国際部 鶴﨑 実穂子

はじめに

環境保全先進国と言われるニュージーランドは、再生可能エネルギー率が80%を超え、最大都市のオークランドが2018年にゼロ・ウェイスト(ゴミを出さない)を宣言したり、女性の首相が世界初の産休取得をしたりとSDGsな話題に溢れています。そんなニュージーランドに長期・短期に計3回滞在した経験から、現地の人たちとのふれあいを通じて見聞きしたことをお伝えしたいと思います。

ニュージーランドのSDGsの取組み

ニュージーランドのSDGs
ニュージーランドのSDGs

参考:https://www.sdg.org.nz/interpreting-the-model/

2020年の世界ランキングは16位(79.20pt/100pt)、日本は17位(79.17pt/100pt)でした。2022年は26/163位(78.30pt/100pt)と、順位自体は高くないことは意外でしたが、その取組み内容に注目するとお手本にしたいことがたくさんあります。

 

30年前に既に分別ポストが設置(リサイクル)

1993年から1995年にかけて滞在していた頃、街角にはワインボトル等の回収ポストが設置され、緑色と透明なビンと分けて回収されていました。日本ではビンの飲料はほとんど見かけなくなり、回収も行われなくなっていましたので、とても珍しく感じたのを覚えています。

最近では、ゼロ・ウェイスト達成に向けた取り組みとして、オークランドの全家庭にコンポスト(生ゴミ再生機)を配布し、堆肥として利用することにしています。

必要な分だけ購入する生鮮野菜(リデュース)

スーパーマーケットでは、野菜や果物がそのまま積み上げられ、必要な分を自分で計量器に載せて、価格ステッカーをアウトプットし、それをレジで見せて、購入するというスタイルでした。

日本では、袋詰めになって値段が付いている野菜や果物が当たり前で少し戸惑いますが、慣れると料理や人数に合わせて購入分量を調節できるので、食物がムダにならなくて助かるなぁと気づきました。

また、日本の生活ではプラゴミがすぐに溜まりますが、ニュージーランドでは、その当時からプラスチックトレーや過剰な包装をしない工夫がされていました。

中古市場の活況(リユース)

滞在当時は、売りたい家具の情報が掲載されたフリーペーパーがありました。テーブルやソファなど欲しいものがあれば個人宅に出向き、実際にモノを見て、価格交渉をして入手するというスタイルが流行っていました。家具を譲り受けるとき、とても大切に使われていた方達の想いまで受け取るような気がしました。

土日には、家の軒先やガレージでフリーマーケットをしている人たちもよく見かけました。

中古市場において、日本の自動車は新車同様に性能が良いということで、とても人気が高く、街を走る車のほとんどが日本車でした。当時は、中古市場が活況なために新製品が売れず、経済が停滞する要因になっているのではないかと、危惧する人たちもいました。

人や国の不平等をなくそう

ニュージーランドは多民族国家で、2018年の国勢調査では、欧州系(70.2%)、マオリ系(16.5%)、太平洋島嶼国系(8.1%)、アジア系(15.1%)、その他(2.7%)の割合になっています(注:ハーフ等の人たちによる複数回答で100%を超える)。

公平性(フェアであること)を信条とし、人種や国の違いはもとより、LGBTQや障害者などあらゆる人たちに公平で、それぞれの文化や価値観、人生観が尊重されるお国柄です。
ニュージーランドに行くと「キオラ~」とヨーロッパ系の人たちからもマオリ語であいさつされるときがあります。そして日本語の発音とマオリの発音が同じだからマオリ語を学んだらどうかと真面目に勧められたりします(笑)。

先住民であるマオリの文化や言語を尊重し、地名がそのまま残っている地域があるだけでなく、学校でもマオリの文化を学ぶ授業があったり、定期的に「ハカ」(マオリの伝統的な踊りで、ラグビーのオールブラックスが試合前にやることで有名)の公演があったりします。

ニュージーランドは、1840年に英国とマオリ族との間で締結されたワイタンギ条約により英国国王の植民地となりました。そして、1947年には、英連邦の国として独立しています。

先住民に危害を加えることなく、話し合いで条約を結んだケースは世界でも珍しく、そのことを誇りに思っているようです。

 

人種差別を許さず、入国審査にもその項目があり、過去に人種差別的な活動をした人は入国できません。

ニュージーランドのパーティでの参加者を思い浮かべると、外国人(日本人、インド人、中国、韓国、タイ、バングラディッシュ、イギリス、etc.)、パシフィックアイランダー、マオリと本当に様々な人が集まっていたなぁと思います。

