少子化を背景として、子供服市場は減少傾向ではあるが本当であろうか。
昨年、出版社からの依頼により調査をしたところ意外な結果であった。

厚生労働省「平成29年人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、平均初婚年齢の年次推移は、平成7年に妻26.3歳、平成17年に28.0歳であったのが10年後の平成27年には、29.4歳と上昇。

 

図表5 出生数及び合計特殊出生率の年次推移

図1

(資料) 厚生労働省「平成29年人口動態統計月報年計(概数)の概況」(ホームページ)

 

また、第1子出産時の母親の平均年齢も10年毎に1.6歳ずつ上昇しており、晩婚化、高齢出産化が進行している。

しかし、平成30年8月の業界専門誌による子供服関連アパレル企業と専門店企業のアンケート結果によると、小売業売上高は前期比0.1%減にとどまっていた。
特に、低価格のチェーン専門店やSC向けに出店する小売企業が2ケタ増で業績を伸ばし、シェアを拡大している。
また、20代から30代の親世代に身近なSPA(製造小売業)ブランドは、インターネット販売でも高い成長率で推移している。

その原因を探っていくと、女性の社会進出に伴い働く母親の増加に起因していた。
共働きになると多くの場合、子供を保育園へ預けることになるが、子供を保育園へ連れて行く際は、数日分の着替えを持参する。
よって、着替え用の服は、高額なブランド品より着回しが効く低価格子供服の購入につながり、市場規模の減少防止に寄与していた様だ。

今後も高額なブランドやギフト市場は、一定の需要があるものの、同マーケットの拡大は限定的である一方で、低価格市場は保育園の増設に伴い働く母親が増えるため、今後もさらなる需要が見込まれる。

今回の調査にあたり、「少子化=子供服減少」と短絡的に考えてはいけない、典型的な事例ではないかと反省した。

略歴
加藤 伸一(かとう しんいち)
東京都中小企業診断士協会 中央支部
執行委員