グローバル・ウインド

中央支部 国際部 太田一宏

2020年2月22日土曜日、墨田区の両国ステーション西ビルにて、中央支部国際部のオープンセミナーを開催しました。アフリカというテーマ選定はアフリカ開発会議(TICAD)が契機となっていますが、それだけにとどまりません。ラストフロンティアと呼ばれることも多いアフリカは東南アジアや南米とは異質の発展が期待され、SDGsにつながる未来への可能性を感じたからです。今回のセミナーでは、そのことが確かめられた、と考えています。国際部セミナー実行委員として、内容と印象を綴っていきます。

第一部 日本貿易振興機構(ジェトロ) お客様サポート部長
兒玉高太朗様のご講演
「変貌するアフリカ市場」
~グローバル戦略にアフリカをどう取り込むか~

ジェトロの兒玉高太朗様に、アフリカ経済と日本企業の進出について海外進出を促進する立場からご講演いただきました。

「約12億人が54の国と地域に住むアフリカ大陸は資源ブームによる成長から内需主導型の成長に既に移っています。そして長い期間にわたり人口増加が見込める成長市場です。アフリカ外の各国はその成長市場めがけて次々に積極参入してきています。その中で広く報道されているのは中国の参入です。一方、日本はこれらの国々にたいして出遅れている感は否めません。現地パートナーを選ぶのも難しく、法制度や不安定な政治・社会・為替動向などのリスク要因が大きいという背景があるものと考えられます。」とアフリカの概況についてご説明いただきました。
日本企業が進出する視点として、①進展が期待される市場統合の活用、②ビジネス・投資環境の改善を織り込んだ進出先の選定、③スタートアップと協働した新たなビジネスの開発、④中小企業のアフリカビジネスへの挑戦、⑤アフリカに根を張る第三国企業との共同市場開拓をご提言としていただきました。講師のご協力もあり、講演で示された豊富なデータは、参加者への配布資料とさせていただくことができました。

第二部 VIVIA JAPAN株式会社 代表取締役/CEO 大山知春様のご講演
「アフリカ発 日本市場向けバリューチェーン構築」

アフリカの天然素材であるモリンガや、シアバターを用いたスキンケア製品や食品を企画・販売されている大山知春様に、健康や雇用創出などへの貢献について起業家の視点からご講演いただきました。

モリンガはインド原産の植物で必須アミノ酸を全て含みます。全ての必須アミノ酸を含む植物はモリンガだけだそうです。そのモリンガが持つ体のバランスを整える力に着目されて製品化されました。ガーナの信頼できる生産者とチームを組み、厳選された原材料を輸入するのにとどまらず、生産資金のマイクロファイナンシングや農家へのトレーニングも行っておられます。サプライチェーンではなくバリューチェーンと呼ぶのにふさわしいビジネスです。
モリンガに着目された契機が大山さんご自身の病気療養だったそうです。ご自身の健康を見直し、身体は食べたものからできている、という基本的なことに思い至られ、食や身体に直接用いる化粧品などこれまでの用いてきたものを徹底的に顧みられたことでした。
印象に強く残ったのは、「起業なんてしたくなかった」という言葉と、そして、質問者へのお返事として話された「大切なことを決める時には自分の勘を大切にする」という言葉でした。商品を販売する企業には在庫負担や資金繰りへの懸念が常に伴います。そんな大変な思いをしたくはなかったそうですが、モリンガという素晴らしいものに出会って、それを紹介するにはその良さが分かっている自分が輸入・販売するしかないと思って起業されたそうです。起業したくなかった大山様がご自分の直感に突き動かされて起業に至った、クールヘッドとウォームハートが結びついてバリューチェーン構築へつながった、と言えるでしょう。お話し全体がリアリティに満ち溢れていました。
当日会場には、取扱商品や著書を特別価格で提供するミニ販売コーナーも設けられました。これは、セミナーに来られ、その価値を感じられた、そういう方々を顧客として大切にしたい、大山様のマーケティング・ポリシーと密接に結びついたご提案でした。それを自らの言葉で語られるライブ感満載のご講演でした。

大山様がモリンガ、シアバターを使った商品を販売されているサイトはこちらです。
https://www.jujubody.com//

アンケートでは、ほぼ全員の方が満足したとのお声をいただきました。
兒玉様へは「定量的なデータを用いながら、なぜアフリカ市場が注目されているかを体系立てて説明してくださった。こんなに理解度が深まる説明をこれまで聞いたことがありません!」「簡潔に要領よく整理された講義で、アフリカ全体の概要を把握するのに適当だった」というコメントが寄せられました。
大山様へは「実体験に基づくリアルなビジネスの話を軽快にそして理論立てて話されていた。良いパートナー、良い生産者の方と巡り会えたことも、良いバリューチェーンを築くことができたのも、大山さんが真っ直ぐな心と実行力をもっていたからでしょう」「大山さんのお話はスタートアップの事例として大変勇気づけられるお話で、淡々と話されていたが人生ドラマそのもので非常に感銘を受けました。自分を信じて一度決心したら迷わずブレず徹底してやり抜く姿勢は学ぶべきものが多くあります」といった声がありました。

本セミナーは、COVID-19の感染者増加が報道されるなかでの開催であったため、事前にメールでマスク・消毒の対策をとっていることを参加者へ伝え、会場でもこれらを徹底するなど、万全の対策をして臨みました。
このような状況の中ご講演を快諾したくださったお二人の講師と、ご参加いただいた皆様のおかげで、素晴らしいセミナーとなりました。改めてお礼申し上げます。

■ 太田 一宏(おおた かずひろ)
2018年中小企業診断士登録。1984年タイヤ会社に入社。米欧子会社で15年間勤務。米国も含めリテールビジネスに約10年携わる。販売・IT・労務・経営企画を担当。2020年健康経営エキスパートアドバイザー認定。
すこやかビジネス研究所 代表。