グローバル・ウインド

中央支部・国際部 竹島 裕明

 ミャンマーにおいて日系企業で初めてチャレンジした会社のカテゴリー変更について紹介したいと思います。

1.はじめに
 2014年9月にミャンマー駐在となり、早4年半が過ぎました。
 その間、住んでいたコンドミニアムが停電になって何度もエレベーターに閉じ込められたり、一時帰国中に部屋の水道管が破裂して戻ってきたら全ての部屋が3mmくらい水没していたり、日曜日の昼に警報が鳴ったので慌てて廊下に出たら煙で何も見えず死を覚悟したり(建物全体で蚊の駆除を行っていた問題の無い煙だったことは後で分かりました)等、仕事以外でも様々な経験をさせて頂きました。
 そんなミャンマーでの生活も終わりに近づき、そろそろ帰国が近いと勝手に思い込んで時間があれば感傷に浸る日々を過ごしていますが、今回は会社のカテゴリー変更に関してチャレンジしたことを紹介したいと思います。

2.ミャンマーでの会社設立方法
 多くの国と同じく、ミャンマーで外国企業がビジネスを行う場合、事業や資本出資の形態によって以下の5つのどれかを選択します。
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 上記のうち1、2、4の形態を選ぶ場合、外国企業は会社(支店を含む)を設立し、営業許可を取得する必要があり、その際、原則として次のいずれかを選択することになります。
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 *DICA:計画財務省 投資企業管理局(会社法に基づき営業許可を与える)
 *MIC:ミャンマー投資委員会(投資法に基づきMIC認可を与える)DICAが事務局を兼務
 *管理委員会:政府傘下で各経済特区に設置されている委員会(経済特区法に基づき許可を与える)

3.MIC認可の取得
 弊社はサービス業で、大きな設備投資の予定も無かったこともあり、現地法人設立時にMIC認可の取得は考えていませんでした。
 しかし、事業開始2年目に弊社の法務アドバイザーから、改正新投資法ではミャンマーのインフラ構築を行う際に使用する材料や重機の輸入などを投資と解釈することや、そもそも100%外資なので、雇用を含めミャンマー国に投資・貢献しているので改正新投資法の下で恩典が享受できて当然ではないかと助言があったため、これが実現すれば更に事業収益の向上に貢献すると思い、MIC認可を取得しようと考えました。
 実際、DICAに問い合わせたところ、新投資法の解釈上MIC認可が取得できない理由は無いとのご意見を頂いたことも有り、今回日系DICA企業で弊社が初めてMIC認可取得(①から②への変更)にチャレンジしました。

 以下がMIC認可取得までの手順です。(スペースの関係上簡略化しています)
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 *手順5、6は通常のMIC認可取得では不要

4.MIC認可取得によって得られる恩典
 外国投資法は、ミャンマーに対する投資を奨励する法律として制定され、2018年に新投資法が施行されました。他に同様の法律として経済特区法が存在します。
 新投資法下でMIC認可を取得することによってさまざまな恩典が享受できますが、以下にその中でもメリットが大きいと考えられるものを3点紹介します。
1) 租税優遇措置
 ①所得税:投資促進分野では一定期間の減免措置
 ②その他の税金:関税またはその他の国内税、もしくは両方の免税または減税
2) 土地の長期賃貸借
 土地または建物を最大50年間賃借できる(更に10年の延長を2回まで認められる)
3) 輸入ライセンス
 外国資本の企業でも原材料・資機材の輸入ライセンスが取得可能となる。

5.MIC認可取得の難しさ
 最も苦労したのは、申請書類のうち弊社の投資計画を政府の方々が納得されるように作成することで、何度も修正を行い、ミャンマー政府向けに合計3回、MIC事務局向けには10回以上プレゼンを行いました。
 政府の方も本件に関して弊社のような通信ネットワークを構築する建設業によるプレゼンは初めてで、評価基準が無いこともあって苦労されているように感じました。

 先述の手順5、6は通常MIC認可取得には必要はありませんが、弊社事務所がヤンゴンに所在することからヤンゴン管区の知事が話を聞きたいということで説明に伺いました。
 また、MICとの交渉過程で、弊社の事業管轄省である運輸通信省から認可取得のための推薦状を貰って欲しいとの法令外の要請まであり、そのために別の事業許可証などを取得する手続きも発生するなど、想定以上の予期せぬ法令・規則外の手続きの多さに戸惑いました。

 最終的に手順1(エージェントの選定)からMIC認可取得までには約6か月かかりましたが、新投資法は工場を建設する製造業などが主たる対象で弊社のような業種にはうまく対応していないため、これでもまだ短期間であったと思います。
 認可取得までに様々な苦労がありましたが、改正新投資法という新しい制度の下で初めてのチャレンジが無事成功し、先駆者として道を切り開いたことと、今後日系企業が同様のチャレンジを行う際の前例を残せたことに大変満足しています。
 以前にも増してミャンマーのことを夢と希望しかない国と思うようになりました。

以上

【自己紹介】
竹島 裕明(たけしま ひろあき)
1970年生まれ。大阪府出身。
大学卒業後通信建設会社に勤務し、海外部門で主に営業やプロジェクト管理を担当。フィリピン、マレーシアで駐在経験有り。
2014年9月よりミャンマーの現地子会社に駐在。
2016年10月中小企業診断士登録。東京都中小企業診断士協会 中央支部国際部。