国際部 松島 大介

2022年11月末に、私が代表を務める株式会社国際協力データサービスが、経営品質協議会の経営デザイン認証ランクアップ認証を認めて頂けた(※0)こともあり、この経営デザイン認証と、それに関連し日本経営品質賞を含めた経営品質について述べたいと思います。3回にわたる掲載になります。今回はその2回目で、経営デザイン認証(経営品質協議会)についてご紹介します(1回目はこちら)。

Ⅲ 経営デザイン認証(経営品質協議会)とは

経営品質協議会の経営デザイン認証は、いうなれば日本経営品質賞の基礎部分となっています。つまり、日本経営品質賞は、前述(図表3(下記に記載あり)説明はその1はこちら)の通り、「組織の振り返り」、「経営の設計図」、「変革活動」、「事業成果」すべて求められ、まさに卓越した経営ができているかどうかが問われます。一方、経営デザイン認証は、「組織の振り返り」と「経営の設計図」を考えていく、まさに根幹部分が考えられているかどうかがキーとなっています。つまり、少なくとも、企業のありたい姿が描け、現状認識から変革課題まで把握するというポジティブアプローチ(図表5)がうまくできているかどうかとなります。このありたい姿がわかることにより、次のステップが描きやすくなりますが、最初はこの「ありたい姿」がなかなか描けず苦労します

図表5ポジティブアプローチ
図表5 ポジティブアプローチ

出典:経営品質協議会

経営デザイン認証ウェブサイト(※6)

1.デザイン認証のステップ

経営品質協議会の経営デザイン認証には、スタートアップ認証ランクアップ認証の2つがあります。1つずつ説明していきます。

1-1:スタートアップ認証のステップ

スタートアップ認証では、以下のステップで経営設計図を作成するための「ありたい姿」を考え、それに向けた課題を考えることになります。

ステップ1:組織の生い立ちや創業者の思いを振り返り、守るものと変えていくものを考えていきます。
ステップ2:そこから、今ある魅力を、「顧客・市場」、「商品・サービス」、「経営資源」、「現状の強みと伸ばしたいもの」という切り口で考えます。
ステップ3:これからなにが起きるかを、競争環境や技術の変化予測から顧客・市場の変化を予想していきます。なんのために変革を目指すのか、変革することで得られる嬉しいことをイメージしていきます。
ステップ4:そこから、組織が目指すありたい姿をデザインし、達成目標と達成時期をイメージしていきます。
ステップ5:ありたい姿の実現に向けて取り組むべき課題を考えてデザインすることで、これから進化したいことを考えていきます。

 

図表6スタートアップ認証の「これからの経営設計図(2022年度版)」テンプレート
図表6スタートアップ認証の「これからの経営設計図(2022年度版)」テンプレート

出典:経営品質協議会 経営デザイン認証ウェブサイト(※6)

1-2:ランクアップ認証のステップ

にランクアップ認証では、以下のステップで考えていきます。なお、この範囲は、その1で紹介した図表3(下に再掲)の左側部分であり、日本経営品質賞の審査基準の一部とすることで、経営品質賞に向けたステップにもなっています。

 

