国際部 川元 芳晃

まだ記憶に新しいカタールワールドカップでの日本代表の躍進以降、私の周りではサッカーファンが増えてきたように感じています。

私も週末に行われる海外のサッカー中継を見ることを趣味としており、贔屓にしているイタリアリーグのクラブACミランの勝敗に一喜一憂しております。

そんな私のような海外サッカーファンにとって、国の方針に基づき近年興味深い動きをしている国の一つがサウジアラビア王国(以下サウジアラビア)です。

今回はサッカーを入り口として興味を持ち、調べてみたサウジアラビアの基本情報、動向について解説します。

 

1.サウジアラビアの概要

まずはサウジアラビアの基本情報をおさらいします。

図1

 

(出所:Google Map)

(1)基本情報

面積:215万平方キロメートル(日本の約5.7倍)

人口:約3,218万人(2022年/サウジアラビア総合統計庁)

首都:リヤド(Riyadh)

宗教:イスラム教

公用語:アラビア語

(2)経済

主要産業:石油(埋蔵量約2.975億バレルで世界シェア17.2%/2020年)

その他LPG、石油化学等

主要貿易品目

(1)輸出:鉱物性燃料(原油等)、化学製品、原料別製品(非鉄金属等)

(2)輸入:輸送用機器(自動車等)、原料別製品(鉄鋼等)、一般機械(原動機等)

主要貿易相手国

(1)輸出:中国、インド、日本、韓国、UAE

(2)輸入:中国、アメリカ、UAE、ドイツ、インド

対日本貿易(2021年、財務省貿易統計)

(1)対日本輸出:約3兆193億円

主要対日輸出品目は、石油及び同製品。サウジアラビアは、日本にとって最大の原油供給国。日本は輸入原油の約4割をサウジアラビアから調達。

(2)対日本輸入:約4,889億円

主要対日輸入品目は、機械類及び輸送用機器。

 

2.サウジアラビアとサッカー

海外のサッカー市場は欧州が主役の時代が続いており、欧州5大リーグとよばれる、イングランド、スペイン、イタリア、ドイツ、フランスの5カ国のリーグに世界中のスタープレーヤーが集まっています。

そんな欧州中心とされるサッカー界で、2021年にサウジアラビアが注目を集め始めました。サウジアラビアの政府系ファンドのパブリックインベストメントファンド(以降PIF)を後ろ盾に持つ共同事業体によって、イングランドのクラブであるニューカッスル・ユナイテッドが買収されました。買収後の投資により、ニューカッスル・ユナイテッドは躍進を見せます。それまでイングランドのリーグにて10位前後で推移することが多かったチームが2022-2023年のシーズンには4位にまで浮上したことで一躍脚光を浴びました。PIFはソフトバンクグループのビジョン・ファンドに出資していることでも有名ですね。
世界でもトップクラスの資産を持つ国策ファンドが後ろ盾につくことで、世界的に有名なクラブをも上回る資金力を、ニューカッスル・ユナイテッドは得ることになりました。

図2

買収時のニュースリリース(出所:ニューカッスル・ユナイテッド公式HP)

さらに一昨年から昨年にかけて、サウジアラビアのプロサッカーリーグに所属するクラブに、欧州で活躍していたトップ選手等が続々と移籍し、さらにサウジアラビアが注目を集めることになります。クリスティアーノ・ロナウド選手やネイマール選手など、サッカーファンでなくとも知る人の多い世界的な有名選手達が多数移籍し、それまで知名度の高くなかったサウジアラビアのサッカーリーグが急激に注目を集めるリーグとなります。
これらの有名選手を獲得したサウジアラビアリーグ所属のクラブは、同国の政府系ファンドPIFが経営権を取得している複数のチームが名を連ねており、国を挙げてサッカー産業に力を入れていく姿勢が伺えます。

図3

 

サウジ・プロフェッショナルリーグロゴ(出所:サウジプロフェッショナルリーグ公式HP)

 

3.サウジビジョン2030

サウジアラビアは2016年4月、国の発展計画と改革案をまとめた「サウジ・ビジョン2030」を発表しました。内容としては、サウジ社会の石油依存からの脱却と産業多角化等を中心とした改革の実現に向けた戦略がまとめられています。その中で触れられている重点分野には、文化・スポーツ振興やエンターテイメント産業が含まれており、前述のサッカー界での動きはその一環と言えます。

PIFの投資先を見ると、サッカー分野への投資以外にも、ゴルフ組織「LIVゴルフ」への投資や、日本の任天堂、ネクソン、カプコン、東宝といったエンターテイメント関連企業への投資も行なっており、「サウジ・ビジョン2030」に実現に向けて着実に推進している様子が伺えます。

今後サウジアラビアがスポーツやエンターテイメント業界にどのような変化をもたらしていくのか、注視していきたいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。

 

■川元 芳晃(かわもと よしあき)

2021年中小企業診断士登録。東京都中小企業診断士協会 中央支部 国際部所属。
銀行での法人営業を経て、IT企業にて経営企画・国内外投資家対応(IR)・新規事業企画等に従事。