Global Wind (グローバル・ウインド)

中央支部・国際部 船橋 竜祐

 先月から、外国人労働者の受け入れを拡大する「出入国管理法改正案」をめぐり、国会で激論が交わされている。今国会の目玉とも言われる本改正案の骨子は「建設、介護、宿泊、農業など単純労働の分野で新たな在留資格を与える」こと。分かりやすく言えば、「単純労働の分野で外国人がより長い間、堂々と働ける」ということ。
 野党側からは、技能実習生制度の問題点を指摘し、今国会での法改正は時期尚早、治安の悪化の恐れあり等の批判が強い。

 私は、ベトナム人技能実習生や留学生達の労務管理コンサルティング業に12年前から関わってきた。そして、ここ最近は、「募集を出しても、日本人なんか来ない。来ても使いもの(叱るとバッくれる等)にならない。」といった切実な声を国内の中小企業経営者から聞くことが多い。ハングリー精神の強いアジア諸国の人材の労力なくして、経営の継続が困難なのでは?と思われる中小企業が国内に一万社以上存在していると類推している。実際、「人手不足倒産」なり文言も、新聞でよく見られるようになった。

 毎年、約60万人の生産年齢人口がここ20年間減少し続けているのだから、そのような「人手不足問題」や「人手不足倒産」が発生するのは当然であろう。

我が国の総人口・生産年齢人口・高齢化率の推移(予測)(単位:万人)

01_我が国の総人口・生産年齢人口・高齢化率の推移

 そのため、開催まであと2年足らずの東京オリンピックですら、建設業で日々汗を流してくれている技能実習生達無くして実現ができない、と言っても過言ではないくらい、国内企業にとっては、「彼ら」は必要不可欠な「人財」になっている。
 特に、ここ10年で急激に増えたのが「ベトナム」からの海外人材だ。2018年末の現在、日本には約26万人程のベトナム人の若者達が技能実習生、技術人文知識国際業務、留学(資格外活動)といった様々な在留資格で入国し、日本で働いている。

技能実習生 年間入国人数 (単位:人)

02_技能実習生 年間入国人数

(出所)法務省 H28 出入国管理統計統計表より作成

外国人留学生受け入れ人数 国籍別推移 (単位:人)

03_外国人留学生受け入れ人数 国籍別推移

(出所)日本学生支援機構調査結果

 では、彼らベトナムの若者達がどのようにして、日本で働くルートを見つけるかと言えば、実は、ベトナム現地側にエージェントとしての「送出機関」を経由して来日しているケースが多い。

技能実習生制度の全体像

04_技能実習生制度の全体像

 ベトナムには300(下部組織も含めて600)以上もの人材送出機関が存在していると聞く。
それらは政府からの認可を得て運営をしているが、多くが営利事業の団体でもあり、結果として顧客獲得競争が日々激化している。
そのため、日本人の商売道徳から見て驚くような手段を用い、日本の監理団体と契約を結び、ベトナムの若者達を日本に送り出している、所謂「悪徳」とも思われる「送出機関」も存在していると聞く。
 反面、真面目に教育者として使命感から、ベトナムの志ある若者を支援するために、送出機関を運営している経営者もいる。
 日本のマスコミ報道では、技能実習生制度の問題点として、国内の受入企業側の問題を列挙し、失踪者が多発しているとして制度を批判する記事が散見される。そして、一部で起きた人権侵害行為を拡大報道し、然も制度そのものが崩壊しているかのような偏った記事も、時折みられる。
 失踪の実態は、以下の図表の通りであり、失踪率も2012年以降、増えているのが現状である。2017年の失踪率が2.59%なので、技能実習生の25人に1人が失踪していると言える。逆に言えば、97%以上の技能実習生は、まじめに責務を果たし、帰国をしているとも言える。

失踪者数・失踪率の推移 (単位:人)

05_失踪者数・失踪率の推移

 しかし、この制度の全体像は、日本側だけに調査のメスを入れたとしても、永遠にそのスキームの全体像は俯瞰できない。なぜなら、日本にやってくる人材の募集⇒応募⇒面接⇒採用⇒教育、といった重要なことは全て現地国側の送出機関で行われているからだ。

 私は、先月11月にベトナムのホーチミン市で開催されたフランチャイズ展示会に、中小企業診断士東京協会フランチャイズ研究会の伊藤会長と共に参加した。

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フランチャイズ展示会が開催されたサイゴンエキシビション&コンベンションセンター

 そして、フランチャイズ展示会の後、ベトナムの送出機関で働く私の旧来の知人である遠藤亜矢子氏に会うことができた。

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遠藤氏の事務所が入る建物
ホーチミン市在住の遠藤亜矢子氏
ホーチミン市のシンボル

 彼女は、日本では千名以上の技能実習生を管理する技能実習生監理団体のマネージャーを経験した後、ベトナムに渡り日系企業向けの進出支援コンサルティングを行っていたが、3年前から、送出機関の業務を兼業として始めた方だ。
 日本のメディアでは、送出機関への調査、切込み記事がほぼ、ないと思われる。そこで、今回の機会を生かして、遠藤氏に、ベトナム現地送出機関から観ての「技能実習生制度」について、インタビューさせていただいた。

(後編に続く)

筆者プロフィール
船橋 竜祐 (ふなばし りゅうすけ)
ダイバーシティコンサルティング株式会社代表取締役
中小企業診断士、宅地建物取引士
ベトナム系人材コンサルティング企業、学術出版社営業職(北米市場を担当)を経て2016年に独立し、現在に至る。
東京外国語大学東南アジア課程卒業、法政大学経営大学院修了。