LGBTQについても、30年前から、会社のパーティに同性のパートナーを同伴して参加する人たちがいました。普段の会話でも同性の恋人の話が普通に出てきます。

図2
写真2:最大都市オークランドの街並み

同性の恋人がいる人もいれば、異性の親友がいる人もいます。性別がそれほど強く意識されない文化なのかもしれません。

ジェンダー平等を実現しよう

ニュージーランドは1893年、世界初の女性参政権を獲得した国として知られています。日本で婦人参政権が認められたのは戦後の1946年からなので、50年以上も早い開始です。そして2018年、首相が任期中に始めて産休を取得した国でもあります。

当時の首相であるジャシンダ・アーダーン氏は、6週間の育児休暇取得後、専業主夫である夫に赤ちゃんの世話を任せ、仕事に復帰します。
ニューヨークの国際会議に参加するため、3ヶ月の娘と夫を伴い渡米したことで、世界中の人々から称賛の声が上がりました。

 

実は、夫が育児を引き受け、仕事を持つ妻をサポートすることは、ニュージーランドでは珍しくありません。「キィウィハズバンド」と呼ばれるニュージーランドの夫は、家事や子育てを女性と同様に、ときにはそれ以上に行うことで知られています。子供のスポーツや習い事の送迎はもちろん、バーベキューパーティなどでも食材を準備し、焼いているのは旦那さんで、奥さまはお客さまと歓談していたりします。

日本では「夫が家事に協力的」「夫も育児に参加」というと、いい旦那様ですが、キィウィハズバンドからみるとそれは当たり前で、褒められるなんて羨ましいと言われそうです(笑)。

 

そしてこの背景には、男女の賃金格差が5%程度と少なく、女性も重要なポジションに付き高収入を得ていること、残業がほとんどなくワークライフバランスが充実していることが要因としてあります。

「男女平等な社会制度」が整っていることは、女性の活躍だけを奨励するものではなく、実は男性の働き方の自由度も高めていることに気がつきます。学業や資格取得のために会社を辞めて、新たな道を求める男性も多くいます。

 

身近にあった例では、ホームスティ当時29歳の息子さんですが、会社をやめて航空学校に入るための勉強をしていました。2ヶ月後に結婚を控えているという状況でしたので、日本であれば婚約破棄にもなりかねないですが、周りの人々も普通に祝福していて驚きました。現在彼は、観光パイロットから国際線のパイロットになり、日本へも度々フライトで来ているそうです。

ニュージーランドでは新たなことを始めるのに、年齢で躊躇する人はあまり見かけません。70歳、80歳からのチャレンジも頻繁です。

 

再生可能エネルギー100%

ニュージーランド政府は、2025年には再エネによる発電割合を90%に、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする(生物由来のメタンガスを除く)を「気候変動対応修正法案(ゼロカーボン法案)」で取り決めています。
実質ゼロというのは、森林などに吸収された炭素とバランスがとれるレベルまで、温室効果ガスの排出を削減することで、カーボン・ニュートラルを目指すということです(参考:JETRO)。

 

日本の富士電機ホールディングスは、地熱発電プラント3件をニュージーランドに納入し、ゼロカーボンに貢献しています。日本でも地熱発電がもっと増えるといいですね。

 

以 上

■鶴﨑 実穂子(つるさき みほこ)
2021年に中小企業診断士に合格・登録、東京協会国際部 新規施策PT所属

1993年~95年にニュージーランドにて、DFS(免税品店)のレセプショニスト、日本車の中古車販売会社の新規立上げ等を経験。帰国後、世界的ソフトウェア会社の日本法人にて事業部の立ち上げをはじめ、外資製薬企業の品質保証部での改善提案業務など、新規事業、売却事業の引継ぎ、改善案件に多く携わる。現在、創造的業務を担う人材の育成に力点をおき、コーチング×コンサルティングで、企業の成長を促進している。ICF国際コーチ資格、中小機構人材支援アドバイザー、認定経営革新等支援機関、ふろしき認定講師

【グローバルウインド編集部より】
鶴﨑さんは2023/2/9(木)に開催される東京協会中央支部会員限定イベント「国際派診断士リーダー養成講座」(Zoom形式)に「東京協会の新規プロジェクトについて」で登壇されます!協会の方で鶴﨑さんのお話にご興味のある方はぜひお申し込みください。
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