グローバル・ウインド

中央支部・国際部 岡田 啓吾

2019年に中小企業診断士に登録し、中央支部・国際部に入部した岡田と申します。
私、毎年年末年始の休暇の時期は必ずひとりで海外旅行にいっており、今年で9年目になります。
今回はエジプトを訪ねて参りましたので、旅行の中で感じたことや世界遺産条約のきっかけとなったアブシンベル神殿について紹介をさせていただきたいと思います。
20200401-01

1.エジプト旅行で感じたこと

もともと、歴史が好きだったこともあり、悠久の歴史を誇るこの国にはいつか行ってみたいと思っていましたが、かねてからの念願叶っての訪問となりました。エジプト旅行の概要、見所や感じたことを紹介いたします。

(1)旅行と滞在した都市
滞在期間:2019年12月29日~2020年1月4日
訪問した都市:アスワン、アブシンベル、ルクソール、カイロ、アレクサンドリア

(2)見どころ
 エジプトの見どころは何といっても古代エジプト王国時代の遺跡群です。ギザの3大ピラミッドは言わずもがなですが、後述するアブシンベル神殿、ルクソールのカルナック神殿や王家の谷等、世界的にみても類を見ないほど歴史の古い遺産であふれています。
また、そこから出土した副葬品等がカイロ市内の国立博物館に所蔵されていますが、そのなかにはツタンカーメン王の黄金のマスクをはじめとして歴史の教科書で目にするようなものが数多くありました。

20200401-map(3)治安
 治安に関してはデモやクーデターのイメージがあり、旅行前は若干懸念していましたが、2014年6月のエルシーシ大統領の就任以後は政情が比較的安定しており治安対策が強化されているようで、道中危険を感じることは全くなかったです。特に人が集まるような観光地では軍や警察が厳重に警備を固めており、安心して旅行できました。(実際、外務省のホームページを見てもナイル川流域の主要な観光地はすべて危険度が「レベル1:十分注意」になっておりました。)

外務省ホームページより引用

20200401-02(4)食事
 食事については正直なところあまり期待していなかったですが、牛肉、鶏肉、ラム肉のグリルなどおいしいく食べられる料理も意外と多かったです。(もちろんイスラム圏なので豚肉はありませんでした。)ただ香辛料の味が強くてクセもあったので、苦手な人は苦手かもしれません。私自身、これまで途上国も含めて数多く旅してきた中でほとんどお腹を壊したことはなかったのですが、今回は特に後半はかなりお腹の調子が悪かったです。

 
(5)交通
 交通は都市間の移動は飛行機、鉄道、バス、都市内では基本的にタクシーでの移動が基本になります。(カイロには地下鉄がありますが今回は利用しませんでした。)
特に注意が必要なのはタクシーを利用する際にぼったくりにあう可能性が多いことです。またドライバーで英語が通じない場合も多かったです。解決策としては、駅やホテルの前で観光客を捕まえようとしているタクシーは利用せず、なるべくホテルなどで手配してもらったタクシーを利用することです。あるいは、こちらはカイロやアレクサンドリアなどの大都市でしか使えませんが、UBERを利用すれば乗車前に明確に料金が決められているのでぼったくりに合うことはまずありません。

2.アブシンベル神殿のご紹介

 エジプトの古代遺跡といえばピラミッドを思い浮かべるところですが、今回はピラミッドと並んで人気の観光地であるアブシンベル神殿への訪問体験とその歴史について紹介させていただきたいと思います。

20200401-0320200401-0420200401-05(1)アブシンベル神殿への訪問体験
 アブシンベル神殿はエジプト南部のスーダンとの国境付近に位置し、古代エジプト王国の長い歴史の中でも最も偉大なファラオとされるラムセスⅡ世によって紀元前1250年頃に建設されました。メインの大神殿とラムセスⅡ世の王妃ネフェルタリのために作られた小神殿の2つの岩窟神殿からなっております。大神殿の奥には4体の像があり、ラムセスⅡ世が生まれた日(2月22日)とファラオに即位した日(10月22日)の年に2回のみ朝日によって照らされる設計になっています。当時のエジプトでは既に高度な天文学の知識を持っていたことがうかがえます。
私はアブシンベルから約280km離れたアスワンに滞在しておりましたが、アスワン市内のホテルを早朝3時にバスで出発、約4時間かけて移動して現地には7時ごろに到着しました。
 到着後、遺跡を観光しましたが、高さ22mもあるラムセスⅡ世の巨像をはじめ、3000年以上前に建築されたとは思えない壮大さに圧倒されました。また、古代ヒッタイト帝国との戦争の様子などラムセスⅡ世統治時代の歴史を伺うことのできる数々の壁画がきれいな状態で残っており、非常に見応えがありました。

20200401-06(2)古代遺跡に迫った水没の危機
このようにアブシンベル神殿はエジプトを代表する素晴らしい遺跡ですが、実はこの遺跡がかつて水没の危機にさらされていたことをご存知でしょうか。
1960年代、当時のエジプトでは毎年夏に発生していたナイル川の氾濫のコントロールと水力発電所の建設による電力供給の安定を目的にアスワン・ハイ・ダムの建設計画が進められていました。
これに伴い琵琶湖の約8倍の大きさの人口湖(ナセル湖)が出現し、アブシンベル神殿をはじめとするヌビア遺跡はそこに沈む計画になっていました。
これに対してUNESCOはヌビア遺跡を水没の危機から救うためにこの遺跡群を移築して保存する救済キャンペーンを実施。その結果、世界各国から寄付金が集まり、大規模な移築工事が行われることとなりました。
アブシンベル神殿の移築工事は巨大な遺跡を約1000個のブロックに切り分け、約120m離れた原位置より60m程高い高台に移設するという大規模なプロジェクトで、1964年~1968年の約4年半にわたって実施されました。
このような経緯で人類にとって貴重な古代遺跡は水没の危機を免れることになったのです。

(3)移築工事が世界に与えた影響
この移築工事をきっかけとして、歴史的価値のある遺跡、建築物、自然等を経済開発から守っていこうという機運が国際的に広がり、1972年UNESCOのパリ本部で開かれた総会において、「世界の文化遺産および自然遺産の保護に関する条約(世界遺産条約)」が満場一致で成立することになりました。
現在では世界各国の計1121件(2020年1月時点)の遺産が登録されており、SDGsの一つにも位置付けられている世界遺産ですが、きっかけとなったのはまさにこの場所だったのですね。

3.最後に

実は私自身、恥ずかしながらアブシンベル神殿を訪れるまではここが世界遺産の始まりの地であることを知りませんでしたが、思いがけず経済開発と自然環境・文化との共存を考えるきっかけになりました。3000年以上前に建てられた建造物が現代の人々の意識を変えるというのはなかなか興味深いことだと感じました。
新型コロナウィルスの影響でなかなか旅行にも行きづらくなっている状況ですが、沈静化後には皆様もエジプト、そしてこのアブシンベル神殿を是非旅行先としてご検討いただければ幸いです。

■岡田 啓吾(おかだ けいご)
1987年生まれ,兵庫県神戸市出身。京都大学法学部卒業後,重工メーカーにてサービス営業、総務業務に従事。その後コスト削減コンサルティングを専門に手掛ける日系コンサルティングファームに転職。現在はクレジットカード手数料、施設管理費、旅費交通費等の販管費のコスト削減業務に従事している。2019年9月中小企業診断士登録。東京協会中央支部所属。