はじめに
新型コロナウイルス感染症拡大やウクライナ侵攻、円安など外部環境の変化が経営に大きな影響を与えています。これらは自社の努力で解決することができません。しかし、その状況に甘んじていると経営が立ち行かなくなるおそれもあります。今後どうしたらいいか、突破口はないかなど頭を悩ませているなら外部環境を把握する頻度を増やしてみましょう。

1 .  変化の速さに対応する
中期経営計画は立てていますか?3~5年の計画で、毎年見直すのが理想的と言われていますが、中小企業では時間や人員の問題で難しいこともあるかもしれません。また、環境変化のスピードが上がり、めまぐるしく変わっていくなかで年一回の見直しでは対応しきれないこともあります。数ヶ月で環境が変わり、計画が意味をなさなくなってしまうと作成する労力を払うよりもその場の対応を優先したくなることもあるでしょう。
しかし、無計画に事業を遂行していくとリスクが大きくなります。経営には計画立案がかかせません。VUCAといわれる現在は以前に増してPDCAを迅速に回す必要があります。そのために四半期毎にSWOTを見直しましょう。内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)の整理はどちらに舵を切るべきかを判断する材料となります。

2 .  なぜ外部環境が大切か
経営するにあたって「強み」を把握することはとても重要だと認識されていると思います。
ではここで質問です。
安定した品質の製品を大量に生産できる設備を保有している
これは「強み」だと思いますか?
答えは「これだけでは判断できない」です。なぜ判断できないかというと、外部環境がわからないからです。もし、その設備を保有している競合が少なく、かつ取引先から長期にわたって大量に発注されるならば「強み」でしょう。逆に取引先からの発注が多品種少量の場合は大量生産の設備があっても強みとはいえません。多くの企業がその設備を保有している場合も強みとはいえません。
つまり、外部環境によって「強み」といえるかどうかが変わるのです。これが外部環境を把握することが大切な理由です。
したがって、SWOT分析をする際にはまず外部環境から考えていきます。そして、はじめは「機会」と「脅威」に分けず、羅列していきます。なぜなら「新型コロナウイルス感染症拡大による外出自粛」というだけでは「機会」なのか「脅威」なのかわかりません。それによって店舗に顧客が来ないなら「脅威」ですが、オンラインショップは逆に「機会」といえるでしょう。
次に経営資源をリストアップします。人材・技術や設備・商品や製品、サービスの特徴など自社の経営資源の棚卸しです。例えば企画や外注管理ができる人材がいて、商品がオンラインショップで販売できるものならばこれらを活かしてオンラインショップを開くことで外出自粛を「機会」にできるかもしれません。
外部環境に対して自社の経営資源で顧客から選ばれる価値を提供できるかどうかを考えていくことが大切です。

3 .  外部環境分析のフレームワークに当てはめる
羅列するといっても自社に関係のない外部環境まで調べる必要はありません。フレームワークを使ってポイントをおさえましょう。
外部環境分析のフレームワークにはPESTと5Forcesがあります。PESTでは政治・経済・社会・技術の4分野での変化を整理します。5Forcesでは売り手・買い手・競合・代替品・新規参入の変化を整理します。自社に直接影響がなくても取引先に影響があれば仕入価格の変動や発注数の増減などがあるかもしれません。ニュースなどのさまざまな情報を気づいたときにメモしておくと良いでしょう。PESTや5Forcesの切り口で整理しておけば自社の経営資源の活用を考える際に使いやすいと思います。

4 .  +αはどんなタイミングか
四半期毎に外部環境をチェックしていてもそのタイミングで外部環境の変化が起こるわけではありません。そのため自社に影響を及ぼす変化があったら適宜外部環境を見直す必要があります。外部環境の変化の例では法改正や新技術の開発などが思いつくでしょう。また、同業者の廃業や商圏での人口変化なども影響する可能性があります。ですが、四半期に一度の見直しでも対策できるものもあるでしょう。すぐに大きな影響が出る変化ならばフレームワークを用いて外部環境を見直すようにしましょう。

おわりに
自社の経営資源が生み出す価値が顧客に評価されていれば「強み」と考えがちですが、外部環境の変化で「強み」が「弱み」に変わってしまうことがあります。利益をもたらさないなら「強み」ではありません。自社を取り囲む状況を観察し、現在の経営資源で何ができるかを常に考え、自社の発展を目指しましょう。

 

【略歴】
村尾奈津
中小企業診断士
所属:東京都中小企業診断士協会 中央支部
杉並中小企業診断士会
香川県中小企業診断士協会
得意分野:IT、マーケティング