松島 大介

【質問】
 税務調査の連絡が来ました。どのような準備や心構えが必要でしょうか。

【解説】
 私は公認会計士でも税理士でもないので、個別の会計処理について専門家に相談していただくとして、私が数回にわたり担当した税務調査から感じたことをお伝えします。

 まず、最初にお伝えしたいことは、「税務調査だからといって、変に恐れることはありません。」

1.心構え

 心構えとしては、
(1)堂々と接すること
  (おどおどしない、感情的にならない、反論・持論を展開しすぎないこと)
(2)質問されたことのみ回答すること
(3)時間はかけても良いので、提出を求められた書類は変に隠さずに提出すること

 当たり前のように感じますが、これが実際にはなかなか難しいのです。

(1)堂々と接すること(感情的にならないこと、反論・持論を展開しすぎないこと)
 税務調査官には、いろんな人がいます。
 会社が気にしていると思われることや、不正が行われているのが前提で話を始め、 担当者を感情的にさせるなど、様々な会話手法(?)で何かしらのヒントを聞き出そうとします。とにかく、冷静に、堂々と怪しまれることはやっていないという態度で望みましょう。
 社長や営業マンならば、対応に慣れているかもしれませんが、管理部署の担当者の場合、それほど場数を踏んでおらず、慣れてない場合もあると思います。とにかく、緊張せずにリラックスして対応してください。

(2)質問されたことのみ回答すること
 反論したいことがあるかもしれませんが、見解の違いです。
 見解の違いは、できる限り税理士などの専門家にお任せしましょう。見解の違いは、税務調査が終わった後に、調査官と税理士が後日話合いをして対応していただけます(もちろん、その対応に関するお金はかかりますが)。もちろん、税理士は対応方法について、社長や担当者と相談の上、税務調査官と話をしますので、わからないことや納得できていないことについては税理士とちゃんと話し合いましょう。むろん、妥協点を探ることになりますので、自分の意見のみを主張しないようにしましょう。
 質問されたこと以上ことを回答すると、その発言に対応したくなることがあります。そういう時は、隣で聞いている税理士は、ひやひやしながら聞いていると思います。

(3)時間はかけても良いので、提出を求められた書類を変に隠さずに提出すること
 求められてない関連資料は出す必要はありませんが、変に隠したり、原本ではなく、コピーであったりすると、調査官の心証が悪くなり、更に疑いを持って、ほかの資料の提出を求められます。そして、その隠した理由も尋ねられます。調査官には協力しているという態度を見せることが大切です。

2.準備しておいたほうが良い書類

 次に、どのような書類を準備しておく必要があるのかについてです。
 私は情報処理業の会社に勤めていますが、顧問税理士から一般的な調査に必要な資料として準備しておいたほうがよいといわれたものは以下のようなものがあります。もちろん、なくてもないことをお伝えすればよいかと思います。

■調査の目的(例)
・法人税
・消費税
・復興特別法人税(申告書の記載内容の確認)
・源泉所得税(所得の種類、金額、納付の状況の確認)

■資料(例)
・決算書
・法人税・消費税申告書
・総勘定元帳(補助元帳)
・固定資産台帳
・消費税計算書
・売上台帳
・(当社の)請求書、(当社と顧客との)契約書
・仕入(外注等)台帳、(外注等の)請求書、(当社と外注等との)契約書
・源泉徴収簿(不要控除等申告書)
・その他経費等領収書等
・会社定款、謄本
・会社案内(パンフレット)、組織図、業務フローチャート等
・株主総会議事録、取締役会議事録、稟議書等

