金綱 潤

1.そもそも“補助金って何だろう?”
そもそも“補助金制度”とは何なのでしょうか?実は多くの方がこのことを理解されていませんのでこの点についてご説明します。補助金とは、行政が政策目標の実現のために実施するもので、個々の事業者支援のために実施するものではないことを先ずご理解下さい。行政サイドが各々の政策目標の達成のために、その課題解決に向けて、事業者の事業活動を促進しようとする狙いがあります。政策目標とは例えば交通渋滞解消や省エネ促進等、様々です。従って事業者の皆様には、各々の目的にあった事業を、事業者のみなさまに、広くあるいは的確に取り組んでもらうことがとても重要になります。いわば、税金の再分配の仕組みなので、経営資源が乏しい事業者さんが対象になることが多いので中小企業の方々には、重要な仕組みと言えます。また補助金制度と似たニュアンスで使われる言葉で“助成金制度”という言葉があります。しかしながらこの2つは財源こそ、同じ“税金”ですが、性質は全く違うものなので下表に整理しておきました。確認してみて下さい。

【補助金と助成金の違い】
201611columnk

(1) 補助金と助成金の違い
上表で示したようにそもそも補助金と助成金ではお金の性質が違います。お金の面では
○補助金・・・採用(採択)件数や予算が予め決まっていて、申請後の審査もあり採用(採択)とその後の事業活動内容の審査を受け、認められた事業者のみがお金を受け取れる
○助成金・・・予め決められた要件を満たせば、原則、すべての事業者が受給出来る。
以上のことから考えると助成金制度の方が活用しやすいように思われますが、制度特徴上、助成金制度は種類も少なく実施時期や実施目的も限定性が高いのが特徴です。
(2) 補助金活用の進め方
私はご縁あり3年前より国(中小企業庁)の施策である東京都よろず支援拠点のチーフコーディネーターをしております。毎年2,000社を超える事業者の方々の様々な経営相談をコーディネートする仕事なので多くの中小企業の方々とお話しする機会があります。(1)でも触れたように、補助金制度は個々の事業者の事業計画毎の支援金ではないことをお伝えしています。補助金制度は、あくまでも税金が原資なので、大切なことは、先ずは個々の事業者さんが自社の事業計画をしっかり立てた上、その計画目標達成ための具体的課題を、体系化するようにご支援しています。その上で個々の課題の解決に向けて
どのような方法が有効なのかを一緒に検討しているようにしています。例えば、伝統工芸品を製造販売している事業者さんが新規需要創出の課題がある場合には、地域の事情に精通した専門家の派遣制度を活用しながら、事業者さんを取り巻く環境を把握した上、新商品の方向性やコンセプトを固めていただきながら、*地域資源活用等の国の補助金制度の活用の是非や可否を事業者さんの思いや体力をお聞きしながら助言するようにしています。*http://j-net21.smrj.go.jp/expand/shigen/index.html?bnr
要するに補助金制度の進め方で大切なのは、「初めに補助金ありきではなく、個々の事業者さんの事業目標達成の手段として、他の手段(融資等)をも視野に入れながら、補助金制度を検討してみた上で、その手段が有効なのか?を考えてみることが重要になります。その上で補助金制度の活用が妥当ならば、どのような補助金を活用すべきなのか?
と活用出来るのか?という観点から事業者さんの立場になってアドバイスすべきと考えています。
(3) 中小企業事業者さんのための補助金制度の付き合い方
事業者さんには、企業理念や業種、業態の違い共に「経営資源の内容や」や「事業ステージ」等の違いがあります。例えば、創業間もない新橋のサラリーマン、OL層対象のパスタ屋さんであれば、新規顧客の集客のためにお店の認知度のみならず、地域の理解度や興味度や試用度を向上させる必要が高いと思います。その一方、開店資金に多くのお金を注ぎこんでしまい、販売促進に回すお金に乏しくなっていることはよくあります。そうした状況であれば、地域の潜在顧客のために
①お店の認知を喚起する方策の実施
(例:開店情報のPRに役立つチラシ作成配布や視認性の高い看板の設置等)
②お店の理解度や興味度を高める施策の実施
(例:常連顧客のスマホにお店の一押しメニューや店長のメッセージを配信する仕組みの構築やホームページの刷新等)
③お店の試用度を喚起する施策の実施
(例:コーヒー無料券の発行や配布等)
④一度お店に来て頂いたお客様の満足度を高めてリピート客にしていく施策の実施
(例:男女共用トイレを男女別のトイレに改装等)
の課題と解決に向けた方策の実施が必要になりますが、こうした状況であれば、例えば、小規模事業者持続化補助金の検討をしてみることをお奨めします。これは10月11日に成立した新たな経済対策を盛り込んだ2016年度第2次補正予算(http://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2016/hosei/pdf/summary.pdf)にも盛り込まれた施策です。経営計画に基づいて実施する販路開拓等の取り組みに対し、原則50万円を上限に補助金(補助率2/3)が出ます。上記の事例であれば、看板の設置に10万円、ホームページの刷新に30万円、トイレの改装工事に50万円等の予算であれば、総額事業費90万円を掛けて①、②,④の課題解決を図り、③については、自前のプリンターで賄うことをお奨めします。そうであれば、採択後の事業活動に掛けた90万円の内、上限の50万円が後から補助金で支給されますので実質、40万円で90万円の事業が展開出来ることになります。
要するに、中小企業事業者さんが補助金制度と付き合うためには、自社の経営課題を客観的に分析して適切な課題を見い出しながら、どんな補助金制度をどんなタイミングで活用すべきか?について事業者さんの事業計画全体の中で平素から検討していくことが大切なことになります。また、今後の動向把握の観点からは、
平成29年度経済産業政策の重点
http://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/fy2017/pdf/00.pdf
等を閲覧頂き、今後どのような政策課題に重点が入れられているのかをチェックされることをお奨めします。又、その際には、お気軽に
東京都よろず支援拠点
http://www.tasb.jp/information/yorozu.html
までお尋ね下さい。

■金綱 潤(かねつな じゅん)
中小企業診断士
(一社)東京都中小企業診断士協会 中央支部 副支部長
中小企業庁 東京都よろず支援拠点コーディネーター