(その1の再掲)図表3 日本経営品質プログラムの筆者作成のフレームワーク
(その1の再掲)図表3 日本経営品質プログラムの筆者作成のフレームワーク

出典:2021年度経営品質アセスメント基準、経営価値経営ガイドラインより筆者作成

ランクアップ認証のステップ

ステップ1:これまでの振り返り 1.自社の歴史を振り返る。
2.自社の強みと価値観を探究する。SWOT分析とか活用しましょう。
3.これまでの成功ストーリーをまとめる。
4.現在のビジネスモデル(収益を生み出した仕組み)と環境変化を理解する。
ステップ2:経営の設計図「Ⅰありたい姿」を検討 ステップ1(上記)の1~4を踏まえて、自社のありたい姿を描きます
ステップ3:経営の設計図「Ⅱ戦略」を考える 自社のありたい姿に向けた「Ⅱ戦略(道筋)」を創ります
ステップ4:経営の設計図「Ⅲ組織能力」を考える 自社のありたい姿から自社に必要な「Ⅲ組織能力」を明確にします
ステップ5:経営の設計図「Ⅳ顧客・市場」を考える 自社のありたい姿から自社の「Ⅳ顧客・市場」を明確にします。つまり、セグメント、ターゲット、ポジショニング等の選定ですね。
ステップ6:経営の設計図「Ⅴ顧客価値(顧客が認識する価値≒顧客の要求や期待)」を考える 自社のありたい姿から「Ⅴ顧客価値」を明確にしていきます
ステップ7:経営の設計図「Ⅵ組織変革目標」を考える ステップ2「Ⅰありたい姿」~ステップ6「Ⅳ顧客・市場」を踏まえて「Ⅵ組織変革目標(重要課題と達成目標)」を設定します

もちろん、途中何度も途中のステップの1~7を行き来することがほとんどです。

ランクアップ認証の申請においては、上記をA4用紙(各1ページ)に詳細を記述し、それをベースに以下のテンプレートにサマリーとしてまとめることになります。

図表7 ランクアップ認証の「経営の設計図サマリー(2022年度版)」テンプレート
図表7 ランクアップ認証の「経営の設計図サマリー(2022年度版)」テンプレート

出典:経営品質協議会 経営デザイン認証ウェブサイト(※6)

 

2.認証基準

参考までに、認証基準は以下のようになっています。

スタートアップ認証 「ありたい姿」「現在の環境認識」「変革課題」を組織として見える化され、実践していると認められた組織

「ありたい姿」がしっかりと描けているかどうか

ランクアップ認証 「ありたい姿」の達成に結び付く成果の指標、目標が見える化され、実践していると認められた組織

「ありたい姿」を目指すための道筋がしっかりと描けているかどうか

なお、図表6、図表7のテンプレートは、経営デザイン認証のウェブサイト(※6)から会員登録することで、PDF版をダウンロードできます。

 

3.実際に経営デザイン認証を勧める際に悩む場合は?

実際にどうしたらよいのかわからないという場合には、経営品質協議会でもセミナーを行っているほか、経営品質を取り扱っているコンサルティング会社もありますので、まずはそこから活用するとよいかと思います。なお、経営デザイン認証を2023年度以降に申請する場合、原則、経営品質協議会のセミナーの参加が求められるようです。

フレームワークは、あくまで思考をまとめ、わかりやすくイメージするためのものなので、経営者を始め、従業員の人たちが理解するのを手助けします。しかし、その中身を考えるのは、その組織の人たちです。ポジティブアプローチを活用し、ぜひ、経営者・幹部社員のみならず、できるだけ多くの従業員の方も一緒に参加し考えることが望ましいです。

 

4.内閣府知的財産戦略推進事務局作成「経営デザインシート」の紹介

経営品質協議会のほかにも、内閣府 知的財産戦略推進事務局が作成した経営デザインシートというものもあります(いろいろなバージョンがあります)ので、テンプレートのみ紹介します。

図表8 内閣府の経営デザインシートテンプレート例
図表8 内閣府の経営デザインシートテンプレート例

出典:内閣府 知的財産戦略推進事務局ウェブサイト(※7)

正直なところ、私はどのフレームワークを利用しても問題ないと思いますが、組織にあった、もしくは、経営者が理解している(腑に落ちる)フレームワークを活用していただければと思います。なお、この内閣府の経営デザインシートでは、経営品質協議会のテンプレートの「ありたい姿」のことを、「これから」の姿と表現していますね。

次回の最終回は、「ISO9001(品質マネジメントシステム)を参照にしよう」をご紹介したいと思います。

 

(※6)https://www.jqac.com/management-design/

(※7)https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/index.html

 

■松島 大介(まつしま だいすけ)

2012年11月中小企業診断士登録 / 東京都中小企業診断士協会 中央支部 国際部所属
株式会社国際協力データサービス 代表取締役
CQ Center 公認ファシリテーター / CWQ 公認アソシエイト /
異文化エキスパート養成講座 第1期生 / 2030SDGsゲーム 公認ファシリテーター