中央支部・国際部 小西 薫
はじめに
ことの発端は、ANAマイルの期限切れが迫っていたことでした。「期限が切れる前にどこかに行かなきゃ!」と選んだのが、マカオ。
しかし、そこで待っていたのは、単なる観光旅行を超えた、人生観を揺さぶる「究極の決断」体験でした。
「3, 2, 1, バンジー!」
掛け声とともに、私は高さ233メートルの虚空へと身を投げ出しました。 足元には何もありません。ただ、重力に従って落下するのみ。
「このまま死んでしまったらどうしよう・・・」
今回は、この強烈な体験を通じて得た、中小企業診断士としての気付きをお伝えします。
歴史とお金が交錯する街、マカオ
マカオと聞いて、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか? 「東洋のラスベガス」と呼ばれる煌びやかなカジノ群、あるいはポルトガル統治時代(1557年~1999年)の面影を残す「世界遺産の街」。
この二つの顔を持つのがマカオの最大の魅力です。
しかし、実際に訪れて驚いたのは、その強烈なコントラストです。
コタイ地区には最新鋭の統合型リゾート(IR)が建ち並び、デジタルサイネージが夜を彩ります。その一方で、移動の足となるタクシーはいまだに「現金のみ(香港ドルかパタカ)」が主流。WeChat Payなどの電子決済も観光客には使いづらく、未来感のある街並みの中で小銭を数えるという、不思議な「ハイテクとローテクの混在」がありました。
コタイ地区の輝くホテル群(筆者撮影)
世界遺産の聖アントニオ教会(筆者撮影)
そんな混沌としたエネルギーに満ちた街の空に、ひときわ高くそびえ立つ塔が高さ338メートルを誇るマカオタワーです。
マカオタワーの遠影(筆者撮影)
カオタワー近影:筆者のバンジージャンプ中(筆者の妻撮影)
10秒6万円の「決断」
今回の旅のハイライトは、このマカオタワーからのバンジージャンプでした。 ギネス世界記録にも認定されている「商業施設から飛ぶバンジージャンプ」としては世界一の高さ(233m)。
正直、その価格には、かなり躊躇しました。1回のジャンプで約3,000パタカ(当時のレートで約6万円)。しかも展望台に登るだけでも数千円かかるので、高所恐怖症気味の家族は誰もついてきてはくれません。
「たった1回飛ぶだけで6万円?」「6万円も払ってわざわざ死の恐怖を味わうの?」という家族の意見ももっともです。しかし、現地には世界中から挑戦者が押し寄せ、予約が絶えません。
一人で覚悟を決めて、エレベーターで展望デッキへ上がり、さらに上の「スカイパーク」へ。 風が強く吹き抜けるデッキに出ると、そこはもう日常とは切り離された空間です。
スカイパークマカオの通路(筆者撮影)
「きつい」のコスパを考える
233mからのジャンプと言っても、実際に飛んでいる時間はわずか数秒。長くても10秒程度です。「10秒に6万円」と考えると、時間単価はとんでもない金額です。
しかし、私が今回このバンジージャンプに挑戦しようと決めたきっかけは、PRESIDENT Onlineの記事で目にした「きついのコスパが良すぎる」という言葉が印象に残っていたからでもあります。
※参考:PRESIDENT Online「マグロ漁船は「きつい」のコスパが良すぎる」 https://president.jp/articles/-/73984?page=3
この記事には、あえて厳しい環境や体験に身を置くことの効用が説かれていました。
実際に、私の体験も「一生のネタ」になりそうです。 一度飛んでしまえば、その後の人生で「実はマカオタワーからバンジージャンプしたことがあるんです」と何度でも語れます。一瞬の対価としては高くても、生涯にわたって語れる「一生モノの思い出」という資産が得られると考えれば、ROI(投資対効果)は極めて高いと感じました。
また、ビジネスの視点で見ても面白い発見がありました。 当然、飛ぶ直前、台の先端に立った時の恐怖がピークです。
死の恐怖が頭をよぎり、脳が「拒否」を叫びます。
ですが、恐怖の時間はその時だけではなく、予約した瞬間からも「もうすぐ233mからバンジージャンプするんだ」と、ずっと頭を離れなくなります。
しかし、いざ「飛ぶ」と決めて一歩を踏み出してしまえば、あとは重力に身を任せるだけ。できることは何もありません。
安全に地上まで到達し、「飛ぶ決断をした」という経験が手に入るのです。
ライブスクリーン:筆者がバンジージャンプする瞬間(筆者の妻撮影)
これは、新規事業や起業にも通じるものがあります。 多くの人が躊躇するのは、実行そのものの難しさよりも、「やると決める」際の見えない恐怖が原因ではないでしょうか。「案ずるより産むが易し」をこれほど物理的に体感できる場所は、他にはありません。
究極のブランディングと信頼
なぜ、これほど高額でも人が集まるのでしょうか? それは、「世界一(商業施設として)」という代替不可能なブランドがあるからです。 「恐怖に打ち勝ち、生まれ変わる」という強烈な体験価値(コト消費)の前では、価格競争など存在しません。中小企業が目指すべき高付加価値化の極致がここにあると感じました。
スカイパークマカオ内観(筆者撮影)
そして、その高付加価値を支えているのが「絶対的な安全」です。 命を預けるアクティビティにおいて、安全への信頼は全てに優先します。しっかりとしたハーネスと何重ものチェック、飛ぶ直前に躊躇させず回転率を維持するスタッフのプロフェッショナルな対応、堅牢な設備。 現場では「安全を買うためなら6万円も高くない」と、納得させられました。リスクが高そうに見えるサービスほど、裏側での徹底した品質保証が価値の源泉になっている必要があります。
安全性確認カード(筆者撮影)
まとめ
マカオでのバンジージャンプは、私にとって単なるアクティビティではなく、自分自身への挑戦であり、「決断」の儀式でした。
恐怖を乗り越えて一歩を踏み出した瞬間の感覚は、今後の人生やビジネスにおいても、大きな糧になってくれそうです。
起業や独立など、人生の大きな変革を前に迷っていらっしゃる方は、ぜひマカオタワーの縁に立ってみてください。
優柔不断な私ですが、今回の体験を通じて「決断力を買った」と感じています。
思い切って飛び出した後には、きっと新しい景色が待っているはずです。
■小西薫(こにしかおる)
UI/UXデザイナー/中小企業診断士 中央支部 国際部と広報部を兼任。広報部では副部長を務める。
趣味は模様替え。現在は主に企業のAI導入を支援しており、起業家支援サイト「ドリームゲート」のアドバイザーとしても活動しています。
https://profile.dreamgate.gr.jp/consul/pro/nicopro
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