田村 隆一郎

 モノを販売する業種においては「在庫」が必要となります。ジャスト・イン・タイム生産で無在庫を目指す動きもありますが、大半の企業では商品の「在庫」が発生します。
 資金の回転を考慮すると、欠品が生じない前提で在庫は少ないに越したことはありません。期末になると、トップダウンで『在庫を〇割減らせ!』と号令がかかり、一時的に発注を止めるなど、ムリな在庫削減が行われたりします。しかし、期が明けるとまた元の水準に戻ってしまい、結局毎回同じことが繰り返されるといった、笑うに笑えないケースも多く見受けられます。
 通常の在庫管理の手法においては、出荷量に応じて、商品をAランク、Bランク、Cランクに分け、それぞれの手法で在庫量をコントロールすべきであるということが言われています。
  Aランク(出荷量の品目上位20%程度のアイテム)
  Bランク(出荷量の品目上位20~50%程度のアイテム)
  Cランク(その他のアイテム)
 一般的に言われるセオリーとしては以下のようになります。
  Aランク商品……重点品目として高レベルの在庫管理を行う
  Bランク商品……中レベルの在庫管理を行う
  Cランク商品……在庫精度よりも管理の効率化を優先する
 しかし、在庫管理の精度を上げ、継続的かつ安定的に在庫削減を行うためには、上記セオリーとは異なる考えを提唱します。
  Aランク商品……「中レベル」の在庫管理を行う
  Bランク商品……「高レベル」の在庫管理を行う
  Cランク商品……調達ロットも含めた「高レベル」の在庫管理を行う
 その理由としては以下のとおりです。
①Aランク商品は常に出荷が見込まれるため、自然に在庫管理の目が行き届く。また、一時的に在庫が多くなってもすぐに出荷されるため、過剰在庫にはなりにくい。
②Bランク商品は出荷量がある程度見込まれるが、大量に出荷することは少ないので、在庫管理の精度が適切でないと過剰在庫になりやすい。
③Cランク商品は、出荷量が少ないため管理の目が届きにくい。また、ロットが適正でないと、一回の発注で大量に入荷し、そのまま滞留在庫や不良在庫になりやすい。
 在庫管理の精度を上げ、在庫削減を行うためには、B、Cランクでも一品一品の商品に光を当てることが必要です。在庫についても”単品管理”の考え方が大切です。
 
 
 
■田村 隆一郎(たむら りゅういちろう)
田村経営コンサルティング事務所 代表
主に物流、流通、業務改善に関するコンサルティングを行っている
https://www.cims.jp/sun/tamryu/