Global Wind (グローバル・ウインド)
フェアトレードを実感するペルー滞在5Days

中央支部 亀田 憲

1.チチカカとかけはし出張
 私が勤務しています「チチカカ」という企業は、エスニックのSPA(製造小売業)になります。経営理念は「世界の文化をつたえる」こととしていまして、南米を中心に世界の刺繍やファッションをモチーフに、日本人のデザイナーがデザインをして、製造販売をしています。
 チチカカのユニークな制度のひとつに「かけはし出張」という制度があります。私はこの制度のおかげで、今年の2月に5日間ペルーの生産者の村々を訪れることが出来ました。
「かけはし出張」とは、一定の基準を満たした社員が、自ら生産者と消費者を結ぶ「かけはし」となることを目的に、生産者の村々とコミュニケーションを図りに、村を訪ねる出張となっています。
2.「ハッピートレード」と「フェアトレード」
 訪ねる生産者の村ではチチカカ独自の「フェアトレード(倫理的な取引)」である「ハッピートレード」を行っています。「ハッピートレード」では「生産者」に対しては安定的にかつ適正な価格で、適正な納期で生産をお願いすることで、伝統技術の伝承と後継者の育成と安定した生活を提供します。「お客様」に対して「ハッピートレード」を通じて、かわいくてカラフルなデザインの洋服や雑貨をリーズナブルな価格で提供することで、「HAPPY」になっていただく取引をしています。そのことで、チチカカは「生産者」と「お客様」の両者を「ハッピー」にするため、「ハッピートレード」と呼んでいます。
 さらに、「ハッピートレード商品」という一部の商品では、その売上の5%は、生産者の村に直接還元をしています(以下、ハピトレ還元)。
3.ハピトレ還元の実態
 「かけはし出張」の目的のひとつに、前述のハピトレ還元の実態把握と協議がありました。還元といっても単純に5%の金額をそのままキャッシュバックするのではなく、生産者の村と協議をして、何に投資したら、その村にとって良いかを一緒になって考えます。
 今回のペルーのチバイの村では、最新のミシンとして還元をしています。ミシンにした理由は、これまでは長い間使用している古いミシンでしたので、刺繍をする際の生産性とクオリティーの向上を期待して、ミシンを選びました。
       図1.jpg

チバイの村と刺繍
チチカカホームページより http://www.titicaca.jp/

 ミシンの刺繍では、何の下書きもなく図1の右下のような繊細なデザインが出来上がります。頭の中に、刺繍の模様がすべて入っているようです。そのスピードとクオリティーの高さは圧巻でした。これこそが「匠」の世界であり、職人技です。
 一方、タキーレ島でのハピトレ還元では、トイレの建設費に充てました。トイレと言っても、個人用のトイレではなく、観光客向けの公衆トイレになります。これまで、島には公衆トイレが一ケ所もありませんでした。そのため、島に訪れた観光客の滞在時間が必然的に短くなり、お土産の購入や食事などの時間を妨げる原因になっていました。
 さらに、このトイレはチップ制の有料のトイレとするため、チップがそのまま島の収入源にもなります。
        図2.jpg

タキーレ島のハピトレ還元トイレ
チチカカホームページより http://www.titicaca.jp/

 最近では、このハピトレ還元のように、単なる金銭的な提供に留まらない、社会貢献の考えかたが主流になりつつあるようです。
4.社会貢献の新しい考え方
 社会貢献を考える際の良い題材となる、有名な例え話があります。
Q.無人島で遭難している人にA,Bどちらの支援をしてあげるか?
答えA:魚をあげる
答えB:魚の釣り方を教えてあげる
 Aの場合は、短期的にすぐに食べ、その場で消費して終わってしまいます。その場は、空腹が満たされ、お腹は満足するけれども、その効果は短時間であり、その場限りです。
 一方Bは、すぐに食欲が満たされず、即効性はありませんが、釣りのやり方は一度教われば、その後は継続的に自分の力で魚を釣ることができるようになります。
 無人島にいる方にとっては、一瞬、Aの方がありがたい気がしますが、長期的に考えるとBの方が、貢献度が高く、役に立つ支援になっているわけです。
 また、これまでの社会貢献は「お金」や「物資」そのものを提供することが中心となっていましたが、最近では、「ノウハウ」や継続的な生産活動に役立つ「道具」「材料」などが主流となってきます。
チチカカも、これまでお話しをしてきたと通り、5%の還元では単に「お金」を5%分戻すのではなく、5%分のお金をどのように有効活用するかを生産者とともに協議し、双方が納得したものを購入・提供することにしています。
5.タキーレ島とチバイのご紹介
 最後に、これまで触れてきました島や村について、紹介をさせていただきたいと思います。
①タキーレ島
(ア)島について 
 ペルーとボリビアにまたがる世界一標高の高い湖がチチカカ湖になります。このチチカカ湖に浮かぶタキーレ島では、今でもインカ時代の生活様式を残しているケチュア民族が暮らす島となっています。
 島は、山と段々畑が連なる緑のきれいな島となっていて、スペイン征服以前に作られていた石畳の道と石のアーチが印象的です。
        図3.jpg

タキーレ島の様子
チチカカホームページより http://www.titicaca.jp/

(イ)商品について
 タキーレ紐と呼ばれる美しい色合いの織紐はタキーレ島の伝統として継承されています。また、織物文化も有名で、ユネスコの世界無形遺産にも登録されています。
 織物はタキーレ島の人々の生活の中に深く根ざし、老若男女を問わず日常的に編み物をしています。また、タキーレ島に住む人々はインカ時代の伝統が残る毛織物でできている民族衣装を着ています。
※チチカカホームページより加筆引用
②チバイ
(ア)村について
 ペルー南部、標高3660mに、 5000人ほどの人々が暮らすチバイ村があります。
 グランドキャニオンより深く、コンドルが見られることで有名な 「コルカ渓谷」に行く際の拠点になる村として知られています。
        図4.jpg

チバイの民族衣装と著者

(イ)商品について
 チバイ村では、下書きなしでミシンを縦横無尽に高速で走らせる刺繍技術が 伝統工芸として継承されています。
刺繍の模様には、動物や花のモチーフが使われています。
 アンデス地方では編み物の文化が根付いているため、刺繍を行うのは珍しいことになります。
 村を歩いていると、色鮮やかで細かい刺繍の入った民族衣装を 着ている人々に出会います。花柄のブラウスに細かい刺繍の入ったベストと帽子がこの村の民族衣装の特徴です。
 一般的にアンデスの女性たちはひざ丈のスカートを履いていますが、 チバイ村ではロングスカートを履いています
  
6.最後に
 今回の出張をきっかけに、一つの商品をつくるのに地球の裏側の方々の情熱と才能と伝統が注ぎ込まれていることを体感いたしました。
 昨今では、ネット社会が進展して、現地に行かずとも情報交換ができ、コミュニケーションができる時代になっています。
 しかし、強い信頼関係をつくり、良いものをつくるという思いのもとに一つチームをつくりあげるには、実際にリアルにあってスキンシップを交えながら行うことが重要であり、近道であることも痛感させられました。