 総勘定元帳(補助元帳)は、調査対象期間すべて
 それ以外は直近年度分を最初に用意しておきます。

 調査当日については、調査官の要望に応じて、提出すればよいのです。

3.税務調査の流れ

 基本的な調査の流れの一例は以下のようになります。
もちろん、対応する人のスケジュールに合わせて変更することがあります。

■準備期間
・税理士経由で税務調査が入る旨の連絡が入る
・税務調査期間、希望日時について、連絡をうけて、社長、経理責任者、税理士のスケジュールを調整し、調査期間を決める。
 このとき、調査の目的や、何人の調査官が対応するのかも連絡があります。
・経理担当者と税理士で税務調査の対応方法については打合せを行う。
・経理担当者は状況に応じては、税務調査の準備を行う。
 詳細については、税理士と相談してください。
 例えば、契約書の印紙税があるかどうかのチェックなど
 提出を求められたものついては作成する必要がありますが、基本的に、調査のための資料をゼロからつくる必要はありません。(作ることは構いませんが、作業がムダになることもあります)
 
■税務調査当日
・税務調査官は、調査官である証明書を見せながら、挨拶をします。
・雑談を踏まえながら、社長が、会社の概要、組織・体制についてなど30分ぐらい質疑応答します。
 調査官は、登記簿謄本を始め、過去の調査など下調べをした上で、対応しています。個人的な感想ですが、ここで、下調べと情報があっているかどうか、不明点がわかったかどうかを確認しているように思えます。
・その後、調査目的に関連する書類をベースに調査が始まります。
 税理士が対応する場合には、できるだけ、その場から離れ、税理士に任せた方がよいでしょう。
 必要書類を新たに作らなければならない場合には、概ね作成にどのくらいかかるのか、税理士経由に伝えた方が誠意は伝わるかと思います。
 もっとも、以前の税務調査で指摘された書類等を作成していない場合には、心証はあまり良くないかと思います。
・最終日の最後に、講評がある場合もあります。
 調査官が判断に悩んだが、注意してもらいたいことなどを話してもらえる場合があります。具体的には、忘年会のビンゴの賞品(換金性が高い商品など)などを福利厚生とするかどうかについてなど、細かいことを指摘されたことがあります。

 私が対応したときの税務調査のポイントは以下になります。
●売上の計上基準の確認
●期ずれの経理の確認
 そのため、3月下旬から4月上旬に書類は重点的にチェックします。
(参考)期ずれが置きやすいもの(利益を減らす項目)
  ・売上の未計上
  ・翌期の仕入外注の計上
  ・仕掛プロジェクトの経費計上(人件費、在庫計上など)
  ・社員にかけている生命保険(養老保険)などの損金計上
●消費税の計算
●固定資産の計上方法(たとえば、サーバ購入の場合、構築費は含まれているかなど)
●稟議書の確認
 (稟議書のコメントが比較的チェックされました。チェックが入った場合には、担当した人が呼び出されることもあります)

 以前あったもの
●契約書等の印紙税の確認

 なお、前回の税務調査以降の会計期間が対象となりますので、それ以前のものついては、原則として対象になりません。もちろん、悪意があると疑われた場合には、どのような対応になるかはわかりません。

 最後に、結局、税金は取られるのか(追徴されるのか)ということになりますと、ほぼ何かしらのミス等が見つかり、追徴されることがほとんどだと思います。あるデータによるは7割の会社が追徴されるという話もあります。
 私が担当した調査では、過去1回だけ、追徴がないことがありましたが、それ以外は、金額の多寡はともかく、追徴されています。

 会社が、税務調査の結果に対してどのような対応するのかは、会社によって異なると思います。しかし、私は、中小企業ではなかなか持つことが出来ない外部監査の一つとして考えています。指摘された事項を中心とした反省をもとに、さらにどのように管理して対応していくべきなのかプラスに考えていくとよいでしょう。

■松島 大介(まつしま だいすけ) 
中小企業診断士、MBA。観光コンサル・アシスタント(社内SE兼任)、ツアーコンコンダクター、青年海外協力隊(タイ・コンピュータ技術)を経て、現在、IT関連中小企業の総務課長として勤務。世界50カ国以上を歩き回った経験や父親の会社の倒産体験の知見をうまく活用しつつ、中小企業の架け橋になるためにはどうすべきか模索中。