中央支部・国際部 江口 英宏
はじめに

サンパウロ市内の景色(筆者撮影)
2026年1月にブラジルのサンパウロに滞在しました。その際、ジャパン・ハウスサンパウロを訪問して、館長を初めスタッフの方々とお話しする機会を得ることができましたので、本稿では施設の紹介やスタッフの方々とのお話を紹介させていただきます。
ジャパン・ハウスサンパウロ
ジャパン・ハウスは、外務省が設置した「これまで日本に興味のなかった人々も含め、幅広い層に向けて日本の多様な魅力、政策や取組を伝え、親日派・知日派の裾野を拡大していくことを目的」とした対外発信拠点で、世界3都市(ロンドン、ロサンゼルス、サンパウロ)にあります。
(出所:外務省HPhttps://www.mofa.go.jp/mofaj/p_pd/pds/page24_000421.html)
今回訪問したサンパウロのジャパン・ハウスは、金融機関、文化施設、ショッピングモールが立ち並ぶ、サンパウロ市の中心を貫くパウリスタ大通りにあります。木材で飾られた施設のファサードは、他の建物とは一線を画したデザインになっており、多くの車や人々が行きかう大通りにおいてもひと際注目される建物になっています。
ジャパン・ハウスサンパウロ(筆者撮影)
入場は無料で、内部には2つの展示スペースがあり伝統的なものから最新のテクノロジーを活用したアートなど幅広いテーマの展示を定期的に入れ替えて実施しています。
当方が訪問した際は、伝統的な宮大工の技や道具を紹介する展示や、「日本と水」をテーマにした展示が行われていました。日本人にとっても新鮮な展示内容でしたが、多くのブラジルの方々が興味深く展示に見入っている様子はとても興味深いものでした。
展示の様子(筆者撮影)
ショップ、レストラン、カフェテリア
ジャパン・ハウスは展示を通じた情報発信が中心であるようですが、館内には日本の製品を販売するショップや日本食を提供するレストランも併設しており、そちらもとても賑わっていました。
展示を通じて直接的に日本文化を紹介することと同時に、陳列された商品を通じた日本に関する情報の発信、日本食材を使った定食や麺類、寿司を含めバラエティーに富んだ日本食を経験することで伝わる日本もこの施設にはあるのだと感じます。
実際、日本の製品を販売する店舗のオーナーであるAlexandreさんによれば「多くの来館者にとって、店舗にある商品は売り物というよりジャパン・ハウスの展示の1つとして見られていると思う」とのことで、購入に至らないものの興味深く観察したり商品説明を求めたりする来館者は少なくないとのことでした。
さらに、Alexandreさんは「当店ではスタッフに対して、この店のミッションは『販売』というより日本の文化の発信にあると伝えている。そのため、商品についてそのコンセプトや作成者、使い方などについて説明して来館者に理解してもらえるよう努めている」ともおっしゃっていました。
伝統的工芸品を始め、日本製品を見かけることはああり多くないサンパウロでは、店舗であっても1つの情報発信の場になっていることがうかがえました。
店舗の様子(筆者撮影)
カフェテリアカウンターとライブラリー(筆者撮影)
日本食レストラン(筆者撮影)
日本-ブラジルのビジネスの懸け橋として
館内の掲示やモニターを見ると、日本企業の名前がロゴとともに紹介されています。ブラジルに進出して現地で事業活動を行っている日本企業を中心に、約20の企業がジャパン・ハウスサンパウロを支援しているようです。
ビジネス・マーケティングコミュニケーション局長のLigiaさんによると、施設には空調設備やセキュリティー機器など日本企業の製品が使われており、日本企業にとっては実際に施設内で製品が利用されている現場に顧客を招いて製品をアピールする場としても利用されているとのことでした。また、館内には会議やイベントで利用することのできるセミナールームもあり、施設を支援している日系企業を中心に、企業独自のイベントや新製品紹介発表の場として活用されているとのことでした。
日本とブラジルの間のビジネスという視点では、すでにブラジルに進出している企業による施設利用の事例が多いようですが、一方で、都道府県が主体となって地元中小企業の製品を紹介する場としてセミナールームが利用されることもあるそうです。
Ligiaさんによれば「日本のお茶に関連した展示を実施した際は、ブラジルの飲料や食材企業を招いてプレゼンテーションを実施し、日本企業とのネットワークづくりの場を設けたこともある」とのことでした。
日本の中小企業が海外での展開を考える際、アジア諸国や北米が候補先となることが多く(出所:中小企業基盤整備機構『中小企業の海外展開に関する調査(2024年)』https://www.smrj.go.jp/)、ブラジルへの進出を第一に挙げる企業は少ないかもしれませんが、ジャパン・ハウスサンパウロのような施設では、同じ地域の企業や自治体が共同で製品の展示や紹介イベントを開催して、現地での情報収集を行ったり、現地企業とのコネクションを獲得したりすることができるのではないかと思いました。
もちろん、ブラジルにも政府関連のビジネス支援団体や在ブラジル日本企業団体、日系ブラジル人の団体など、進出を試みる日本企業に対してサポートを実施している組織はありますが、それと同じく、または並行してこのような施設の活用も検討に値するのではないかと感じます。
施設運営サイドの視点
ジャパン・ハウスサンパウロの館長、Carlos
Rozaさんに施設の役割や日本とブラジル間のビジネスについて伺いました。
「ジャパン・ハウスサンパウロは、文化、製品、サービスを含め日本のショールームとして、ブラジル人の日本に対する感嘆や感心といった感情の目を開くことが役割だと思っています。施設を訪問いただいて、少しずつでもブラジル人に日本の文化や製品への理解や共感を得てもらい、また商品の購入や食の体験を通じて親しみの気持ちを増やしていきたい」とのことでした。

その上で、日本企業のブラジル市場への進出に関しては「ブラジルは非常に親日な国。多くのブラジル国民は日本という国に対してポジティブなイメージを持っている。これはつまり、日本や日本の製品にとってすでに追い風が吹いている状態で、日本の企業にとってすでにアドバンテージがあると言えるのではないでしょうか」とおっしゃっており、日本企業が今以上に積極的にブラジルの市場に目を向けることに期待を寄せていらっしゃいました。
Carlos館長(右)とLigia局長(左)(筆者撮影)
まとめ
今回の訪問を通じて、ジャパン・ハウスサンパウロは、日本文化を一方的に発信する施設というより、日本という国や製品、価値観がブラジルでどのように受け取られているのかを、実際の反応を通じて確かめることのできる場であると感じました。展示、ショップ、飲食、企業イベントといった複数の要素が重なり合うことで、立体的に日本を発信する施設になっているように思います。海外展開を検討する中小企業にとっても、こうした場を通じて現地ニーズを把握し、現地の企業や消費者との関係構築の糸口を探ることは、現実的な選択肢の一つとなり得るのではないでしょうか。
江口 英宏(えぐち ひでひろ)
2024年中小企業診断士登録。東京都中小企業診断士協会 中央支部 国際部所属。
広告代理店で営業、マーケティング、プロモーション業務に従事した後、2022年に独立。
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