佐藤 正樹

 
 前回、専門家コラムで「心を揺さぶる事業計画書の作り方」を書かせていただいた。反響があったので補足を加えたい。
≪前回のコラムのポイント≫
 事業や製品、サービスには、強いメッセージが必要であり、理念やコンセプトともいえる。
 ・形にすることによって、差別化ポイントになり、顧客への明確なアピールができる。
 ・メッセージとは、「使命感の表明」であり、従業員や関係者だけでなく、顧客までを巻き込み、事業を発展させる原動力になる。
ということをご説明しました。詳細は下記をご覧願いたい。
http://rmc-chuo.jp/home/mt/archives/2011/12/201111_2.html
■メッセージの効用
 先日、中央支部でのセミナーで株式会社マザーハウスの山口絵理子社長にご講演いただいた。ブランドバックをバングラデシュで製造し、世界で販売する当社は、発展途上国の自律支援を目的とし「途上国から世界に通用するブランドを作る」との理念のもと、ブランドバックの競合が多い中で、デザインや機能性が高いバックを作ってコアなファンを築いている。当社は、事業や商品のメッセージが明確であり、コアなファンにとっては買いたくなる理由が明白になっている。
■力強いメッセージの作り方
 では、コアとなる強いメッセージをどうやって形にするのか製品やサービスを例としてご紹介したい。メッセージは、デザイン、販売方法、顧客へのサポートなどでも表現できるが、ここではキャッチコピーや製品、サービスの紹介文を作成することを想定している。
(1)まずは、製品、サービスの内容を20~100字程度で説明する文章を書いてみる。
(2)誰に対して訴えるのかターゲットを決める。
(3)差別化するポイントを決める。
(4)文言をブラッシュアップする。
(1)まずは、製品、サービスの内容を20~100字程度で説明する文章を書いてみる。
 自社の製品、サービスを短文で的確に説明することは、意外と難しい。きちんと文章にしてみると良く分かる。文章を読んで、メッセージが伝わるか検証する。
(2)誰に対して訴えるのかターゲットを決める。
 自社の製品、サービスは、たくさんの方に買ってもらいたいのはやまやまだが、物と情報があふれる世の中では、話題性がないと埋没してしまう。また、ターゲットを決めないことには、販売や販促の方法も決められない。店頭で売るのか、インターネット通販だけで行くのかで、方法がまるで違うためである。
 注意したいのは、製品、サービスの利用者だけではなく、購入の決定権者や影響を与える人を明確にすることである。メッセージとは「誰かに対して訴えたい何か」なので、この「誰か」が明確になると伝えたい内容も決まる。
 例えば、高齢者向けの「見守りサービス」については、遠隔地にいる子が親を心配して利用するケースが多く、親に対してよりも子にアピールする方が有効である。親にすれば自分は健康だと思っているので自分から率先してサービスを利用することは少ない。子にアピールするためには、「安心」や「自分の代わりに見守る」ことなどがメッセージの中核になる。
(3)差別化するポイントを決める。
 顧客は、他社と比較して購入を決めるので選んでもらうための差別化ポイントを明確にする必要がある。
 機能や価格について他社との比較表を作って○×で評価すると、自社がアピールすべきポイントが良く分かる。アピールする部分が明確に見えない場合は、場合によっては、自社が生き残って来た強みや、なぜその事業を思い立ったか、社長の人生経験など言葉にはなっていない思いを整理することからヒントが出てくることもある。
(4)文言をブラッシュアップする。
 ターゲット顧客、差別化ポイント以外にも販売ルートや販促方法など検討する要素があるが、(1)で作成した文書を参考に、ターゲット顧客を意識して、差別化する要素を文章やキャッチコピーとして作成する。なお、高齢者向けには横文字は厳禁である。
 キャッチコピーを作るには、キーワードを並べて、辞書を片手にキーワードを入れ替えて、試行錯誤して作りあげるが、時間を置いて見直しをかけるとしっくりしたものができあがる。
 ぜひ、力強いメッセージを作成して欲しい。
 
■佐藤 正樹(さとうまさき)
有限会社トップマーク 代表取締役
中小企業診断士、主に中小企業向けに経営企画、事業企画の立案と実行の支援を行っている。