きたいと思います。(以上)

 

 

瀬川 俊 (せがわ たかし)

横浜国立大学教育学部卒業。平成4年4月中小企業診断士登録。東京消防庁を36年余り勤務し勧奨退職。中央支部「ビジネス英語研究会」連絡幹事。

特定社会保険労務士、通訳案内士(英語)、英検1級、商業英語検定Aクラス、TOEIC 955。