Global Wind (グローバル・ウインド)

国際部 川西 智也

1.はじめに
最近、ドバイという都市の名を聞くことが増えています。トリップアドバイザーの人気の観光都市ランキングで1位になりました[TripAdvisor 人気観光都市ランキング]。 日本人でも著名な方が最近は現在ドバイに滞在・移住しています。ユーチューバーを含めたコンテンツ系ビジネスの方、仮想通貨関連で大きく投資している方などが多くドバイに移住している印象です。また 2021年10月から2022年3月までの期間、ドバイでは万博が開催されていました。その中でもっとも人気だったパビリオンは日本館。日本という国について、万博の大きなテーマの1つであったサステナビリティについて、その両方を上手に表現したことで、多くの人が集まっていました。次回2025年の EXPO 開催国である日本をアピールできていました。
Dubai Expo 2020 Japan Pavilion

世界で一番高いビル、ブルジュハリファがドバイにあることを知る人も多いかと思います。
Burj Khalifa

 私は 2022年1月末から4月初旬までドバイに滞在していました。私は現在、フリーランスの IT エンジニアで、リモートワークで世界中どこでも仕事ができます。それを活かして目下、急成長中のドバイに将来的に移住することも含めて検討していました。
その過程で、いろいろ調べた内容なども含めて、このクローバルウィンドで共有したいと思います。

2.ドバイの基本情報
さて、ドバイはどこにあるのでしょうか?中東ということは分かる方は多いかもしれません。

ドバイの位置。Wikipedia より。

World Map Dubai Middle East Map Dubai UAE Map Dubai

[地図は Wikipedia から]

 ドバイは、アラブ首長国連邦の中にある7つの首長国の1つです。アラブ首長国連邦は、アメリカ合衆国や旧ソビエト連邦と同じように、国の中にたくさんの国(首長国)がある連邦国家になっています。アラブ首長国連邦はイランの対岸に位置し、オマーンやサウジアラビアと国境を接しています。面積でいうと、最大のアブダビに次いで、ドバイは2番目に大きな面積がある首長国です。人口の点ではアブダビよりも大きく最大の首長国となっています。

ドバイは砂漠気候です。6月から9月までは非常に暑く、最高気温は40度前後にまで達します。特に駐在員が住むようなエリアには人工の湖があり、そこから湿気が上がってきます。特に夕方は湿度がとても高くなり、外に出るのが不快になります。そのため、夏の間は自分の家から目的地までドアツードアでタクシー等を使って移動することが一般的です。

一方、12月から2月までの冬になると最低気温は10度を下回るため、朝は肌寒く感じられます。
10月から3月頃までは比較的快適に過ごすことができます。

ドバイでは雨が降ることはほとんどなく、いつも晴れています。とはいえ、霧が目の前に広がって、すべてがぼやけ、視界が悪い日があります。それは実は霧ではなく砂嵐です。天気予報を見て服装について考える必要はありません。雨が降ることが非常にまれです。ごくまれに雨が降るとニュースになります。実際に 2021年の大晦日、ドバイでは雨が降ったのですが、高速道路が冠水し、ポンプ車が出動する事態となりました。東京で大雪が降ったときのような感覚でしょうか。

ドバイに行くときはドバイ国際空港を利用するのが便利です。ドバイ国際空港へは、エミレーツ航空の飛行機で成田空港と関西国際空港から直行便で行けます。エミレーツ航空は Skytrax が選ぶ World’s Top 100 Airline 2021 で第4位と、非常に評価の高い航空会社です。少し遠いですが、隣の首長国であるシャルジャ国際空港やアブダビ国際空港も利用できます。アブダビ国際空港はエティハド航空が名古屋と成田から毎日運航しておりますので、特に名古屋に住んでいる方にとっては便利です。

ドバイの国内にはメトロがあるのですが、各駅停車しかなく、遅いですし、特に夏は暑いので、タクシーが便利です。ドバイは砂漠に作られた計画都市であるため、高速道路が張り巡らされています。日本では一般道をふつうは使って、一部の遠距離区間については高速道路を使うという考え方で都市設計されていると思います。その点、ドバイはふつう高速道路を使って、出発地、目的地近くの一部の区間だけ一般道を使うという感覚です。直線距離で近いような場所に行くときも高速道路を通って、 U ターンする大回りのルートとなることが頻繁にあります。距離は遠くなりますが高速道路で信号もなくスピードも出るため実際にはとても短時間で到着することができます。これは日本とは思想が根本的に違うと理解した上で慣れるしかありません。

ドバイでは非接触決済がとても一般的です。日本でいうところの VISA タッチに相当するクレジットカードによる非接触決済がかなり小さい商店を含めて本当にどこでも利用できます。テーブル決済が可能なレストランが非常に多いので、レジで待たされることはありません。チップ文化はないため、チップに不慣れな日本人にとってとても安心です。

3.住みやすい都市 ドバイ

駐在員のためのコミュニティ InterNations で最も住みやすく働きやすい都市として世界57都市中、第3位の評価を受けました。ドバイは下記の点で高く評価されています。

