08国際部 木村 篤

昨年2022年開催されたサッカーワールドカップ。日本チームの大健闘で大いに盛り上がりました。サッカー通の方々も、私のようなにわかファンの方々も、睡眠時間を削ってテレビに釘付けになっていたことと思います。そんなワールドカップも今回で22回目の開催。場所はカタールのドーハ。中東でワールドカップが開催されたのは歴代で初とのことです。

日本人にとってカタール・ドーハとはどういうイメージを持っているでしょうか。30代半ば以上の人にとっては“悲劇”の土地としてのイメージが強いかと思います。ただ、なかなかそれ以上のイメージを持っていない人も多いのではないでしょうか。
私は2005年にドーハで1ヶ月ほど滞在した経験があります。やや古い話になってしまいますが、滞在者目線でのドーハの様子と、カタールという国が他の湾岸諸国とどのような関係にあるかを紹介していこうと思います。

(1)カタールの国情報
まずはカタールの基本情報をおさらいします。
図:カタール(出所) Google Map

(出所) Google Map

面積:11,427平方キロメートル(秋田県よりもやや狭い面積に相当)
人口:約280万人(2020年6月/カタール開発計画・統計省)
首都:ドーハ(Doha)(人口238万人)
宗教:イスラム教
政治:2017年、サウジアラビアを中心としたペルシャ湾岸諸国、エジプトなどアフリカ大陸にあるイスラム国家の一部は、カタールに対して国交断絶を表明。理由は、サウジアラビアと対立するイランへの過度な接近や、ムスリム同胞団への支援があったからとされている。この問題は2021年に解消されている。

(2)主な産業
主要産業:原油(埋蔵量約252億バーレルで世界シェア1.5%)
天然ガス(埋蔵量約24.7兆立法メートルで世界シェア13.1%)
一人当たり名目GDP:約6万2千ドル(2021年/IMF推計)
主要貿易品目
(1)輸出:LNG、石油、石油化学製品
(2)輸入:自動車、飛行機部品、洋上設備
主要貿易相手国
(1)輸出:日本、インド、韓国、中国
(2)輸入:米国、中国、ドイツ、英国

カタールの主要輸出相手国に日本が挙げられている通り、日本とカタールとは長年友好な関係を築いてきている。

(3) カタールと中東湾岸諸国
私が滞在したきっかけは、私が某100円ショップに勤めていた時に、新店舗立ち上げメンバーとして中東に赴任したときでした。そのときは、中東に関する知識がなく、なぜ砂漠の中にお店を作るのだろうと疑問を持ちながら赴任しましたが、想像以上の大都会で、カルチャーショックを受けたことを覚えています。

お店のスタッフ達は、女性はフィリピン人、男性はインド、パキスタン、バングラデシュ、エジプト人など。彼らのようなアジア、アフリカからの出稼ぎの人たちが商業や交通インフラの働き手として活躍しています。
人口比率は、カタール現地人が全人口の1割ほどしかおらず、ほとんどが出稼ぎの人たちで構成されているのが特徴です。

写真:DAISOドーハ店のスタッフと若かりし日の筆者
写真:DAISOドーハ店のスタッフと若かりし日の筆者

カタールの他にも、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、バーレーンに滞在していました。これらの国は中東でも湾岸諸国と言われる比較的裕福な国々です。富の源は原油です。しかし、どの国も同じように原油が取れるわけではありません。カタールやUAEはすでに原油依存の収益体制から、金融や観光業へと産業構造のシフトが進んでいます。
ここで、私の主観も入っていますが、湾岸4ヶ国の違いを表にしてみました。

表:湾岸4ヶ国の違い

一人当たりのGDPを見ると、カタールとドバイが高い傾向にあります。石油だけでなく、他の産業が発展していることによると思われます。イスラム教の厳格度は、下に続くお酒の自由度や女性がどの程度素顔を隠さなければならないかの比較によって感じた基準です。

UAEは7つの首長国で構成されており、首長国ごとに戒律の厳しさが違います。中でもドバイは比較的緩やかで、お酒を飲めたり変えたりする場所が多いです。バーレーンでは、隣国のサウジアラビアと長い橋で繋がっており、週末にはサウジ人がやってきて、自国には内緒でお酒を飲みにきている人を見かけました。

