Global Wind (グローバル・ウインド)
ベトナムレポート その2 ~海の恵み~

中央支部・国際部 山田 昭彦

 ベトナムの首都ハノイ(漢字で河内)からホン(紅)川を下るとトンキン(東京)湾への出口にハイフォン(海防)という港町がある。車で国道を2時間、100km走る間に、2期作目の始まった田んぼの緑が眩しく視界に入る。ハイフォンはハノイの輸出入の基地になっており、港の近くには日系を含む多くの工場が並び、自動車が陸揚げされている。
 ハイフォンからフェリーまたは陸路でさらに北に1時間向かうと世界自然遺産のハロン(下龍)湾に着く。海に大小2000もの急峻な白い奇岩が浮いており、中国の桂林の海上版という表現が適切だ。石灰質の岩なので、水で浸食された鍾乳洞があり、アーチがあり、島の真ん中にぽっかりと内海ができているのもあり、そこを遊覧船で渡り、島にボートを横づけする。
        01_ハロン湾.jpg
 楽しみは海鮮料理だ。刺身はあまりないが、魚、貝、エビ、カニを焼いて、蒸して、炒めて、パクチなどの香菜で味付けすると食欲をそそる。珍しいものでは、カブトガニが生簀で泳いでおり、キロ数千円で料理してくれるが、味はわからない。ベトナムでは漁業は重要な輸出産業で、養殖のエビ・カニはもとより有名だが、最近では近海のマグロを東京の築地市場に輸出し高値で売れた。
 ハロン湾では多くの漁船が集まり、漁民の一部は水上で暮らしている。中国との海上のトラブルは漁民には迷惑だが、それ以上に工場や生活排水で海が汚染されているのが問題だ。ハロー湾の水は臭いこそしないが、緑っぽく濁っていた。生活場所に近い所にはごみが溜まり美観を損ねている。先進国の協力で水処理が進められているので、将来はきれいな海に戻るであろう。
 話題を歴史に移してみよう。むかしベトナムの北部に安南国が栄え、南部にコーチン(交趾支那)があった時、ベトナム南部の地鶏が日本に紹介されたそうだ。それが今は名古屋コーチンとして有名である。また江戸時代に鎖国をする前には日本から多くの商人、武士が海を渡ってベトナム中部の古都ホイアン(會安)の港に日本人町を作ったそうだ。そのホイアンは世界文化遺産である。こうして日本はベトナムと海でつながっている。
以上                 
ハノイにて山田昭彦
■山田 昭彦(やまだ あきひこ)
2007年中小企業診断士登録。機械部品メーカに30年間勤務し、主に海外展開に携わった。2011年独立、2012年にKaiオフィスを設立した。
(連絡先)kikunayamada@h3.dion.ne.jp