鳥居 経芳

【はじめに】
 人は、物事を考えたり伝えたりする際に、何がしかの基準や枠に当てはめていることがよくあります。これらは考えをまとめたり物事を伝える際に、分かり易くするために必要なことの一つです。
 一方でその基準をちょっと変えてみたり枠を広げてみたりすることで、同じ物事に対する意識が全く変わったり、同じ内容でも相手への伝わり方が正反対になったりすることも度々あります。
 
【例えば】
 とある機器メーカーでの話なのですが、全体会議における討議の中で、サービス部門に所属するある担当者のコメントが発端となって、見方について考えさせられることがありました。その担当者は日々自社製品に関する修理・問い合わせ対応を行っており、そのため自社製品については会社内でも格段に詳しい人間でした。
サービス担当者:新製品Bは、既存製品Aよりもやや壊れやすい印象があります。
営業担当者:でも、わが社の製品は、そもそも競合他社の製品と比べて断然に壊れにくいとして有名ですよ。恐らく、お客様自身がどの様な印象を持っているかは他社製品の使用経験の有無にも依存すると思います。少なくとも、新製品Bのユーザーが現在極端に機器に対し不信感を持っているということはないと思います。
サービス担当者:確かにそうですね…。自分で修繕しているのでそのように感じてしまうのかもしれませんが、確かに機器に対し不満を持たれることはほとんど無いように感じます。
 このやり取りの後、サービス担当者からは、「確かに自分は自社の機器にのみ接することがほとんどで、他社製品が実際どのような特性を持っているのか、またお客様のバックグラウンドに意識を向けて話をすることはこれまであまりなかった」との声が聞かれました。
【見方を変える・広げることで】
 上記の例ではサービス担当者としてはこれまでの経験から自社内での状況だけで考えがちだったものが、他部門との会話により「他社も含めたその機器としてどうか?」といった見方に変えることで、新製品に対し持っていたマイナスの感情をプラスにとはいわないまでも±0程度までは持って来られたのではと考えられます。それだけでも、お客様先での会話の中身、説得力が変わってきます。自信を持ってお客様ともコミュニケーションをとることも可能になるでしょう。
 正直このような事例はどこの企業でも、誰でもあります。が、出来ているようで常にできるものでもありません。
【さてどうやって変えるか・広げるか】
 こういったちょっとした見方を変えるようなことは、前述のように意外と自分一人では気づきにくいのも事実です。まずは、他の人との討議によって見方を広げることが一番やりやすい手法です。個々の営業案件や、日々の疑問など場合によっては中々自分一人の頭の中から外に出ていかないものを、外に引っ張り出してテーブルに乗せる…他人からは違った色に見えるかもしれません。
 ただ、全てを他人と討議できるわけではありません。営業案件においては、定型のヒアリングシートを用いることで「気づき洩らし」を防ぐことも一案です。
 また、わたし自身様々な形で相手に見方を広げてほしい場面に遭遇することがありますが、このような場合に最近よく用いるジェスチャーがあります。それは、野球でまさに投げようとしているピッチャーに対して、キャッチャーが座ったまま両腕を横へ広げるというものです。実際に相手の前に座って行います。
 これは、ピッチャーに「ストライクゾーンを広く広く!!(うまい模式図が書けませんでした、スミマセン…)」と意識させるためのものです。ボールをただ真ん中に投げるだけでは、よほどの剛速球でもなければ打ち返されてしまいます。ストライクゾーンを幅広く、横方向だけでなく縦方向にも使って投げてほしいという意図を伝えるためにキャッチャーがするポーズです。
 見方を広くとって、考えて欲しいと伝えるには少々乱暴な様にも思えるのですが、どうもただ口で伝えるよりは意識してもらい易いようです。
【終わりに】
 一人当たりの業務量が年々増大傾向にある現代では、処理能力や時間的な側面から1つのことを幅広く見て・考えて進めていくことも難しくなっています。それでも、少しずつでも良いのでちょっと立ち止まって、同僚と、友人と一緒に見方を広げてみては如何でしょうか?
 
 
 
■鳥居 経芳
中小企業診断士