女性の服装は、イスラム教の厳格度が高い国ほどほぼ完全に顔やボディーラインを隠します。戒律のきびしいクウェートでは、女性の素顔を見る機会はほとんどなかったと記憶しています。UAEのドバイやバーレーンでは、髪は隠すが顔を出すというスタイルが多く見られました。中には前髪を一部出してオシャレ感を出している人もいました。ちなみに他宗教の女性や旅行者の女性は、黒い服を着る必要はありませんが、モスクなど厳格な場所に行く際には髪を隠したり、肌を露出させないように配慮しなければなりません。

観光スポットで言えば、UAEが群を抜いています。コロナ前の2019年で2520万人が訪れるほどの観光立国です。一方カタールは最も多い年でも2016年の300万人ほどでした(2017年の国交断裂問題で一時停滞)。しかしカタールも観光やビジネスの誘致に力を入れ始めており、訪れる人は右肩上がりで伸びてきています。カタール航空は航空会社の格付けランキングで2022年も1位を獲得するなど、世界中から人を呼び込もうとしています。まだまだ観光地やレジャーが多いとは言えませんが、近年は大きく様変わりしているようです。

(4) カタールでの生活
「世界一つまらない都市」。かつてはガイドブックにそのように書かれていたほど残念な街という評価でした。確かに、娯楽施設などほとんどなかったし、お酒を飲めるホテルを探しまくって、ようやく一件見つけたくらいでした。毎日会社の用意する送迎バスに乗って、スタッフ達とお店に行き、業務後にはお酒を飲みに行くといったサイクルを続けるばかり。休みの日には、ショッピングモールに出かけて、プラプラするくらいしか娯楽はありませんでした。当時日本人はほとんどカタールに駐在していなかったので、日本のものなど周りにない環境でした。それもあってか、DAISOの商品はとても人気で、連日賑わっていました。

この退屈をどう凌ごうか。今では手軽にインターネットにアクセスして映画や動画を見ることができますが、当時はインターネットの接続こそままならず、オフラインな毎日でした。そこで私が見つけた楽しみは、高級車眺めでした。街にはたくさんの高級車が走っていたため、通勤の時などは車を眺めていたり、本屋で車の雑誌を買って読んだりすることが趣味になっていました。

そんな日々の中、日本の本社から、何か欲しいものあるかと聞かれたので、思わず答えたのが、「日本語の本」と「日本の音楽のCD」と「日本の醤油」でした。とにかく日本語の活字に飢えていたのと、日本の音楽事情が浦島太郎状態になっていたので、リクエストしました。ただ、醤油だけは成分にアルコールがわずかに入っていることもあり、入手ができず、苦しみました(笑)。日本に帰った時は、早速醤油を水で薄めて“飲んだ”ことを記憶しています。

カタールのなかなかの退屈ぶりを紹介しましたが、それでも当時感じたのは、ドーハは中東でドバイに次ぐ国際都市になりそうだなという予感でした。街の中心では、高層ビルが次々に建設されている最中でした(写真は現代のドーハ。当時はこの4分の1くらいの規模でした)。これほどの高さと近代感のあるビルは、クウェートやバーレーンにはありませんでした。
写真:ドバイ

出典: http://toolbiru.web.fc2.com/topic/top-22.09.23.html

またペルシャ湾に浮かぶ人工島に高級レジデンスを建設する「ザ・パール」計画が始まっていました。これはドバイにある「パームジュメイラ」と同じような人口島で、ドバイを追従している感が伝わってきたのを覚えています。
写真:左がドバイの「パームジュメイラ」、右がドーハの「ザ・パール」

写真:左がドバイの「パームジュメイラ」、右がドーハの「ザ・パール」

これからもまだまだ目が離せない中東湾岸諸国の発展。いつの日かドーハがドバイのように、日本人が観光に行きたい街として名前が挙がってくることを楽しみにしています。

■木村 篤(きむら あつし)
1980年生まれ。小売業で海外店舗(中東湾岸諸国、香港)の立ち上げ、店舗運営に従事。自動車部品の商社で海外(アジア、中東、中南米)販売営業、貿易実務を経験。2005年から2年間バックパッカーで世界一周。訪問国数は60ヵ国以上。2021年5月に中小企業診断士登録。株式会社ワールド・ビジネス・アソシエイツ所属。