●現地の言葉(アラビア語)ではなく英語で生活できる(94%、世界平均は 54%)
●現地の人々が外国人に対して友好的(81%、同 67%)
●安全で安定した環境と充実したレジャーの選択肢(84%、同72%)
●ドバイの治安の良さ(97%、同 84%)

富裕層がドバイに移住してきている理由として、もともと住んでいた環境が政治情勢等によって影響を受けている点もあります。たとえば、多くの富裕層のロシア人がドバイに移住してきました。それは西欧諸国がロシア人に対して金融制裁などで門戸を閉ざしていた一方で、ドバイは門戸を開きつづけていたからです。生活コストも高く、Covid-19 以降、犯罪が急増したアメリカ カリフォルニア州から転居するような動きも起きています。
ドバイは Covid-19 の時期にも比較的ゆるやかな規制で2020年の3月~4月に短期間のロックダウンがあっただけで、諸外国よりも上手に対応してきた点が評価されています。また、次の節で詳しく説明するとおり、個人所得税のないドバイはその点だけでも非常に富裕層にとって魅力的です。

これらの影響で、ドバイの不動産は上昇基調にあります。UBS Global Real Estate Bubble Index 2021 でもっともバブルではないとドバイは評価されており、ドバイ不動産には上値余地があると考えられている点もドバイの不動産投資に多くの世界中の富裕層が触手を伸ばしている理由であると考えられます。また、後述するようにドバイ政府は不動産所有者に対して支給するビザを拡充しており、その結果、ドバイの不動産市場は活性化しています。

このようにさまざまな誘因がある結果、ドバイには富裕層がたくさん集まっており、ビジネスをする上で魅力的な場所となっています。

4.ビジネス環境としてのドバイの魅力

ドバイの大きな魅力として、税制とビザ取得が容易である点があります。

ドバイには消費税(5%)はありますが、個人の所得税はありません。この個人の所得税がないという点はたくさんの富裕層をドバイに引き付ける理由となっています。法人税は現在ありませんが、2023年6月1日以降の会計年度で法人の課税所得に対して税率9% の法人所得税を課す予定となっています。

ビザ取得に関しては、日本人であれば、なんの手続きもせずに 30日間の滞在が可能です。現地で延長手続きをとれば観光ビザで 60日間滞在できます。

ドバイの主なビザとしては下記のものがあります。

● Working Visa 就労ビザ。ドバイで働くときに必要となるビザ。勤務先(スポンサー)が発行する。自分で会社を設立して自分に対して就労ビザを発行することもできる。
●  Freelance Visa フリーランスビザ。フリーランスとして働くときに必要となるビザ。経営コンサルティング、プログラマーなど該当の職種であれば取得できます。
●Property Owner Visa 不動産オーナービザ。最小で 750,000 AED (約 3千万円弱)で取得できる。
●Remote Work Visa: リモートワークビザ。月に 5,000USD 以上、継続的に稼いでいる場合、取得できる。

申請費用、健康診断の受診、1ヶ月程度の申請期間が必要にはなるものの、諸外国に比べるとドバイははるかにビザの取得要件が低く、簡単に移住が可能です。会社から就労ビザを支給してもらえなくても、自分でフリーランスビザを非常に簡単に取得できる点は特徴的で、ドバイは移住が容易と言われる理由となっています。

5.参入障壁の高いドバイでのビジネス
ドバイで現地法人を設立して、ドバイに住んでいる人向けにビジネスをするとなると、様々な障壁があります。イスラム教の戒律によるものなどが代表的ですが、ドバイには非常に多くの規制があり、また行うビジネスによっては、そのビジネスを行うためのライセンスを購入する必要があります。そのライセンス購入には費用も手間もかかるため、その点はドバイを選ぶ不利な点であると言えます。しかしながら、裏返して考えるとそのライセンスを取得し開業するところまでたどり着けば、参入障壁がとても高いため、競争にさらされにくいという見方もできます。今(2022年9月)は円安がとても速く進んでいます。日本の商品・サービスは価格競争力が強くなり、外貨を獲得するビジネス上の価値が高まっています。進出先の1つとしてドバイを検討してみるのもいかがでしょうか。

6.おわりに
今回はドバイの魅力について、簡単に紹介させていただきました。日本人を含めて、ドバイに住んでいる人は未来に対して希望を抱いており、前向きな考え方をしている人が多く、それが私自身、ドバイに滞在していて、とても魅力的に感じた点でした。

■川西 智也(かわにし ともや)
2022年2月 中小企業診断士試験に合格。2022年中には登録予定。口述試験の直後にドバイに移動したため、合格証書が届いたタイミングはドバイに滞在していた。2021年2月に会社員生活を辞め、現在はフリーランスの IT エンジニアとして活動中。主にエンジニアの採用コンサルティング、エンジニア組織風土の改善、若手育成に向けたコードレビューなどに従事。前職では WEB アプリケーションを開発するサーバーサイドエンジニア、AWSの設定などを行うインフラエンジニア、エンジニア採用などの業務に携わる。取得資格は実用英語検定準1級、TOEIC 915点、情報処理技術者試験(ITストラテジスト、システムアーキテクト、テクニカルエンジニア(ネットワーク・データベース))など。