はじめに

経営者の方の中には、「自分の思うような行動をしてくれない」「組織としての価値が共有されず、別々の方向に進んでいる」「そんなこと聞かなくても分かるだろ」という思いを従業員の方にいだいている方もおられるのではないでしょうか?
そのような思いが起こっているようでしたら、自社のミッション、ビジョン、コンセプトを作成されてみてはいかがでしょうか?既に作成されている場合は今一度見直してみてはいかがでしょうか?本コラムでは、ミッション、ビジョン、コンセプトとは何かを、どう作成すれば良いのかをわかりやすく解説いたしますので、経営者の方のヒントになれば幸いです。

 

1.羅針盤の必要性

経営者の方は日々、ビジネスという大海原を航海されていると思います。果てしない水平線が見え穏やかに航海できる日もあれば、大しけに悪戦苦闘する日もあるかと思います。でも、晴れの日も嵐の日でも何のために航海に出て、自分が向かうべき方向はどこなのか、そして、現在は自分がどこにいるのか、羅針盤が無いと航海はできません。
ビジネスでも同様にこの事業を行う理由、目ざすべき方向、そしてそのために現時点では何をするのかが必要になります。今回はこれらをミッション、ビジョン、コンセプトとして説明いたします。

 

2.ミッション、ビジョン、コンセプトとは

そもそも、ミッション、ビジョン、コンセプトとはどのようなことでしょうか?
ミッションとは「企業の使命、存在意義」を表します。一般的には創業時に作成され、不変であることが多いと思います。ただ、昨今の環境変化により見直しを行うことも必要となります。
次に、ビジョンとは「目ざすべきところ」となります。自社が進むべき未来を具体的に表現します。
そして、コンセプトは「ビジョンを達成するために必要な現時点での行動」になります。

 

これらを皆が知っている昔ばなし、桃太郎ではどのようになるかを見ていきます。
例えば、桃太郎のミッションはなんでしょうか?鬼を退治することでしょうか?鬼を退治するのは、村の人々の平和をずっと守るために必要となることです。そこで、ミッションとしては「村の平和を守る」とします。そのためにビジョンが「鬼を退治する」となります。つまり、村の平和を守るために鬼を退治します。もし、村に疫病がはやったならば、目ざすべきビジョンは薬を作ったり取りに行ったりなど変わることになります。ビジョンは目ざすべきものなので、状況により変わっていきます。
では、コンセプトはどうなるでしょうか?鬼を退治するために今やるべき行動です。色々なコンセプトがありますが、例えば、「鬼退治に向かう仲間を集める」などがあるかと思います。きび団子が最強のチームを作るアイテムになります。

 

デジタル庁でもミッションービジョンを公開しています。デジタル庁のミッションは「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を。」となっており、ビジョンは「優しいサービスのつくり手へ。」「大胆に革新していく行政へ。」となっています。コンセプトの記載はありませんが、このビジョン実現のために現在、マイナンバーカードに健康保険証との一体化などの政策を推し進めているのではないでしょうか(筆者の見解)。

 

3.どのようにつくるか?

ミッションは創業時の思いから作れますが、ビジョンはどのように描けばよいでしょうか?色々な方法がありますが、今回は一つの方法としてバックキャスティング(BACKCASTING)を簡単に紹介します。
バックキャスティングの反対の方法にフォアキャスティング(FORECASTING)という方法があります。現時点を起点として未来を予測する。例えば、現状を分析し、課題を抽出し、改善していくような場合はフォアキャスティングとなります。バックキャスティングは未来を起点として最初に目標とする未来を描いて、その実現のための道筋を考えるやり方です。
例えば、イーロン・マスク氏はSpaceXの事業で「人類を火星に送る」というビジョンを実現するためにはコストを抑える必要があり、現在は再利用可能なロケットの開発を行うというバックキャスティングを行っていると考えることができます。
あくまで想定になりますが、このように未来を起点に考える方法でミッション、ビジョンを考え、現時点で実行すべきコンセプトを考える方法があります。

 

まとめ

今回は、自社にとって大切な従業員の方を同じ方向に向かせるためにミッション、ビジョン、コンセプトの作成が有益であり、具体的にどのようなものなのかを解説しました。ミッションは創業時に長期的に作成されるもので、ビジョンは目ざすべき未来を、コンセプトはビジョンを実現するために今行う行動であることを説明するとともに、バックキャスティングという具体的な作成方法を紹介しました。ぜひ、自社のミッション、ビジョン、コンセプトを考えてみてください。

 

参考資料
デジタル庁:https://www.digital.go.jp/about/organization/
細田高広氏 人を動かすナラティブ
NATIONAL GEOGRAPHIC:米スペースX、壮大な火星移住計画を発表https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/c/092900011/

 

勝目 猛(カツメ タケシ)
学生時代の野球部副将経験を生かし、国内外の様々なプロジェクトをリーダーとして牽引。東京都中小企業診断士協会中央支部の第1回『講師オーディション』や社内の『アイデアコンテスト』で優勝。経営者の考えるミライに寄り添うのが信条。