1.あらまし
 ご存じの方も多いと思いますが、令和5年10月より消費税のインボイス制度が始まります。インボイス制度は消費税仕入税額控除の金額を正しく計算するために導入される制度です。我が国の消費税は得意先等から受け取った消費税から支払った消費税の差額を国に納める方式をとっています(下記図参照)。インボイス制度ではこの支払った消費税を控除するために一定の記載要件を満たした「適格請求書」の保存が必要になります。
 この「適格請求書」を発行するためには、適格請求書発行事業者の登録申請が必要となります。適格請求書発行事業者は消費税の課税事業者でなければ登録することができません。

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2.診断士に対する影響
 消費税は原則として基準期間(前々年)の年間の課税売上高が1,000万円を超えると消費税の納税義務が生じます(例外あり)。診断士は報酬のアンケート等をみると、約7割の人の売上が1,000万円を超えていません。したがって、7割の人は消費税を納めていない免税事業者であると考えられます。
 現状は診断士の得意先ではコンサル料が税抜100,000円消費税10,000円で110,000円を支払った場合、支払手数料100,000円仮払消費税10,000円として、支払った10,000円の消費税を国へ納付する消費税から控除して計算していました。
 これが、インボイス制度が始まり、診断士が消費税の免税事業者で適格請求書発行事業者でない場合、今まで通り税込で110,000円の請求書を発行すると消費税が控除できないので、支払手数料110,000円となり実質的に値上げとなります。得意先としては、消費税の免税業者なのであれば税抜の100,000円にするように言われるリスクがあると考えられます。

3.どちらを選ぶか
 得意先から消費税を請求しないように要請がされた場合の対応としては大きく3つの対応が考えられます。
 ① 110,000円をコンサル料として、先方に実質的な値上げを要求する。
 ② 消費税を納めていないのだから税抜金額の100,000円をコンサル料とする。
 ③ 課税事業者となり、税抜100,000円消費税10,000円の合計110,000円を請求する
 (コンサルタントは消費税の簡易課税を適用すると第五種事業に該当し、預かった消費税の50%を納付する計算を選択適用できる)

メリット ・消費税を納める必要がない ・手取り額は減少する ・消費税を納める必要がある
デメリット ・取引先との関係が悪くなる可能性がある ・取引先との関係は維持 ・取引先との関係は維持
手取額 11万円 10万円 11万円-5千円=10万5千円(簡易課税)

4.結論
 ①は手取り額も変わらず、消費税の納付もなく一番良いが取引先との関係にもよりますが難しいと思います。②は手取り額が減少するので、③の適格請求書発行事業者として登録を行い、課税事業者として消費税を納めるのが一番良いのではないかと考えます。

略歴
 齊藤民治(さいとうたみはる)
 小売業、システム会社、コンサル会社、会計事務所等を経て
 税理士として独立しています。