田村 隆一郎

 経営にはイノベーション(経営革新とも言われます)が必要です。仮に今、業績が好調でも、その業績が未来永劫は続きません。「安定」という言葉は、企業経営には存在しないといっても過言ではないでしょう。そのため、企業には常にイノベーション(改革・革新)が求められるのです。
 さて、そのイノベーションという言葉を聞くと、どのようなイメージを持つでしょうか。
 斬新で、世の中にないものを生み出す。そんなイメージを持つ方が多いかもしれません。
 確かにそれは間違いなくイノベーションと言えるものでしょう。そのようなイノベーションは、「ラディカル(革新的)・イノベーション」と呼ばれます。
 スマートフォンや、ロボット型掃除機などは、今までにない利便性を与え、人々の生活スタイルを変えています。
 しかし、世の中に存在せず、まだ誰も実現できていないことを追求することばかりがイノベーションではありません。それらの斬新な製品やサービスが、顧客に受け入れられて、売上につながればよいのですが、まったく見向きもされないこともあるでしょう。
 他にはない斬新なものを次々に生み出して市場に提供する。売れるか売れないかわからないが、とにかく開発を進める。
 それでは単なるバクチにしかすぎません。
 斬新なものを一気に生み出すのではなく、徐々に変化していくこと。これもイノベーションと言えます。このようなイノベーションは、「インクリメンタル(漸進的)・イノベーション」と呼ばれます。
 たとえば、ヒット製品を生み出して売上を一気に15%上げる。あるいは、コストを一気に15%ダウンさせる。それらは簡単なことではありません。
 しかし、売上を毎年3%ずつ向上させる、またはコストを毎年3%ずつダウンさせる、それらは実現不可能ではないと思います。
もし3%の売上向上を5年続けたら…
 1.03×1.03×1.03×1.03×1.03≒1.159
5年で15%以上の売上アップが実現できます。
また、もし3%のコストダウンを5年続けることができたら…
 0.97×0.97×0.97×0.97×0.97≒0.858
5年で15%近いコストダウンが実現できるのです。
 それらは、立派なイノベーションと言えるでしょう。イノベーションは、斬新なものを生み出すことだけではありません。継続的な改善も、間違いなくイノベーションです。
 イノベーションはどの企業でも実現可能なことなのです。
 
 
 
■田村 隆一郎
大手チェーンストアにてロジスティクス戦略策定、物流効率化、業務改善活動などに携わる。退社後、田村経営コンサルティング事務所を設立。物流改善コンサルティング、業務改善コンサルティングなど、企業を良くする活動を実施中。